MFC(マスフローコントローラー)の置かれている現状を、お話していきたいと思います。

 アポロ計画の産物と言われるMFCという産業用機械部品も、既に誕生して、数十年を経過して、熟成された、言い換えればピークを過ぎたものとなってきています。
連載で何度か取り上げましたが、MFCの主たる市場は半導体産業(広義で液晶産業も含む)です。
半導体は、最盛期には、業界出荷額の約8割近くを占めるとてつもなく大きな顧客でした。
特に90年代、日本の半導体産業が世界を制覇した時代(半導体売上高の世界をNEC、東芝、日立製作所の3社で、30%近いシェアを占めていたころです)、その拡大する日本市場を狙いMFCの新規参入メーカーも相次ぎ、デジタルMFC、液体MFC等、エポックメイキングな技術も世に出て、非常に華やかでした。

 ところが20年後、日本半導体はお家芸のDRAMでは韓国、台湾勢の価格攻勢に敗れ、高品位なMPUではインテル独壇場・・・ついにエルピーダメモリの会社更生法申請からマイクロンの傘下での再生、ルネサス、富士通等国内半導体工場の相次ぐ売却、閉鎖発表・・・と、日本半導体産業のポツダム宣言受諾か?とも思える状況になってきています。

 当然、MFCメーカーさんも苦しい状況を迎えつつあります。
具体的にはM&Aによる企業統合の進行です。USAではいち早く、老舗UNITからの流れは、これまた老舗のTylan(Tylan-General)からの流れと統合され、さらにBrooksに一本化され今に至ります。
日本では、日本Tylan(日本アエラ)という、かっては国内シェアトップメーカーが買収の末、今は日立金属(SAM)に組み込まれました。

これはMFCユーザーである皆様にも決して無関係な流れではありません。

今は存在しないブランドの古いMFCをお使いの場合、最悪「修理メンテナンスをもう受けられない」という事件が発生します。
買収した企業は、生産者責任を果たす社会的道義もありますが、それ以上に事業の合理化を図り、利益を出せる体質にする必要があります。
その為、古いブランド製品群のEOL(End Of Life)=ディスコン(廃盤)を進めていきます。
この動きは日本よりUSAメーカーの方がドライで、びっくりするくらいドラスティックに進めてきます。
当然、「互換機はこれですよ」という案内通知はされるのですが、必ずしも完全互換でなかったり、プロセス条件に変動が出たりという、ユーザー側の負担をゼロにすることはできない条件が付いたりします。
装置を構成する「部品」であるMFCの場合、「性能が向上しているのだから、互換品だろう」という考えは、必ずしも正解ではないのが、事を難しくしているのです。

そういった動きの中で、ユーザーの皆様もどうぞ「自衛活動」の準備をしていただきたく思います。
Decoからは、以下の内容をお奨めします。

・使用しているMFCの供給元のサービス・メンテ状況の確認

・使用中のMFCの互換品=後継機の選定と評価

・社内校正器等による日々のMFCの状態管理

・適正な保守在庫の保持


 10年前には故障したMFCの代替品をすぐ持ってきてくれたメーカーがあったかもしれません。
でも、これからはわかりません。
むしろ10年前の対応は、スペシャルサービスだったのかもしれないのです。
保守管理予算も苦しい中で難しい内容かもしれませんが、万事は転ばぬ先の杖です。

「もう昔とは違うのだ」というほろ苦い現状認知を頂く必要があるのです。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan