EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

真・MFC千夜一夜物語 第152話 MFCと質量流量計の関係 その1

 先週告知いたしましたが、この度、日本工業出版さんの「計測技術」誌に連載を始めさせて頂けることになりました。これも本ブログに多数のアクセスを頂いている皆様のおかげと思っております。

 さて、今回から連載連動企画としてMFC(マスフローコントローラー)の質量流量計としての側面をお話ししていこうと思います。
このお話はMFCの根本に関わるお話として、本連載の第3話で一度取り上げています。
「では、質量流量計とは?」というお話はさらっと流してしまいましたので、改めて質量流量計というジャンルの中でのMFCの立ち位置に関するお話をさせて頂きます。

 既に何度か書きましたが、質量流量計が体積流量計よりも有利なのは、あらゆる計測コンディションで不変の単位である質量を用いる点です。(故に“重量”ではなく“質量”でしたね?)
それに対して「ボイル・シャルルの法則」=「ある質量の気体の体積[V]は、絶対圧力[P]に反比例し、絶対温度[T]に比例する」に従って、温度・圧力というファクターで標準状態を定義しなくてはいけない体積流量計は、その運用を間違えると値を大きく読み誤ってしまいます。 

 例えば0℃、1013hPa(1気圧)条件での1Lという体積は、20℃、1013hPa条件下では、絶対温度293K÷273K=1.073倍となります。
7.3%の誤差ですよ!
流量計のカタログに記載されている精度保証値が±1%か?それとも±2%か?等と論じているレベルを大きく超えてしまいってますよね?

 また、大気圧という曖昧な基点をベースにするのも難しいところです。
大気圧という基準は、大変曖昧になりがちです。
気圧は測定場所の高度だけではなく、天候によっても左右されますね?
よく晴れた高気圧に覆われた日の1020hPaと、台風直下の920hPaの差を思い浮かべて見て下さい。
(ちなみに日本で上陸した台風の中心気圧で、最低記録は1961年に高知県室戸岬西に上陸した第二室戸台風の925hPaだそうです。統計開始前の1934年の室戸台風 は911.6hPaという記録が!どちらにせよメニエール病を持病に持つDecoにとっては真っ青です!) 

 それに対して質量流量計の利点は、温度・圧力条件の換算が不要なので、大変使いやすいという点なのです。そして、この「使いやすい」という言葉がMFCの性格をよく表しています。

 質量流量計の代表は熱線式流量計(MFC)とコリオリ式流量計です。
その心臓部である流量センサー部の構造は大まかにはこうなっています。

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熱とコリオリ力 測定に利用する原理が異なると、構造も全く異なりそうですね?
原理の詳細等は「計測技術」誌の連載をお読みくださいね。(宣伝しています。)
来月からは熱式vsコリオリ 果たしてどちらがどう優れているのか?をお話ししていきましょう。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 番外編 マスフロー千夜一夜物語新展開のお知らせ 

平素は本ブログ並びに”真・MFC千夜一夜物語”をご愛読頂きましてありがとうございます。

新年を迎えた連載冒頭ので”本ブログでは、週一ペースで更新しております真・MFC千夜一夜物語ですが、本年は新しい媒体での展開も予定されております。時期が参りましたら、皆様にご報告申し上げますので、宜しくお願いいたします。”と予告しておりました新展開のご案内をさせて頂けることになりました!

日本工業出版株式会社さんが発行されている「計測技術」誌(毎月25日発売)で、
マスフロー千夜一夜物語 <質量流量計の基礎> 
というタイトルでの連載を始めさせて頂くことになりまして、第1回は2/25発売の3月号となります。

計測技術誌に関して、日本工業出版さんのHPの記載を引用させて頂きます
【引用】
工業計測の各分野について
1. 基礎計測-物理・化学量等基礎的諸量の計測と分析。
2. 計測要素-回路、装置、精密機器。
3. プロセス計装-計画、管理、プロセス制御。
4. 自動化機器-サーボ技術、NC、マテリアルハンドリング、自動倉庫。
5.情報処理-データ処理、電子計算機及びその応用。
以上5本の柱を編集の基本にし基礎理論から事例など実務応用面に至る諸問題をとりあげております。
【引用終了】

 DecoもMFCメーカーの現役時代に、同じ日本工業出版さんのクリーンテクノロジー誌と並んで何度か寄稿させて頂いたり、座談会に出席させて頂いた事があります。
大変歴史もあり、学術性の高い専門誌です。
正直、連載のお話を頂いたとき「こんな若輩が連載を書かせてもらっていいのかな・・・」と悩みました。
でも、MFC千夜一夜物語を始めたときの「MFCにはビギナーが参考にできるような書籍が全くない。お客様や業界の先輩方から教えて頂いた貴重な知見をなんとか残し、次世代に共有できるな場所が作れるならば、挑戦してみよう!」と思った初心を思い出し、お受けしました。

決してブログのまとめにならないよう、質量流量計としてMFCの対極にあるコリオリ式流量計を取り上げたり、より彫り込んだ内容を目指して出発いたしました。

月一回の雑誌連載”マスフロー千夜一夜物語”と週一回WEBでの”真・MFC千夜一夜物語”
MFCという不思議な機器に関する旅を見守って頂ければと思います。
宜しくお願いいたします。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco 黒田 誠 EZ-Japan

四国計測工業株式会社 高効率熱交換器 EXシリーズ

香川県にある四国計測工業株式会社(本社:香川県仲多度郡多度津町南鴨200番地1代表取締役社長 津田 富造さん、以下 四国計測と略記)の製品 高効率熱交換器 EXシリーズ をご紹介します。

実は四国計測さんで本製品の開発担当をされている方が、DecoがMFCの営業を始めた頃の大先輩でして^^;
最近、セミコンジャパンの会場で再会しまして、早速取材させてもらったのでした。

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 熱交換器=ヒートエクスチェンジャーという機器に馴染みが薄い方もおられるかもしれません。
MFCですと、高温用MFCというものがあり、高温状態のガスを測定・制御しています。
また、液体材料を気化する際には、キャリアガスと言われる高温のガスが使用されます。
こういったプロセスでは、当然使用するガスは室温(もしくはもっと低い温度)のガスを高温にする仕組みが必要です。
言葉で“高温にする“と言うのは簡単ですが、流れているガスを温めるというのは、実は大変難しいのです。
寒い時期にエアコンをいれても、すぐには暖かい空気は出てきませんよね?
ましてや毎分400Lなどという大流量で流しながら、ガスを均一に昇温するのは至難の業です。

 ご紹介する四国計測さんの高効率熱交換器 EXシリーズは、独自の技術で開発された高伝導材封入技術とジグザク流路構造(特許出願中)を採用し、0.1~400L/minまでの流量を、室温+10~400℃までの温度全域に対して、昇温率なんと90%以上を達成した熱交換機なのです。

*昇温率=流体昇温開始後30min経過後の出口温度 / 設定温度 × 100% と定義

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これはすごいことです。
特に大流量になればなるほど、高温になればなるほど、なかなか与熱することができないのが常です。よくある熱交換機ですと、温度設定は***℃と表記されていても、実際の熱交換機から出てくるガスの温度を定義していないことが多いのです。
つまり「がんばりますけど、結果はわからないよ!」ということですね?
四国計測さんのEXシリーズは、性能に強い自信があるから謳えることですね。
秘密は前述のジグザグ流路で生成する「乱流」にあるようです。
お、MFCでもたまに話が出てくる乱流ですね!

接ガス部はSUS316Lで、オプションで電解研磨仕様も製作可能とのこと。
半導体プロセス等のクリーン環境や、腐食性の高いガスにも対応できます。
幅広い分野での流体温度制御に利用できそうですね。

詳しくは四国計測さんのHP 高効率熱交換器 EXシリーズ をご覧になって下さい。

【EZ-Japan ここでもう一押し!】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第151話 MFC最大の弱点とは・・・ その15

MFC(マスフローコントローラー)もう一つの最大の弱点は急峻な圧力変動でした。
PI(Pressure Insensitive)もしくはPTI(Pressure Transit Insensitive)と呼ばれる技術(このブログでは、総称として「PI」と呼称しておきます。)の概要をご説明しました。
圧力センサーを内蔵することで、MFCの上流圧の急峻な変動を捉まえ、流量センサーと制御バルブのフィードバック制御に「待った!」をかけて、バルブ開度をホールドするという仕組みは、その条件設定が上手くいけば一定の効果を期待できるものです。

 PI-MFC開発がある程度安定してきたので、「ここまできたら、プロセスパターンに応じてAFC(Automatic Flow Controller)APC(Automatic Pressure Controller)を使い分けできるMFCなんてどう?」等という無責任な放言をDecoはMFCメーカーの技術屋さんにしています。
PI-MFCは「1次圧変動を監視する」アイテムなので、圧力センサーはMFCの上流にありますから、そのままでは当然1次側圧をウォッチしての制御(チャンバーからすると背圧制御)しかできません。
MFCの配置される位置は、当然チャンバーへのガス供給系が多いので、2次側(供給圧)制御には下流側を見る別の圧力センサーとの連携が必要なわけです。

 APCには圧力センサーの設置位置で上流圧/下流圧制御という2タイプがあることは、以前の連載でお話しましたね?
その点、MFCは、「流量」というファクターで制御しますので、基本的に流量は1次側/2次側の区別が厳密には必要ないので、流量センサーは上流側に配置されるのがメインです。
では、2次側に流量センサーを配置したMFCが全く存在しなかったかと言えばそうでもなく・・・実はPI-MFCが現在の構造にいたる前の過度記のPI-MFCとして存在していたのです。

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 圧力変動対策1=ラインレギュレーターを置く、対策2=タンクを置くに似通った対策1.5的な構造のものとして上図のようなMFCが世に送り出しされていた記憶があります。
この構造は流量制御バルブ&オリフィスを流量センサーより上流に持ちますから、当然1次側の急峻な圧力変動影響を、もろに流量センサーが拾うことはありません。従来MFCの構造をひっくり返しただけの簡単な対策でかなりの効果が望めたのです。(今、お手元にある従来型MFCを上流/下流ひっくり返して配置してもその効果は得にくく、MFCとしても正常動作しません。念のため・・・)

ただ、この構造には当然のように弱点がありました。
今度は下流での二次側圧力変動に対して、流量センサーが無防備になってしまうのです。
圧力影響だけならばまだいいのですが、半導体プロセスのような2次側が真空状態で使用される場合、流量センサー管内が真空になり、それによるセンサーと層流素子の分流比が崩れることで、流量信号自体に出荷校正時とずれが生じるような問題も懸念されます。
流量センサーを守るために、二次側出口にオリフィスを入れる方法もあるのですが、結果MFCでの圧力損失が増大することで使用できなくなる低蒸気圧ガス等も出てくるので、あまり好ましい結果は出せなかったようです。

 こんな構造のMFCも現在のPI制御の応用で、流量制御時は二次側圧力をモニターしながらバルブを制御し、APCとしては供給圧力コントロールを行うようなハイブリッドコントローラーで再度実用化されても面白いのになぁ、とDecoは思っています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第150話 MFC最大の弱点とは・・・ その14

MFC(マスフローコントローラー)もう一つの最大の弱点は急峻な圧力変動でした。
PI(Pressure Insensitive)もしくはPTI(Pressure Transit Insensitive)と呼ばれる技術はMFCの最新の技術トレンドです。(このブログでは、総称として「PI」と呼称しておきます。)
このMFCを最初に世に送り出したのは、Celerity社(現在はBrooks Instrument社)だったはずです。
図で示すとMFCの内部はこのような構成になっています。
前回の図で上流側にあった圧力センサーを内蔵した形ですね。

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 この構造のメリットは、MFCと圧力センサを一つにして配管システムのフットプリント(専有面積)小型化に貢献できることです。
現在の半導体製造装置のプロセスガス供給系は、ほとんどがIGS(Integrated Gas System)と呼ばれるブロック方式の集積ユニットになっています。
従来配管で繋いでいたバルブ、ラインレギュレーター、圧力センサ、MFC等の配管規格を、底面からガスを出し入れする形状に変更した上で、その底面部を所定寸法基準と共通シール方法を採用した正方形ブロック(MFCの場合は長方形になります)として並べて接続していく手法です。
IGSに関しては、詳しく後の連載でお話ししましょう。

 こういったIGSが普及した背景には、一時はガスジャングルと呼ばれたこともあながち大げさではないくらい多系統、複雑化したガス配管ユニットのフットプリントと重量の装置本体への負担を軽減し、同時に全ての機器を上方へ着脱できる構成にすることで、メンテナンスを楽にしたいという装置メーカーサイドの欲求がありました。
今までのMFCと同じ大きさで、なおかつPI機能を持ち、当然圧力センサとして圧力信号も出力、表示が可能ならば、この流れには大変歓迎されるアイテムとなりえたのです。

 ただ、PI機能というものは、なかなか設定が難しい機能なのです。
なぜならば「急峻な圧力変動」には流量制御バルブをホールドして追従させないけれども、だからといってどのような圧力変動が起きても全く追従しないとなれば、それは「温度・圧力が変動しても一定の流量制御ができるMFC」では無くなってしまうからです。
ガスライン切り替えなどで生じる急峻な圧力変動だけを見分ける方法としては、単位時間当たりの圧力信号の変動量で閾値を作り、その値以上ならばバルブをホールドさせるという判断をPI-MFCにさせる方法が用いられることが多いようです。
でも、結局は「この閾値をはたして、どこに置くのが良いか?」と考え始めると、これまた難しいのです。
「敏感にして(閾値を下げ)頻繁にバルブをホールドさせるのがいいのか?」
「鈍感にして(閾値を上げ)あまりホールドしない方がいいのか?」


 これはガス配管レイアウトと、何にも増してライン切り替えシーケンスに密接にリンクしています。
PI機能を持つMFCを作るMFCメーカーと、配管システムとプロセス制御系を製作する装置メーカーが密接に情報交換を行って、真に必要なときにだけ確実に作動するPI機能の動作条件を作り上げる必要があったのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan
EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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