MFC(マスフローコントローラー)のゼロ点ズレの原因のご説明を始めたいと思います。

その1として「センサー線の抵抗値変化」からお話しましょう。これはMFC自体の寿命すら左右する一番大きな問題になります。

 以前お話ししましたように、MFCの流量センサーは、上流/下流の二対の巻線抵抗が、ヒーターと熱伝対の役割を果たしており、流量信号を取り出すためのブリッジ回路を形成しています。この二対の抵抗値バランスがとれている状態が=流量0です。流体が流れ込んでくると、上流側の熱を奪って、下流側に運んでいくことになり、熱バランスが変化します。この変化量が流量に比例する・・・というのが、MFCのセンサーに使用されている熱式流量計の基本原理でしたね。

 ところがゼロずれというのは、本来流量0でバランスしていなければならない筈の巻線の抵抗値が、個々の巻線抵抗値の経時変化により、均衡が崩れてしまっている場合に発生します。下図①流体が流れていない状態であるにもかかわらず、②の状況になってしまっているのですね。

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 こういった現象は、一つにはMFCのセンサーの寿命が尽きた場合に発生します。通電状態では常に100℃近い温度に発熱しているヒーター部分ですから、何年も使用していると、どうしても経年変化が生じます。その変化が両方の巻線に同じタイミング、かつ同じだけ発生する幸運な出来事はありえませから、どこかで初期の抵抗値バランスは崩れてくることになります。

 これにはメーカー差や、巻線自体の個体差もあり、一概に何年とは申し上げにくい性質があります。昔は1~3年、最近の製品はメーカーさんの努力でかなり安定が良くなってきていますので5~8年使えてしまいますが、機械物ですから永遠の寿命はありえません。

 この現象への対処方法としては、前回お話ししたゼロ点調整用のボリュームや、ゼロリセットスイッチを用いて都度バランスを再調整してやればいいのですが、ただ、センサー巻線自体の寿命がきているとしたら継続的に劣化が起こり、「調整しても、調整しても、またしばらく経過したらずれている!」という状況になります。こういった現象が確認された場合、応急処置はゼロ点再調整で構いませんが、早期にメーカーさんに修理に出して頂いた方がいいですね。そうすればセンサーは交換され、新品にリフレッシュされて戻ってきますから安心です。

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