EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

MFCに水が入ってしまった!

MFC豆知識です。
「ガス用のマスフローコントローラー(MFC)、オートマチックプレッシャーコントローラー(APC)に水分が混入してしまった!どうしたらいいか?」という御質問をよく頂きます。
MFC千夜一夜物語でも解説を行っているのですが、豆知識でもその対応をお話ししましょう。

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MFCとAPCの構造を図示してみました。
この2種は実は兄弟のような関係でして、センサーが流量を測る流量センサーなのがMFC.圧力を測る圧力センサーなのがAPCと考えてもらえばと思います。

この構造で水分が入った場合、バルブを全開にして上流から圧を上げた窒素のような不活性ガスでパージを試みて頂くのが、手っ取り早い方法です。

でも、そうもいかない場合があります。
それは両者の構造によるものです。
まずMFCの場合は・・・
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流量センサーと流量制御バルブどちらもです。
MFCの流量センサーは内径1mm未満の細いセンサーチューブと、同じくらいの径チューブの集合体であるバイパスで構成されていますので、ここに水分が入ると簡単に抜く事が出来ません。
そして流量制御バルブも流量レンジによりますが、オリフィス部とその周辺の空間にが細くなっていて水分が貯まりやすくなります。

APCの場合は・・・
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圧力センサーがダイヤフラムタイプの場合、非常にシンプルな流路になるのでまだいいのですが、やはり流量制御バルブ(APCのバルブはあくまで流量を制御して圧力を作り出すバルブでしたね?)はMFCと同様なのでやはり狭い流路があって水分が抜けません。

エタノールのような粘度の流体ならいいのですが、オイルやスラリーのように粘度の高い流体が入り込むとパージで抜くのは難しくなります。
その場合はメーカーのサービス窓口に相談いただいた方がいいですね。
その際はどういう異物が混入したかを正確に告知してください。
知らずに対応しようとしたメーカーのサービス担当が、危険な目に合わないように注意してあげていただきたいです。

MFC豆知識 by  EZ-Japan Deco

真・MFC千夜一夜物語 第421話 MFCの応答性能 その3

2024年、あけましておめでとうございます。
本年も本BLOGを宜しくお願いいたします。
年明けから令和6年能登半島地震、そして羽田の航空機事故と続きました。
犠牲になられた方々、そのご家族にお悔やみ申しげますとともに、
被災された方々が一日でも早く元の生活に戻れるよう祈っております。
わずかな金額ですが、EZ-Japanからも被災地への寄付をさせて頂きました。


さて、2024年もMFC千夜一夜物語を始めさせていただきます。
章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
流体に直接接触するMEMS型は感度が良く応答が速いというお話をしました。では、なぜ、MFCのメイン市場である半導体製造装置ではあまり用いられないのでしょうか?

それは“直接流体に接触する”というMEMS型の利点が、半導体製造プロセスで使用されるガスでは仇になってしまう事があるからなのです。
MEMS型の代表的な構造を見てみましょう。
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上図にあるようにMEMS型の場合、流量センサーを構成するマイクロヒーターとその上流下流の測温センサーが流体に直接接触しています。
これが巻線型のような非接触、SUSチューブを介して熱の受け渡しをしているタイプよりも敏感なセンサーを作れる要因なのですが、半導体製造工程では塩素のような腐食性ガスを使用することもあるのでセンサーの劣化が懸念されます。
更にMEMSの場合、ボディ側への熱の逃げを避けるために、シリコンダイヤフラム上にMEMS技術で形成している事もあるので、このダイヤフラムの腐食、もしくは逆に反応による異物堆積によるもんだいもあります。
また、半導体プロセスでは危険なホスフィンのような毒ガスや、シラン系の可燃性ガスも存在しますので、ダイヤフラムの下にある空間にそれらが入り込んでなかなか抜けない=つまり置換効率が悪し構造になることも好まれません。(毒ガスに限らず、ガスの置換効率は重要視されます。)

こういったMEMSの構造上と特徴から、半導体プロセスでは避けられてしまったという歴史がありました。
Decoとしては、前述の深堀りRIE=ボッシュ工法の微小流量酸素ラインの制御にMEMS型を使用している海外の装置メーカーは存在しているのも知っていますので、「シリコン半導体用のエッチャーで酸素の微小流量&高速流量制御が必要なラインだけでも使えたら面白いのになぁ。」と考えていました。
半導体製造装置設計に携わる方々からすると、何を言ってるんだ!とお𠮟りを受けそうですが、MFC屋の立場だとMEMSのMFCは巻線型ではどうしても対応できない高速応答という分野で、素晴らしい結果を出してくれているのは確かなので・・・

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

年末年始休暇のご案内

EZ-Japanは、2023年12月29日(金)午後より1月8日(月)まで、年末年始休暇とさせていただきます。
それに伴い次回のEZ-Japan BLOG更新は、年明け1/9日(火)の更新からとなります。

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本年も大変お世話になりました。
気が付けば2014年に創業したEZ-Japanも10年です。
今年はWeb-MTG(ウェブ・ミーティング)だけでなく直接お客様にお目にかかる機会も増え、
MFC業界自体は昨年の反動と半導体投資の手控えで落ち込みもあったようですが、
お陰様で過去最高であった昨年度に迫る業績で締められそうです。
また、MFC千夜一夜物語のハングル版を始める事が出来たのも大きな試みでした。
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日本だけでなく、韓国のお客様にもMFCのお話をお届けできるようになったのは大変喜ばしいと思っております。

これも皆様方のご支援や家族の支えのお陰です。
ありがとうございました。

2024年もEZ-Japanと黒田 誠(Deco)を宜しくお願い申し上げます!

EZ-Japan 代表 黒田 誠(Deco)
  

真・MFC千夜一夜物語 第420話 MFCの応答性能 その2

巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
まずはおさらいで、熱移動を流量検出原理とする熱式流量計もセンサーが関節接触型の巻線型か?直接接触型のMEMS型か?で感度が異なるお話をしました。
 
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上図にありあますように、熱の移動でセンサーの抵抗値のバランスが傾いた差分をブリッジ回路で取り出すのが、熱式流量計の基本的な構成です。
その差分で得られる信号は相当微弱なものですので、それを後段で増幅したり、直線性を補正したりすることで0-5VDCといってリニアな流量信号へ加工している訳です。

微弱な信号であるが故に、それでも相対的に感度が良いというのはセンサーにとっては良いことづくめなのです。
まず利得が大きいので、SN比がより良い信号を得られます。
SN比は音響関係でよく使われる言葉ですが、シグナルノイズ比(Signal-to-Noise Ratio)の事です。
有効な信号成分(シグナル)と雑音(ノイズ)成分との量の比率のことですね。
シグナル中に含まれるノイズ量の比率を表し、この値が大きいほど信号の品質や機材の性能がよいことになります。

では、MFCの流量信号でノイズとは何でしょうか?
実は皆さんよくご存じのゼロドリフトのことです。
SN比がよい信号は、ゼロドリフトが相対的に少ない事になります。
巻線型センサーから取り出される信号はかなり微弱なので、その分後段での増幅を大きくしないといけません。
困ったことに、そうすることで自ずとノイズも増幅されてしまうのです。
つまりゼロドリフトの量も大きくなってしまうのですね。
ゼロの長期安定性の悪化はMFMやMFCの精度性能の維持に大きな悪影響を与えてしまうのです。

MEMS型の最も美味しいのは、直接流体に触れている事で、応答性が格段に速い事です。
これは巻線型では追いつけない領域です。
前回お話ししたお湯を素手で触るのと厚手のゴム手袋を着けて触るという例え話を思い出して頂ければ、納得いただけると思います。
この応答性の速さを評価して、深堀りRIE(Reactive Ion Etching)=ボッシュ工法の微小流量酸素ラインの制御にMEMS型を使用している装置もあるくらいです。(残念ながら最先端シリコン半導体用のエッチャーではありませんが・・・)
また、エアリークテスターのような微小な漏れ量を素早く完治したい用途は、以前は応答反応が速い差圧式が人気でしたが、最近ではMEMS型の熱式流量センサーを搭載したMFMが見直されたりしています。

こんな優れたMEMS型なのですが、前述のシリコン半導体製造ラインではあまり好かれていない状況で、これには理由があります。
直接流体と接触して測定するというMEMS型の特長が仇になる形なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第419話 MFCの応答性能 その1

章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して速くはならない理由のお話です。

熱の移動を流量検出原理とする熱式流量計とはどういったものだったか?おさらいしましょう。
巻線型であろうとMEMS型であろうと、熱式流量計の流量式は以下になっていましたね?

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簡単に言えば、流れ込んできた流体が奪う熱量は、その流量と比例関係にあるといものでした。その点では巻線型もMEMSも差はありません。
というか、そもそも巻線型熱式流量計をMEMS技術で置き換えたのがMEMS型と言えるので、これは当たり前のことです。

ところがこの両者に決定的な構造の差があります。
図にありますように巻線型がセンサーチューブの外周に細径のニクロム線を巻く事で、ヒーター及び測温抵抗体として使用しているのに対して、MEMSは接ガス面にシリコンのダイヤフラムを形成して、そこにヒーターと測温抵抗体を形成しています。
つまり、測定対象の流体に対して巻線型は非接触なのに対して、MEMS型は接触しているのです。
これはセンサーの感度にとって大きな差となります。
よく講習会では、「お湯の熱さを計る際に素手の場合と、厚手のゴム手袋をした場合の違い」という説明をして納得いただいています。
この例えでわかるように、たとえ0.35mm径のSUSチューブであったとしても、流体が非接触な状態で熱の移動を測るという事は、感度的には非常に不利になります。
このようにまず同じ熱式でも、非接触タイプの巻線型と接触タイプのMEMS型ではセンサーの感度に対しては大きな差が生じるのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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