マスフローコントローラー(MFC)内部で液化しないようにするには、①温度を上げる、②圧力を下げる の2つです。

今回は②圧力を下げるのお話をしましょう。


実はこの表現は必ずしも正しくありません。

供給圧力はボンベレギュレーターを操作すれば下げる事は可能ですが、ボンベから配管の最終端にあたる部分までのトータルの抵抗=圧力損失を下回るわけにはいかないからです。

例えばアンモニアの蒸気圧は、常温で0.7MPa程度です。

それに対してMFCの圧損が0.25MPa+その他の圧損が・・・・と計算していって総和が0.75MPaになってしまっては、アンモニアを流すことはできませんね?

言い換えるならば、これは配管を構成する機器の圧力損失を下げるという事なのです。

特にMFCの圧力損失を下げる、低圧損タイプMFCは非常に重要なアイテムとなります。

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LOW-ΔP-FLOWシリーズ 【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

 

供給圧力を下げると、なぜ液化が防げるのか?これは、液化が主に狭い空間から広い空間に液化ガスが抜ける際に生じる“断熱膨張”により発生するからです。
熱の出入り無しで圧力(
P)や温度(T)、体積(V)が変化する状態変化を断熱変化といいます。
PV/Tが一定値になるので、Vが拡大するとTPは下がります。
これを
MFCのバルブオリフィス付近で考えてみると下図のようにオリフィスと言う絞り部分を通過した液化ガスは一気に体積が増えます。
そこで熱を与えていなければ、必然的に気体の状態方程式に従って温度、つまりガス温が下がります。それにより液化ガスの再液化が生じてしまう訳です。

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この問題を解決する為には、できるだけ通過するガス圧力を下げる事です。その為に、オリフィス部分での圧力損失を小さくした特別なチューニングを施した流量制御バルブが必要になります。

具体的にお話しすると、オリフィス径を大きくすることです。

絞りがきついとその分、圧損も大きくなりますから、通常ならばその流量域では使わないような大流量用オリフィスを使います。

でも、これだけでは流量が大きく流れてしまうので、MFCの流量制御バルブの場合、その代わりにバルブのリフト量=ストロークを小さくするのです。

大きなオリフィスのバルブで少しだけ開いてガスを流すのですね。


言葉で言うのは簡単ですが、この少しだけ開いて流量制御するのは非常に難しい技術です。

本来はアクチュエーターの流量制御レンジは広く取る事で、バルブの分解能的にも、ヒステリシス的にも余裕を持って楽に制御ができます。

それをわざわざ狭めてしまい、しかも少しバルブを開ければ大量にガスが流れる大きなオリフィスがついていますから、こういった低差圧仕様のMFCは、圧力条件が少しでも外れた場合にハンチングしたり、流量が流れなくなってしまうリスクを背負っているのです。


こういった液化ガス用低差圧仕様
MFCをオーダーされる場合は、圧力条件と必要とされる流量域、ガス温度を確認頂き、MFCメーカーと密な打ち合わせを行って下さいね。

 

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