【お知らせ】

今まで本ブログは、"EZ-Japan BLOG since 2017”と "真・MFC千夜一夜物語”@niftyココログ版の2つで同時連載進行を行って参りましたが、既に告知の通り2019/5/11をもって@niftyココログ版の方を終了させていただきました。こちらのブログ"EZ-Japan BLOG since 2017"版での連載は、変わらず続けて参りますので、どうか千夜一夜=1001話にたどり着く迄、宜しくお願い申し上げます。

 

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20196月号(5/25発売)では混合ガスをマスフローコントローラー(MFC)、マスフローメーター(MFM)で使用する際、そして混合ガスをMFCで作る場合の解説を行っています。

 

液化ガス

さて、長かったマスフローでこのガスを使う時は注意しよう!の最終話です。

今回登場するのは、MFCの大敵=液化ガスのボスともいえるガスの登場です。(最終話らしい展開ですね。)


フッ化水素(HFというガスを御存知でしょうか?

溶液はフッ化水素酸 (hydrofluoric acid) =フッ酸と呼ばれる大変危険な毒物です。

Decoがデビューした頃、当時の師匠に、「半導体工場バックヤードに入ったら、透明な液体を、けっして水とは思うな!」と教えられたことがあります。

これは「フッ酸のような危ない液体と見誤るな!」という意味でした。

フッ酸は経口最小致死量 = 1.5 gの恐ろしい毒物です。

更に皮膚に接触すると、体内浸透し、体内のカルシウムイオンと結合してフッ化カルシウムを生じ、激痛と共に骨を侵していくのです。多量に浴びれば、血中のカルシウムを喪失して死に至りますし、少量でも骨に穴が開きます
これは恐ろしい現象です。

 

こういった毒物を使っているのが、半導体製造装置なのです。

主な用途はクリーニングガスと呼ばれる洗浄用途です。

HFMFCを使った事例があったのですが、不具合が多く問題が多発しました。

液化ガス特有の液化の問題が1つでした。

液化したHF=フッ酸ですから、これがバルブ周りに残留した状態のMFCを修理したくても取り外す事すら憚られる状態になってしまいます。

その液化を防ぐ為に、当時のMFCはヒーターで昇温されて使用されいていたのです。

昇温自体は断熱膨張を起こしやすい液化ガスに対する対策として第283話でも説明したやり方で間違ってはいなかったのですが、問題が生じたのはコンバージョンファクター(CF)に対してでした。

HFCFは通常窒素に近い1.0と言われています。

ですが、このガスが厄介なのは温度によりCF0.31.0まで変化する性質がある事でした。

つまり温度条件を変えると、CFが大きく変化してしまい、流量がずれて行ってしまうという問題を抱えていたのです。

 

ここからはもう時効なので、お話しします。

Decoもガスメーカーさんの協力で、何度かその実験に参加させて頂き、ある程度の知見を得たのですが、これには温度だけでなく圧力条件も関わった複雑な要素があったのです。

ここまでCFが変動するガスの制御は簡単ではありませんでした。

当時、考えたのはPI-MFC(一次圧力変動抑制型MFC)を応用して、絶対圧センサーと温度センサーによりCFテーブルをリアルタイムに選定して制御するMFCでした。

LIL”という開発コードまで作って、考えられる“最後の熱式MFCとして世に出すつもりだったのですが・・・

 

今現在、HF用ではありませんが、実は同じ思想で作られたMFCがあります。

ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のEL-FLOW Prestige FG-201CVP Pressure Insensitive MFCがそれです。

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このMFCはかなりマニアックな思想で作られていますので、カタログを一覧しただけでは、そのすごさは全くわかりません。

くしくもブロンコストも“最後の熱式MFCと考えているというこのMFCに関しては、またの機会にお話ししましょう。

 

窒素や空気で調整されたMFCにとって実ガス制御とは、そう簡単にいかないものです。

この章で例にとってお話ししたガスはほんの一部ですが、色々と参考にして頂ければ幸いです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan