EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

真・MFC千夜一夜物語 第394話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その2

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
それに伴い注意いただきたい点をお話ししますね。
・・・とは言いながら、熱式を長く売ってきたDecoからすると、コリオリ式はすごく良い子で、特に問題はありません。
応答性能も流体に奪われる熱の移動を測る熱式と異なり、コリオリ式はセンサーの応答が速い為に、今まで見えなかったような波形を確認する事が可能ですし、ゼロも熱式のようにずれません。
そして熱式の最大の弱点であるコンバージョンファクター(CF)問題も存在しません。
 
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上にあるように、コリオリ式は流量式に流体の物性値を含んでいません。
故に流体の物性がよくわかっていない材料や、刻々と組成や混合比が変化していくような流体でも質量流量測定ができる完全な質量流量計なのです。
つまり流体や条件毎にCFが存在しないという事です。
熱式のように流体の定圧比熱に左右されたり、温度、圧力、あげくはMFCの分流構造でCFが複数存在してしまったり、最悪はその流体のCFがわからないという事が一切ありません。
圧力をかけてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうというのが、コリオリ式の特徴です。

では、そんな完全な質量流量計であるコリオリに何に気を付けるかというと、それは先ほどコリオリの長所としてご説明したセンサーの測定原理が絡んでくるのです。
熱式流量センサーの弱点は熱影響であったのと同じく、振動系のコリオリ式流量センサーの弱点は、やはり振動なのです。
以下の動画の55秒目くらいから、コリオリ式流量センサーの動きを見てください。
チューブ自体が振動しているのがわかりますね?
(これは説明の為に少しデフォルメされている事をお断りしておきます。)

出展:ブロンコスト・ジャパン(株)

例えばコリオリ式マスフローを設置した際にポンプが近接していて、しかも設置が同じ構造物だった場合や、配管がしっかり固定されておらず、振動を拾って自身も振動してしまいやすい状況ですと、振動の周波数によってはコリオリ式センサーに影響を及ぼしてしまうのです。
複数台のコリオリ式マスフローを近接して同じ構造体の上に並べてもクロストーク(相互干渉)を起こしてしまう事もあります。
これは必ず生じるわけではありません。
でも、もし不幸にもこういった現象に見舞われた場合は、どうしたらいいでしょうか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第393話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その1

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラーMFC)、マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
熱式を長く売ってきたDecoからすると、コリオリ式はすごく良い子です。
どこが?というと、コリオリ式はお納めした後のクレーム、問い合わせが非常に少ないんです。

熱式は「ゼロがずれる」、「実ガス流量があってない」、「応答が遅い」といったお客様からの納品後の問い合わせが本当に多かったのですが、コリオリ式にはそれがありません。
それはコリオリの持つ以下の熱式に対するアドバンテージのお陰です。
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要約すると・・・

・コリオリは完全な質量流量計である。

・コンバージョンファクター(CF)が存在しない。

・流量センサーの感度が高く、応答が速い


これは両者の流量式から読み取れます。
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では、そんな完全無欠なコリオリ式を使う上で、注意すべき点は何でしょうか?
次回からご説明しましょう。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan




真・MFC千夜一夜物語 第392話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その4


寒い冬場のMFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
ここでやっとMFCの周囲にある「MFCよりも更に冷え切っているもの」のお話をしましょう。
389話から引っ張りましたが、されそれは何でしょう?

それはマスフローに流れる流体(ガス)なのです。
マスフローは前回解説したように温度補正を行っています。
これはセンサーに流れる流体の温度を正確に捉えさえすれば正常に働くという意味です。
逆に言えば、この補正のベースとなる流体の温度を正確に測れていなかったら、前回お見せしたモデルにはならず、補正した結果は大変怪しくなってしまいます。
ここで問題になるのは、マスフローはこの補正情報の元になる流体の温度をどこで測定しているかです。
実は大部分のマスフローは流体の温度を直接測定せず、マスフローのボディや基板上の温度を測定しています。
つまり、流体温度=マスフローの環境温度が前提なのです。
これらに大きな差があった場合、間違った温度情報による補正がかかることになってしまいます。

「それなら温度センサーを流路内に設置して、直絶ガス温度を測って補正情報を得ればよいのではないのか?」と意見もあるでしょうが、流体によっては腐食や反応物の堆積などで正確な温度が測れない可能性がある事を考慮しなくてはいけません。
マスフローの主用途である半導体プロセスガスには、特に腐食性ガスが多いのです。
間接接触での測定は、感度の上で適切なものがなく、感度を得るためには温度センサーを取り付ける接ガス材質をステンレスよりも熱伝導率の良い材質に変更せねばならず、これもまた半導体プロセスでは問題になる可能性があります。

こういった理由でやむなくMFCの周辺環境温度を温度補正に使っているのです。
実際にDecoが経験した事例ですが、MFCにガスを供給している配管に空調が冷気を直接吹き付けていたことでMFCへ過度に冷却されたガスが入り、周囲温度と流体温度との差が大きくなって、温度補正が適切に行われず、流量異常を起こしてしまったことがあります。
寒冷地の屋外では、この問題はさらに深刻です。
なぜならマスフローにガスを供給するガスボンベの設置は、ほとんどの場合、空調の無い屋外環境だからです。
前空調の吹き出しからの冷気程度ならば、吹き出し口の向きを変えるか、空調の風が当たる配管に断熱材を巻くような処置で対応できますが、ボンベそのものから冷えたガスが入ってくる場合は、それほど簡単ではありません。
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どうすればこういった問題を解決できるでしょうか?
ガス温度を直接測って、温度補正できるマスフローが開発されない限り、当面は配管施工、マスフローの運用で解決するしかありません。
屋外で空調の無い場所で設置するのだから、あえて屋外のボンベ庫に隣接して耐候型マスフローを設置する事で、同じ温度環境にしてしまうのも手です。
もしくはガスラインがマスフローの設置してあるエリアに入る時点で配管ラインを長く取って温度をなじませるような仕組みを設けるべきですね。
熱交換器というか、スパイラルに巻いた配管でいいので設置してみると効果が出る場合もあります。
いずれにしても「マスフローの周囲温度と流れてくるガス温をほぼ同じにして使わないといけない」という、マスフロー最大の弱点を認識して配管を施工して頂けるとありがたいです。
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


【定期掲載】<注意喚起>マスフローを修理返却されるに当たってのお願い

毎年書かせて頂いているので、またかよ?とおっしゃる方もおられるでしょうが・・・
人命にかかわる事ですので、しつこく書かせて頂きますね。


4月以降の新年度でマスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)を、修理や再校正作業でメーカーに返却される場合、気を付けて頂きたい事があります。

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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

修理依頼品に付けて頂きたいメーカー指定の書式があるとお思いますが、Decoが現役のメーカー時代から、これが記載されていなかったり、不十分なものが散見されます。
特に除染関連、このマスフローにはこういった種類のガスをどれだけ流していて、取り外し後はパージ作業を行ったか?という書式は、日本ではなおざりにされがちです。

たとえばブロンコスト・ジャパン(株)でしたら、除染告知書という書式があり、これが必要事項記載されていない場合、作業には取り掛からないという約束が世界的にあります。

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【除染告知書 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

除染告知をおろそかにするという行為は修理内容の確認で双方の時間を浪費するだけでなく、
最悪の場合作業者の健康を損なったり、生命の危険を招くこともあります。

「Decoさん、いくらなんでも大げさでしょう。」と言われるかもしれませんが、マスフローに流される流体は決して安全な空気だけではありません。
特に半導体製造では毒性、可燃性のガス種のオンパレードであり、ppmオーダーで致死量に至るガスもあります。

もう時効だからお話ししますが、20年以上前お客様から返却された窒素のマスフローに塩素が充たされていたことがありました。添付された書類にはどこにも塩素を流したとは書いてなく、パージの項目は「済み」と記載しました。
受け入れ作業で開封したところ、わずかに塩素ガスの匂いがしたので、あわてて除害ボックスに放り込んだのですが、受け入れ担当は気が付くとうっすらと鼻血が出ていたとのことです。

この話を依頼元のお客様にしたところ、「知らない、君たちの受け入れのやり方が杜撰なんだろう。」と言われました。
安全を確保するには、すべてを疑ってかからないといけないのは確かで、受け入れ側にも改めるべき点はありましたが、自分達が使用したプロセスを把握せずに修理に出す”杜撰な人”に言われたくはありませんね。
(因みにその会社は経営のやり方も杜撰だったのか、もう存在していません。)

マスフローの修理や再校正をご依頼頂く際は、以下の事を明確にしましょう。

・依頼者の連絡先
・製造番号
・どのような流体で使用されていたか?
・送る前にどのような洗浄されたか?
・故障内容の詳細(いつから、どこで、どのように不具合が生じているかを詳細に。)
・再校正依頼ならば、出荷にどういったドキュメント(トレーサビリティ体系図等)を付ける必要があるか?

Decoからのお願いでした。

MFC豆知識 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第391話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その3

寒い冬場の屋外用MFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
前回、「屋外でも屋根や壁があってマスフローは風雨に直接さらされません。ならばIP40のMFCで大丈夫ですよね?」という顧客からの問いかけに、どうDecoは答えたでしょうか?

実は耐候性能を持つマスフローの作りの堅牢さは、伊達ではありません。
IP65仕様のマスフローのケースを見ると、非常に重厚な作りであり、更に隙間にはシールが施されています。
これは防塵防水だけでなく、冷たい外気からもマスフローの電気回路をしっかり保護してくれるという利点があるのです。
Decoは屋外もしくは屋外に準じる環境で使用される顧客にはその点を強く推しています。
先ほど質問への回答も「防塵防水だけでなく、環境温度変化に対するセンサーと電子部品保護という観点で耐候型IP65タイプマスフローをお薦めします。」と説明しました。

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IP65耐候仕様MFM 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

同じような質問で「MFCの温度補償範囲を超えてしまっても動作はしますよね?」という質問に直面した事もあります。
ここでマスフローの熱式流量センサーの特性を解説させて頂きます。
熱の移動を捉えてそれを質量流量へ変換するセンサーならば、温度変化という外界の熱環境の変化の影響を受けないはずはありません。
マスフローのセンサー温度とマスフローを通過する流体温度とのモデルで説明します。
(このモデルは特定のメーカーのセンサー方式を説明したものではなく、概念説明のために簡略化や、数値を都合良く加工している事を予めお断りしておきます。)

マスフローの熱式流量センサーに仮に100℃に加熱したヒーターがあったとしましょう。
この流量センサーに100℃の流体が触れても同温だから、当然熱移動は起きません。
つまり100℃の流量センサーに100℃の流体を流しても、そのマスフローからの流量出力は0になりますね?
今度はそこに0℃の流体を流してみます。
温度差は100℃あるから、大きな流量出力となるはずです。
この架空のマスフローセンサーの温度特性は、0℃を100%としたとき、-1%/℃の傾きで温度による影響受けると表現できます。
10℃流体温度が上がるだけで、流量センサーの出力は-10%になりますから・・・このままでは当然質量流量計を名乗ることはできません。

そこで温度補正というセンサーの生出力に対する補正を入れることで、実用性を加味してみましょう。
常温域、25℃をセンターとしたマスフローで一般的な使用温度範囲に補正をかけると、下図のようなモデルになります。

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簡単に言えば、25℃より低い温度では、センサー出力を下げる補正を、逆にそれより高い温度では上げる補正をかけているのです。
このモデルで示す平坦化した範囲が、精度保証温度範囲 25℃±10℃ というスペックの部分なのです。
つまり温度範囲を少し逸脱して使用してもマスフローは異状なく動作はしているように見えても、測定値が実流量を現しているかは疑問であり、境界を越えた直後は誤差がその分大きく出てしまう可能性すらあるという事なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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