もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌2017年11号(10/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第39回は、“防爆構造のマスフローの解説<後編>”となっています。ATX本質安全防爆構造マスフローコントローラ(MFC)と新たに発表されたTIIS本質安全防爆構造のマスフローメーター(MFM)で流量制御を行う方法を解説しています。)
660a9036.jpg
<出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

さて、今回から“バイパスはトラブルの元なの?“編です。
熱式(サーマル)マスフローメータ(MFM)、マスフローコントローラ(MFC)の構造でバイパス(層流素子)を持っていないものは少数派です。
その構造を図で見てみましょう。
171120_01

このブログでは見慣れたMFCの構造図ですね。MFMならばこの図の左半分がその構造になるので、いずれにしてもセンサーとバイパスで構成されています。
 ではこのバイパスがなぜ悪者扱いされるのでしょうか?
「最近、全量測定は良くて、分流式はダメと言っているから、きっとDecoさんは何かバイパスに恨みでもあるのではないのか?」と思われそうですが・・・ちゃんと理由はあります。

 
前回のコリオリ式マスフローの解説でお話ししましたが、この分流構造=バイパスとセンサーに分流して測定する構造は、異物に弱いという大きな問題を抱えているからです。
サーマルマスフローの代表的な構造である巻線式センサーでは、実際に流体を測定しているセンサー管に流れる流量は5~10ml/min程度です。
残りの流量は全てバイパスへ流れていくように、バイパスの入り口に抵抗をつけて分流しています。つまり、フルスケール100ml/minのマスフローなら、90~95ml/minがバイパス、 1000ml/minなら、990~995ml/minはバイパスに流れているわけで、流量が大きくなればなるほど、センサー管とバイパスとの分流比は大きくなっていく一方なのです。

171120_02
そこで上図にあるように異物が混入したら・・・
マスフローのセンサー管もバイパスの流路も決して広くありません。
センサー管なら確実に内径1mm未満、バイパスも方式により種々ありますが、似たようなものです。
半導体製造ラインのような清浄度を要求されるラインでない限り、異物が入り込む可能性はあります。(半導体は逆に反応性の高い材料が多いので、配管途中で生成物が生じる可能性は、逆に高いという皮肉な現象が生じますが・・・)
特にコンプレッサーエアーを使用していたりしたら、確実に水分や油分、大気中のゴミが入ってくると考えていいでしょうね。
これらの異物が流路をふさいだ時、マスフロー最大のトラブルが発生します。
それは「分流比が初期の値から狂うことにより、測定した流量が実流量からずれてしまう」というものです。
他のトラブルならば、マスフローが故障しているのが一目瞭然の場合が多いのですが、このトラブルが恐ろしいのは、不具合が生じていることが一切わからない というところにあります。
ある日、あるタイミングからマスフローの流量がずれていた、こんなぞっとするレポートはないと思いませんか?
実験データは意味がなくなりますし、成膜やエッチングプロセスを終えて後工程に言った製品に不具合が・・・
怖いですよね!
はい、こんなクリフハンガーな引きで次回へ続きますね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan