マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史を振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回からは巻線型熱式流量センサーのお話です。

熱線式風速計を換骨奪胎したと思われるのが熱式流量センサーです。
これには大きく分けて2つの形態があります。
巻線型とMEMS型です。
どちらもその測定原理の基礎は同じです。 

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ヒーターにより一定に昇温されている流れ場に上流から流体が流れることにより、上流と下流のセンサー(測温抵抗体)の感知する温度分布が変化します。
上流側は流体に熱を奪われて温度が低下し、その熱は逆に下流側の温度を上げます。
この温度差(ΔT)と流れる流体の質量流量(Qm)とは、ある一定の量までは比例関係を示す事を利用して、流量を測定することが可能になるのでしたね?
そして、流量式にあるように、流体固有の物性である定圧比熱が、大きな要素として存在しており、熱式流量計が持つ流体毎のコンバージョンファクター(以下CF)は、ここから導き出されています。(ただし、定圧比熱の比がそのままCFにはならないので注意してください。)

上図で巻線型の代表例として三線式と二線式を示しています。
巻線型は名前の通り、電気抵抗の大きな細径のニクロム線(ニッケルとクロムの合金)を、流路である細管の外周に巻き付けた巻線をヒーターと測温抵抗体として用います。
三線式は、中央にヒーターの役割を果たす巻線と、その上流下流に等距離で測温抵抗体の役割を果たす巻線を対に配置しています。
各々の役割は、発熱、上流側測温、下流側測温と非常にシンプルです。
ブルックス(ITWジャパン(株))のMFCに多く見られ、その流れをくむブロンコスト(ブロンコスト・ジャパン(株))でも一部のモデルで採用している方式です。
三線式の特徴は各々の巻線の役割がヒーターと測温抵抗体に分離している構成にありますが、、測温抵抗体自体が外部からの熱影響を受けやすいという弱点を持っています。
その為、このセンサーを採用しているMFCでソレノイドアクチュエーターを流量制御バルブの制御に用いている場合、ソレノイドが大きな電磁力を発生させた際に発する熱が流量センサーへ温度影響を及ぼさないよう、ソレノイド部をケース外に露出したデザインを採る事が多いのです。

それに対して二線式は、対になった上流下流の巻線にヒーター&測温抵抗体の役割を持たせているのが特長です。
二線式の方が三線式より優れているという意見を耳にすることがありますが、流量センサーとしての性能に大差はありません。
センサー製造工程で巻線を1本減らすことができる利点はありますが・・・
確かに自己発熱型なので温度を高くすれば、外界からの温度影響を少なくできるという利点はあるのですが、だからといって流量センサーとしての熱影響が無くなる訳ではないのです。

そもそも熱式センサーは、熱の移動を測定原理にする以上、周囲温度影響を必ず受けるので温度補償回路を持っています。
流体温度と周囲温度との間に極端に差がある場合、その補償に用いる温度情報をどこで測っているかによっては、温度補償が不適切になる事があり、それこそが一番の問題となります。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan