もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」 20193月号(2/25発売)では、流量制御バルブのアクチュエーターとしてソレノイドを搭載したマスフローコントローラ(MFC使用上の留意点を解説しています。

 


水素(H2

今回のお話は水素です。
水素は、無臭、無害であり、地球上ではH2Oの状態で多量に存在しています。
ここ最近は、燃料電池で一般的に馴染み深くなったガスですね?

いささか古い話で恐縮なのですが、Decoの世代は水素が元素周期表の一番手に出てくることもあり、学生時代は「水兵リーベー・・・」と覚えた記憶が蘇るガスです。
ちにみに水兵の兵は、次回取り上げる予定のヘリウムです。

 

水素は空気との混合では爆発下限4.1%~上限74.2 %、酸素との混合に至っては下限 4.65 %~上限 93.3 %という爆発しやすい性質を持っています。
さらに厄介なのは周期表の一番手=元素のなかで最も小さく軽いということであり、非常に拡散しやすい性質を持っています。

これこそが「水素が可燃性ガスとしての非常に高い危険性を有している」と言われている理由なのです。

ただし、前回酸素の解説でも触れましたが、可燃性ガスは、同時に空気や酸素という支燃性ガスが存在して、更に静電気などの点火要因がそろわないと爆発は起こりません。

つまり水素ボンベが目の前にあることが危険なのではなく、その横に酸素ボンベを設置したりして、わざわざ3要素をそろえてしまうことが危険なのです。

水素の漏れやすい性質が、この3要素の集結に一役かってしまうので、水素配管は特にリークに注意しなくてはいけません。
リークチェックには、ヘリウムリークディテクターを用いて、日頃の点検に水素ガス検知器は必須です。

 

マスフローとの問題に関しては、以前も解説していますが、改めて解説しておきます。

コンバージョンファクター(CF)は窒素(N2)と同じでほぼ1と定義するマスフローメーカーは多いです。
だからといって窒素のMFCを水素に使って仕様通りの性能が保証できるだろうか?と言えば、それはノーです。
水素は窒素に対して密度では1/14なのに対して比熱は13.6倍あるガスなのです。

 190304_01

この為、窒素に近似のCF値を示すのですが、これだけで本当の意味でのCFが決まるわけではなありません。
正確には分流比への影響等から、微妙に両者のCFは食い違っているのです。
Bronkhorst High-Tech B.V.(
以下ブロンコスト社)がインターネット上で公開しているFLUIDAT® on the Netサイジングツールを使わせていただいて、一つの例を引用提示しましょう。

 190304_02


上図はあくまでブロンコスト社のCFであり、他メーカーのそれとは異なる可能性があることを、前もって断っておきます。
供給圧力0.3MPa 1ln/min1L/min[n]n0,1013hPa校正)の水素での100%1L/minから10%=0.1L/minまでのCF変化です。
このように水素のCFは流量レンジの途中で膨らむ傾向があり、校正時に使用するガスである窒素に対してリニアリティに問題が生じることは、よく指摘されています。
また、この傾向は圧力が20MPaを超えて高くなるにつれ、少なくなる事も確認されています。

 

水素というガスは流量制御バルブを持つMFCにとっては、あまり得意なガスではない事は、必ず認識しておいてください。
Decoは「MFCの天敵」とよく表現しています。

密度が小さく、軽くて、拡散しやすい=小さな隙間からでも流れていきやすい水素の性質は、MFCのわずかなギャップを調整することで流量制御を行うバルブ方式にとっては、すこぶる扱い辛い性質なのです。
MFC
CFと並ぶ重要な要素である流量制御バルブ定数=バルブの設定(オリフィス径等)は窒素の10倍小さい設定にしなくてはいけません。
つまり水素F.S.1L/minで製造されたMFCと窒素F.S1L/minMFCとはバルブオリフィスの部品やリフト量の設定は全くの別物だという事です。
現実に窒素用MFCに水素を流した場合、バルブ設定が大きすぎる事になり、流量制御開始時に水素が大量に流れてしまうことでオーバーシュートなどの流量異常トラブルを起こしやすいのです。

 

これも当然なのですが、バルブの締め切り性能にも期待できません。

バルブシートの材質により内部リークが発生してしまいます。
この漏れ量は弁座がSUS等で構成されたメタルバルブでは大きく、次にPCTFE等の樹脂、フッ素ゴム系の順番で小さくなります。
MFC
のバルブの役割はあくまで流量コントロールであって、閉止弁ではないので、これはやむを得ないところなのです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan