<訂正 ”マスフローでこのガスを使う時は注意しよう!” に改題しました。>

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。

 

前回までマスフローコントローラ(MFC)とマスフローメータ(MFM)のを描くこの千夜一夜物語のラスボスの一人、コンバージョンファクタ(CF絡みの、ややヘビーなお話をさせて頂きました。

今回からは少しライトに、マスフロー(MFCMFMの総称)で使用する一般的なガスに関しての注意事項として実務的な解説を行います。
マスフローは多種多彩なガスを測定&制御する機器ですので、CF以外にも校正ガスである窒素(空気)との違いが思わぬ運用上の問題を引き起こすことがあります。今回は一つ一つのガスに関して、特に安全面に重きを置いて、解説していきたいと思います。

 

空気(Air

空気は、皆さんにとって一番なじみ深い気体ですね?
その組成は、体積比で窒素(N2)78.084%、酸素 (O2) 20.9476%、アルゴン(Ar) 0.934%、二酸化炭素(CO2) 0.0390%・・・と続きますが、要は窒素8割弱+酸素2割強を主成分とする混合ガスです。
CF
は窒素を1とした場合、酸素も0.99辺りなので限りなく1に近いです。
その為、マスフローでの測定&制御性は良好です。
ただし、供給源としてボンベ(乾燥空気)ではなく、コンプレッサーやブロアーを使用する確率の方が圧倒的に高いので、それらからの水分や粉塵のような異物の混入には細心の注意が必要です。
何回か解説してきましたが、特に巻線型分流構造のマスフローにコンプレッサーエアーを導入する際には、ドライヤーとフィルターで異物を除去して下さい。
理由としては分流構造部の狭隈な流路に異物が入り込むことで詰まりが生じ、初期の分流比を変化させてしまい、結果として繰り返し性能を損なう可能性があるからです。
Deco
が経験してきた「使用しているうちにマスフローの流量が大きくずれてきた!」というクレームの大部分は、返却されたマスフローを分解してみると分流構造部に異物が侵入していた、というパターンが多いのです。

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対策としては前述のとおりなのですが、圧縮空気供給ラインにドライヤーと適切な粗さのフィルターを設置していただく事です。
それだけでなくマスフローの選定に関しては、分流構造のものより流路がシンプルなCTA(=インサーションセンサー)タイプ全量計測方式マスフローの採用をDecoは推奨しています。
異物を取り切れず、どうしても混入してしまうような環境というのはある。ならばマスフローもそれに適したものを選ぶべきですね?

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株) MASS-STREAMシリーズ】

もちろんセンサー部から配管内面までが異物で覆われてしまうようなひどい環境に対しては、インサーションタイプとて万能ではありません。
ただ、φ1㎜以下の細径のセンサー管や層流素子という部品が存在せず、分流部をそもそも持たないということが、この方式のアバンテージです。同様にチップ(MEMS)センサータイプでも対応は可能ですが、MEMSで構成されたヒーターと温度センサーは微細であり、そこに異物が付着してしまうと初期の熱プロファイルを維持できなくなってしまう問題があります。

また、MFCの場合は、センサー部だけでなく、その下流にある流量制御バルブのオリフィス部に異物が堆積することによる、制御不良(出流れやフルスケール流量が確保できない等)が考えられます。
これは流量レンジと圧力条件によりKv値(Cv値)が異なり、オリフィス径も異なるので一概には言えませんが、オリフィスが細くなる小流量では特に注意が必要です。

それと忘れられがちなリスクなのですが、空気は支燃性ガスである酸素を20%含むガスであることは覚えておきましょう。
「空気なんだし、たとえ外へ漏らしても大丈夫!」とう思い込みは、マスフローの周囲環境によってはかなり危険な自己を引き起こしかねないのです!
マスフローと周辺配管のリークチェックは、厳しく行ってくださいね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan