もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」

20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。
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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

 窒素(N2)

今回は窒素から始めましょう。
窒素は一般的にボンベで供給されることが多く、安価なガス供給源としてよく使用される流体です。
不活性ガスとして窒素には多くの役割があり、アルゴンなどの希ガスに比べると安価なこともあり、特にパージ用、防爆用で多く用いられています。
マスフローコントローラ(MFC)とマスフローメータ(MFM)のコンバージョンファクタ(CF)の基準ガスであることもあり、また各メーカーのマスフローの性能評価試験も窒素で行うことが多いことから、経験もバックデーターも豊富で大きな問題を起こしにくいガスです。

窒素ガスの供給減がPSA方式のガス発生機を使用している場合は、PSA内部の吸着剤等の異物が下流にあるマスフロー(MFCとMFMの総称)へ入り込まないように注意してください。
また、ボンベにも一般工業用からクリーンプロセス用で純度という質の差が大きいので、安いからといってあまり純度の悪いガスを使用するのは奨めません。
なぜなら純度99%ということは残り1%に何が入っているかは保証の範囲ではないと考えてよいからです。

窒素が一番恐ろしいのは外部リークです。
大量に消費されるだけに、一気に多くの量が多岐に渡って流れる配管レイアウトを組まれていることが多いのです。
マスフローの外部リーク箇所から漏れ出た窒素がガスボックス内に充満し、うかつに覗き込んだ瞬間に窒息という事故が起こらないとは限りません。
マスフロー本体のお話からはやや脱線しますが、窒素に関してお話をしておくと、液体窒素をLGCLiquid Gas Container =可搬式超低温容器、ELF = エルフとも呼びます)でハンドリングする際は要注意です。
LGC
は屋外、それも開放されたスペースに置かなくてはなりません。なぜなら夏場などの温度の高い条件で気化した窒素で内圧が上がると、外へ廃気される仕組みだからです。
LGC
を誤って閉鎖空間で転倒させて液体窒素が漏れ出たら大変な惨事が引き起こされます。
液体窒素1Lが気化すると体積は約646倍になります。
その空間にいる人間は全員窒息死するでしょう。
高層階にやむを得ずエルフをエレベーターに乗せて搬送する際は、決して運搬作業者が同乗してはいけないと注意されるのは、その為なのです。

 


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan