もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」

20193月号(2/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)の流量制御バルブのアクチュエーターとしてソレノイドを搭載したMFCの使用上の留意点を解説しています。


酸素(O2

酸素は一般的なガスの一つですが、支燃性ガスとして非常に危険なガスである事があまり認識されていません。
水素やプロパンのような可燃性ガスには注意を払っても、酸素に関しては無関心なユーザーをたまに見かけます。
可燃性ガスは一部を除き単独では燃焼爆発の危険はありません。
しかし、支燃性ガスと一定の割合で混ざると燃焼爆発するのです。
「燃えるもの」「燃やすもの」「火気」という燃焼の三要素ですが、「燃やすもの」役割が支燃性ガスです。
つまり支燃性ガスである酸素こそが、厳重な管理を必要とするガスなのです。
漏れた酸素が引き金になり、爆発事故での大惨事を招く可能性を常に考慮しなくてはいけません。

また、爆発事故をおこさなくても、閉鎖空間内の人間に対して空気中の酸素濃度21%を上回る状態が長時間継続すると、肺や目に障害をもたらします。
「人間にとっては有用な酸素だから、リークしても大丈夫」等という認識はすぐに捨てて下さい。
人間に必要なのは21%酸素を含む混合ガスである「空気」なのであり、100%酸素は害にしかなりません。
この間違った酸素に対する認識は、ダイビングで水中にもぐる際には「酸素ボンベ」を背負っていけば水中で呼吸ができるという間違ったネーミングが原因の一端かもしれません。
あれは純酸素100%のボンベではありません。
一部酸素濃度がリッチなタイプもありますが、通常は大気と同じ成分の「乾燥空気ボンベ」なのです。


酸素はMFCやマスフローメータ(MFM)にとっては、測定、制御に大きな問題のあるガスではありません。
ですが、前述の通り支燃性ガスとして非常に厄介なガスであることから、酸素と可燃性ガスとはマスフローを含む配管ラインを共用してはいけません。
また、マスフロー(MFCとMFMの総称)の接ガス面に対する禁油処理は必須です。
もちろん油脂分を含んだ機器や工具で酸素ラインの施工を行うことは厳禁です。

因みに・・・・ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V. )のマスフローは、禁油処理に関して厳格な対応をしています。
オプションとして Degreasing Certificate(禁油処理証明付き)だけでなく、洗浄、禁油処理をしたマスフローを専用の梱包で酸素との接触を避けてお届けする事も可能です。

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

酸素は、ほとんどの元素と化合物を作ることができます。
支燃性があるということは酸化力が強いということだからです。
半導体製造用CVD装置等で使用するシラン系のガスと酸素を反応させると、SiO2という酸化膜が生成されます。
この膜は大変有用で、半導体だけではなく多方面でバリア膜等に使用されています。
だがマスフローやその上流に位置する配管内部に残存した酸素とシラン系ガスが反応してしまうと、白い粉状の異物となってマスフローのセンサー管やバルブオリフィスを閉塞させてしまうので注意が必要です。
センサー管と層流素子に詰まりを発生させると、分流比が崩れてしまい、気が付かないうちにMFCの制御流量が狂ってしまうというプロセスにとって大変恐ろしい問題が発生してしまいます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan