寒い冬場の屋外用MFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
前回、「屋外でも屋根や壁があってマスフローは風雨に直接さらされません。ならばIP40のMFCで大丈夫ですよね?」という顧客からの問いかけに、どうDecoは答えたでしょうか?

実は耐候性能を持つマスフローの作りの堅牢さは、伊達ではありません。
IP65仕様のマスフローのケースを見ると、非常に重厚な作りであり、更に隙間にはシールが施されています。
これは防塵防水だけでなく、冷たい外気からもマスフローの電気回路をしっかり保護してくれるという利点があるのです。
Decoは屋外もしくは屋外に準じる環境で使用される顧客にはその点を強く推しています。
先ほど質問への回答も「防塵防水だけでなく、環境温度変化に対するセンサーと電子部品保護という観点で耐候型IP65タイプマスフローをお薦めします。」と説明しました。

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IP65耐候仕様MFM 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

同じような質問で「MFCの温度補償範囲を超えてしまっても動作はしますよね?」という質問に直面した事もあります。
ここでマスフローの熱式流量センサーの特性を解説させて頂きます。
熱の移動を捉えてそれを質量流量へ変換するセンサーならば、温度変化という外界の熱環境の変化の影響を受けないはずはありません。
マスフローのセンサー温度とマスフローを通過する流体温度とのモデルで説明します。
(このモデルは特定のメーカーのセンサー方式を説明したものではなく、概念説明のために簡略化や、数値を都合良く加工している事を予めお断りしておきます。)

マスフローの熱式流量センサーに仮に100℃に加熱したヒーターがあったとしましょう。
この流量センサーに100℃の流体が触れても同温だから、当然熱移動は起きません。
つまり100℃の流量センサーに100℃の流体を流しても、そのマスフローからの流量出力は0になりますね?
今度はそこに0℃の流体を流してみます。
温度差は100℃あるから、大きな流量出力となるはずです。
この架空のマスフローセンサーの温度特性は、0℃を100%としたとき、-1%/℃の傾きで温度による影響受けると表現できます。
10℃流体温度が上がるだけで、流量センサーの出力は-10%になりますから・・・このままでは当然質量流量計を名乗ることはできません。

そこで温度補正というセンサーの生出力に対する補正を入れることで、実用性を加味してみましょう。
常温域、25℃をセンターとしたマスフローで一般的な使用温度範囲に補正をかけると、下図のようなモデルになります。

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簡単に言えば、25℃より低い温度では、センサー出力を下げる補正を、逆にそれより高い温度では上げる補正をかけているのです。
このモデルで示す平坦化した範囲が、精度保証温度範囲 25℃±10℃ というスペックの部分なのです。
つまり温度範囲を少し逸脱して使用してもマスフローは異状なく動作はしているように見えても、測定値が実流量を現しているかは疑問であり、境界を越えた直後は誤差がその分大きく出てしまう可能性すらあるという事なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan