もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2017年11号(10/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第39回は、“防爆構造のマスフローの解説<後編>”となっています。ATX本質安全防爆構造マスフローコントローラ(MFC)と新たに発表されたTIIS本質安全防爆構造のマスフローメーター(MFM)で流量制御を行う方法を解説しています。


さて、今回で“コリオリ式は完全無欠の質量流量計“編は完結です。
今までの記事をまとめる形になりますが、参りましょう。

同じ質量流量計に分類されながら、コリオリ式が熱式に勝るポイントはいくつもあります。
振り返ってみましょう。

・コリオリ式は物性不祥な流体や混合比率が変化する流体=液体、気体のみならず、超臨界流体の測定が可能
コリオリ式の流量式には熱式のような流体の物性に依存するものがありません。
これは流体の種類や混合比に関係なく、常に質量流量を測定できるという、一番優れたコリオリ式の特長となります。
故にコリオリは液体だけではなく、気体の測定も可能で、しかも超臨界状態でも測定ができる稀有な存在です。
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この特長は、半導体製造装置での液体材料気化供給システムで大きなメリットとして注目されています。 

・コリオリ式は分流構造が不要な単管構造でシンプルな流路構成が可能
コリオリ式のセンサー構造はシンプルな単管です。ここにすべての流体が流れる“全量測定”構造です。熱式はほとんどの流量レンジでセンサー管と層流素子(バイパス)に分流する“分流構造”をとっていますので、異物のつまり等で分流比が変化してしまうことで、いつの間にか指示値と実流量が大きくずれてしまうという問題を引き起こしたり、圧力条件で分流比が変化して再現性能に問題を起こしたりします。
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・コリオリ式は熱式と比較して高精度流量測定が可能
コリオリ式は熱式よりもSN比の優れたセンシングが可能になります。
流量精度+ゼロ点の安定性を含めたトータルエラーで検証するとその差は明らかです。

・コリオリ式は熱式と比較して高速応答が可能
熱の伝導を原理で用いる熱式は、そもそもの原理からして決して応答は速くはありません。
特に巻線型の場合、流体に直接触れて温度を測るわけではないので、センサーの生出力では数秒単位の応答性です。
それを後段の流量制御を行うPIDで高速であるかのように処理しているだけなので、コリオリ式とは応答性能でも差が生じます。

・コリオリ式は双方向の流量計測が可能
MEMS型の一部熱式は可能ですが、基本的に巻線型熱式流量センサーは流れ方向は1方向のみです。
コリオリ式は原理上、どちらから流れてきても同じ質量流量を出力できます。

・コリオリ式は温度・密度測定が可能
コリオリ式は、原理上流体の密度をモニターできます。
温度もチューブのバネ定数の補正情報として、測定しています。
そもそもコリオリ式は流量計としてだけでなく、比重計として使われることが多いのです。
そして、更にコリオリ式は、“流しながら測れる秤”として、いかなる流体であろうと、その質量を測定できる特性を活かして、今までロードセルが使用されてきたような薬液充填工程を高速充填、マルチ液体充填等の利点を生かして、設備更新しつつあるのです。

これらの優れた特長を持つコリオリ式マスフローを組み込んだ一つの成功事例として ”マスフローポンプ” が挙げられます。 
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<マスフローポンプ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

現在、製薬、化粧品、飲料、食品業界で注目のツールとなっています。
なぜならば、流す液体を問わず、暑いときも、寒い時も、ポンプが少しへたってきても、設定した質量流量で安定した液体供給が約束され、なおかつ脈動が限りなく無く、静かな供給システムだからです。

コリオリ式流量計は、現段階でも完全無欠といってもいい質量流量計ですが、これから更に進化していくと思われます。
目指すところは微小流量化、気体で使用する際の低圧損化でしょう。
期待して見守りたいですね。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan