もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年9
月号(8/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)の流量校正に関する解説です。本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

前回から引き続き、ブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech B.V. 以下ブロンコスト)の防爆用=危険場所用マスフロー(MFCとMFMの略語)のEX-FLOWシリーズの紹介です。

熱式流量センサーはその構造上、流体による熱の移動を捉える方式なので、防爆という観点では、その熱が危険であるという誤解が多かった歴史があります。
そもそもガスの流量測定を行うのは全体の中でセンサー管を通る微小な流体に対してであり、更に巻線方式のセンサーの場合は直接流体に接触はしていないので、懸念されるような問題はあり得ません。(下図)


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ただ、本質安全防爆構造の趣旨からいって、最小点火エネルギーを下回るエネルギーしか供給できない為に、EX-FLOWでは、24VDC 20mA以下の信号で電源供給と流量信号のやり取りを行っています。
流量出力は15~20 mA (線形)で端子台接続となり、本質安全防爆Ex ib ⅡCに対応した認証済みの本質安全回路への接続専用となります。
その為、次回以降で解説する非危険場所に設置する専用設計のバリア内蔵電源・信号変換器が必要になります。
 

EX-FLOWは、これと接続することで初めてMFMとして動作することになるのです。
つまりEX-FLOW自体は厳密にいうとMFMではなく流量発信器、マスフロートランスミッターなのですね。(聞きなれない言葉だと思うので、圧力センサーに置き換えて表現するならば、圧力トランスミッター的な存在と言えます。)
接続した信号変換器を用いて初めて4-20mAのアナログ信号へ変換することができるのです。

EX-FLOW MFMは流量範囲:0.16~8 ml/minという小流量レンジモデルから220~11,000 m3/h という大流量レンジモデル(いずもAir換算、Normal 0℃、1013hPa校正)まで対応し、圧力範囲:真空~40 MPaという今までのブロンコストの熱式マスフローラインナップのほぼすべての範囲を網羅しているので、幅広い用途に対応ができます。
(写真 大流量用ウエハータイプ EX-FLOW)

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

これは本質安全防爆構造が、点火源である電気系に対する要求であり、その要求は基板が収まるヘッド部分に集中する為なのです。
つまり、その他の部分、ボディ構造、流路構成は従来モデルのそれがそのまま応用できるという利点があります。
耐圧容器に収めるタイプの耐圧防爆構造のマスフローよりも同じ仕様ならば小型であるだけでなく、流量・圧力のバリエーションに富み、かつコストが安いというメリットを提供できます。
耐圧防爆構造の場合、耐圧容器にかかるコストの割合がどうしても高いのです。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan