久しぶりに高温用マスフローコントローラ(以下MFC)マスフローメータ(以下MFM)に関して、情報のアップデートをしていきたいと思います。
今回から250℃超高温マスフローの開発のお話です。 

高温マスフローを用いる場合、10年ほど前までは150℃という壁がありました。
これは前述の通り、流体温度をあげれば上げるほど、感度を得る為には熱式流量センサーのヒーティング温度も上げていかなければならないという根本問題に加えて、MFCの場合は流量制御バルブのアクチュエーターの耐温度性能が150℃を超えると難しくなってくるからです。
ほとんどの場合、高温MFCのアクチュエーターは、ピエゾ素子を採用しています。
これは流体の特性上、ソレノイドアクチュエーター+パペットバルブでは耐食性能や耐温度性能で及ばないからです。
高温流体をソレノイドの鉄芯に使う電磁性ステンレスKM45に直接触れさせたくはないので、金属製ダイヤフラムで仕切りたいのですが、金属製ダイヤフラムをソレノイドアクチュエーターの発生力では押し切れない、やはりピエゾしかない、という流れです。
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更なる超高温用への展開が二の足を踏んでいる内に、図にあるような液体MFCで流量制御した液体を後段で気化するという方式がCVD装置のTEOSの気化制御技術として成功を収めたのを受けて、寿命が短く不安定な高温用マスフローの役割は、液体マスフロー気化器の組み合わせに取って代わられてしまいました。
高温用マスフロー自体は、マスフローメーカー側の負担も大きいのも問題でした。
常温用よりさらに高い温度で使用する高温用の流量センサーは、歩留まりが悪く、巻線型流量センサーの中でも、良質な個体を選び出して使用しなくてはなりません。
しかも、その調整、校正作業は恒温槽で実際の校正温度まで上げてから取り掛かる必要があるので、非常に手間がかかる製品となっていました。
その手間は「1台の高温用MFCの注文があった際は、3台分の部材を準備して組立、調整を施し、その中で一番良い特性を示しているものを出荷しているらしい」という、まことしやかな噂話が流布される程だったのです。
当然、装置メーカー、ユーザーでもそういった点を、液体MFC+気化器のシステムで画期的に軽減していきたのでしょうし、何よりもチャンバーの手前まで常温液体で搬送できる供給系は、色んな意味で設備管理上の負担が少なくて済みます。

こういった流れに対して待ったをかけたのが、シリコンLSIのさらなる性能向上要求でした。
高誘電率膜、強誘電体薄膜、低誘電率層間絶縁膜、そして新しい金属材料薄膜が必要とされ、それらの膜を成膜ー原子層目から完全な元素組成比に制御する必要が生じたのです。
使用される原料は、常温で液体または固体のものが多く、超高温条件まで加熱しなければ十分な蒸気圧が得られないものもありました。
しかも、常温で固体、もしくは非常に粘度が高いゲル状の液体には、液体MFCは詰まりの問題などで対応が難しいのです。
そこで再度高温用マスフローというカテゴリーでの250℃超高温MFCの開発が要求されたのでした。

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