EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

真・MFC千夜一夜物語(第2期)

真・MFC千夜一夜物語 第323話 MFCで液化が起きた!その3

マスフローコントローラー(MFC)内部で液化しないようにするには、①温度を上げる、②圧力を下げる の2つです。

今回は②圧力を下げるのお話をしましょう。


実はこの表現は必ずしも正しくありません。

供給圧力はボンベレギュレーターを操作すれば下げる事は可能ですが、ボンベから配管の最終端にあたる部分までのトータルの抵抗=圧力損失を下回るわけにはいかないからです。

例えばアンモニアの蒸気圧は、常温で0.7MPa程度です。

それに対してMFCの圧損が0.25MPa+その他の圧損が・・・・と計算していって総和が0.75MPaになってしまっては、アンモニアを流すことはできませんね?

言い換えるならば、これは配管を構成する機器の圧力損失を下げるという事なのです。

特にMFCの圧力損失を下げる、低圧損タイプMFCは非常に重要なアイテムとなります。

 lowdeltaP

LOW-ΔP-FLOWシリーズ 【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

 

供給圧力を下げると、なぜ液化が防げるのか?これは、液化が主に狭い空間から広い空間に液化ガスが抜ける際に生じる“断熱膨張”により発生するからです。
熱の出入り無しで圧力(
P)や温度(T)、体積(V)が変化する状態変化を断熱変化といいます。
PV/Tが一定値になるので、Vが拡大するとTPは下がります。
これを
MFCのバルブオリフィス付近で考えてみると下図のようにオリフィスと言う絞り部分を通過した液化ガスは一気に体積が増えます。
そこで熱を与えていなければ、必然的に気体の状態方程式に従って温度、つまりガス温が下がります。それにより液化ガスの再液化が生じてしまう訳です。

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この問題を解決する為には、できるだけ通過するガス圧力を下げる事です。その為に、オリフィス部分での圧力損失を小さくした特別なチューニングを施した流量制御バルブが必要になります。

具体的にお話しすると、オリフィス径を大きくすることです。

絞りがきついとその分、圧損も大きくなりますから、通常ならばその流量域では使わないような大流量用オリフィスを使います。

でも、これだけでは流量が大きく流れてしまうので、MFCの流量制御バルブの場合、その代わりにバルブのリフト量=ストロークを小さくするのです。

大きなオリフィスのバルブで少しだけ開いてガスを流すのですね。


言葉で言うのは簡単ですが、この少しだけ開いて流量制御するのは非常に難しい技術です。

本来はアクチュエーターの流量制御レンジは広く取る事で、バルブの分解能的にも、ヒステリシス的にも余裕を持って楽に制御ができます。

それをわざわざ狭めてしまい、しかも少しバルブを開ければ大量にガスが流れる大きなオリフィスがついていますから、こういった低差圧仕様のMFCは、圧力条件が少しでも外れた場合にハンチングしたり、流量が流れなくなってしまうリスクを背負っているのです。


こういった液化ガス用低差圧仕様
MFCをオーダーされる場合は、圧力条件と必要とされる流量域、ガス温度を確認頂き、MFCメーカーと密な打ち合わせを行って下さいね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第322話 MFCで液化が起きた!その2

マスフローコントローラー(MFC)内部で液化が生じた際の対応に関してです。

低蒸気圧ガス=液化ガスは常温で液体、もしくは限りなく液化しやすい状態のガスです。

アンモニアのように、沸点が-33.42℃、常温で0.7MPa(g)の蒸気圧ですと、供給圧を上げすぎると即液化してしまいます。

MFCのように、1mm以下の狭い流路で構成される機器にとって、液化が生じる事、もしくは液化した流体が内部に入り込む事で、色々なトラブルを起します。前回はバルブでのつまりを図でお見せしましたが、センサーや層流素子でも下図のような困った現象が生じます。

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液化しないようにするには、①温度を上げる、②圧力を下げる の2つです。

温度を上げるには、ヒーターと温調器が必要になります。

昇温する場合は、配管システム全体を昇温する必要がありMFCだけを昇温しても効果は見込めません。

確かにMFCは前述の通り、狭い流路で液化の可能性が高い場所ではありますが、そこを昇温することで、今度はそれ以外の場所でコールドスポットが生じてしまうからです。

液化との戦いは、このコールドスポットとの戦いです。

以前、Decoが伺ったお客さんでは、空調の風が直接三塩化ホウ素(BCl3)ラインに当たっていたがために液化が生じていたことがありました。
とりあえず断熱材を風が当たっていた配管に巻く事で液化現象を解決できたこともあります。
(もちろん空調の風を避けるよう配管レイアウトを変えるのが、最善手なのですが。)

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そして温調で気をつけないといけないのは、MFCのような配管に繋がっている機器でも熱容量の大きなものには、通常のSUS配管部を温度調整している温調器とは、分けて制御してもらいたいということです。(上図) 
そして、下流に向かって温度勾配を付けるように昇温することですね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

 

真・MFC千夜一夜物語 第321話 MFCで液化が起きた!その1

半導体製造装置での流量制御がマスフローコントローラー(MFC)の主な役割になります。

ところが半導体製造装置では、常温で液体である流体、いわゆる液化ガスを使用することが多々あります。

代表例ではアンモニア(NH3)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、六フッ化タングステン(WF6)等です。

特にWF6等は常温しかも常圧条件ですら液体の為、気相で運ぶとなると供給系の大半を真空下で搬送しなくてはいけません。

 

こういった液化ガスラインで、MFCがトラブルを起こしたという話は、かなり高い頻度で聞かれます。

”液化してMFCの流量センサーが詰まって流量信号が出ない!“とか”MFCのバルブで液化して流れない、もしくは不安定になる。“といったトラブルです。

 

こういったトラブルははなぜ?そしてMFCのどこで発生するのでしょうか?


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 MFCの中で液化するポイントは、圧倒的に流量制御バルブオリフィス部です。

流量制御行うMFCのバルブ部は上の図のように絞り=オリフィスがあって、そこへ流れ込む流体の量をソレノイドやピエゾアクチュエーターで駆動されるバルブが、隙間の空間のギャップ量を可変させることで流量制御を行います。

このオリフィスの絞り込みがきついと、そこを通過する際の気体の流速が急激に速くなってしまいます。そして一気にオリフィス下流へ放出されるのですが、その際に体積が増大することで、断熱膨張を起してしまい、それによって流体の温度が急激に下がることで、液化を起してしまうのです。

 

こういった液化を起こしやすいMFCに対する処置方法は2つあります。

1つはガスシステム全体を下図のように昇温して、特にMFCは熱容量が大きいので独立したヒーティングシステムを用いて適切な温度に昇温することで、断熱膨張が起きにくい環境条件を作り出すことです。

 

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もう一つは、MFCのバルブ部のオリフィスを大きな径にして、流速変化を小さくすることで断熱膨張を起こりにくくする方法です。(下図) MFCのバルブ部のオリフィスを大きくすると、その分だけ流量制御は狭いギャップで行う必要が生じます。結果的に圧損も小さくなりますので、“低差圧仕様”とか“液化ガス対応”と呼称されていますが、調整難度は高くなりますので、どんなMFCでもこの低差圧仕様が製作できるわけではありません。

 

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次回からこの2つの液化への対応に関して、お話ししていきましょう。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】
by Deco EZ-Japan

 

真・MFC千夜一夜物語 第320話 MFCに互換性はあるの?その6

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)のメーカー間での互換性に関するお話です。


最後は電源とアナログ信号のお話で、書き漏らしたところを説明しますね。

昨今、マスフローの所用電源として用いられているのは24VDC、もしくは古くからある±15VDCのいずれかです。
現役時代、お客様の計装技術さんから「なぜマスフローだけは、±15VDC電源が必要なの?他の機器が12-24VDC単相で良いのに、わざわざマスフローの為だけにマイナスDC電源を準備しないといけないんだけど!」と、よく愚痴を言われたことがありました。

確かに圧力センサー等を見ても、12-24VDCで動作するものがほとんどです。
これはマスフローの熱式流量センサーがホイートストンブリッジを使用しているのが主な理由です。(下図)

 

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対になった巻線センサーが昇温されてバランス=ゼロを取っているところに、流体が流れる事で上流側の温度が下がり、下流側の温度が上がることで抵抗値のバランスが傾いたのを電圧出力で取り出しているからです。
マスフロー開発当初はそこで用いる精度の高いマイナスDC電源を内部の基板に置くのが難しかったので、外置きにした±15VDC電源からの供給にしたと筆者は古参のマスフロー技術者から聞いています。

 

流量信号、流量設定信号に用いられるのは圧倒的に0-5VDCが多いです。

これにも理由が・・・あるのだろうか?

電圧信号での伝送は、4-20Aのような電流信号での伝送と比較すると、圧倒的にノイズ耐性で劣ります。
これは電流信号の優れたところで、同じレベルのノイズ電圧が加わっても、受信抵抗により電流信号への影響はほとんど無視できるレベルに減じられてしまうのです。
故にプラント等大規模設備での計装の世界では4-20Aが主流です。
 

また、1-5VDC4-20Aのようなゼロを浮かせた信号電送は、ケーブルの断線、配線忘れ、コネクターの脱落といったトラブルを早期に発見できる利点があります。
信号のゼロ位置が0Vの場合、機器を動作させない限り、指示計が0V表示である理由が、本当に流れがゼロなのか、それとも結線が途中で切れてしまってゼロなのかが判別しにくいのです。

 

なので、本当はマスフローも電流信号の4-20mAを使った方がいいのですが・・・

今のところ計装用の大流量モデルなどに留まっている感じですね。

ま、マスフローのメイン需要先の半導体装置自体はそんなに大型ではないから、伝送距離も10m以下だという事もあるのですけどね。(ノイズ環境としては良くは無いけど・・・)

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

真・MFC千夜一夜物語 第319話 MFCに互換性はあるの?その5

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)のメーカー間での互換性に関するお話です。

アナログ信号でやり取りをするマスフロー(MFCMFMの総称)の場合、そのコネクターやピンアサイン、あげくは勘合ネジ腫に至るまで問題になる箇所が多いというお話を前回はさせて頂きました。

 

では、デジタルはどうなのだというと・・・

これもフィールドバス仕様が出てくるまでは、群雄割拠状態でした。

RS232CRS485RS422もありましたね)といったシリアル通信が多かったデジタル黎明期は、接続コネクターも独立した丸型コネクターだったり、前回のブロンコストさんのようにアナログ通信用D-ub9ピンの内2本分をRS232に割り振ったりと各社様々な仕様なのです。

 

でも、それ以上に問題なのは、プロトコルなのです。

いわゆる通信コマンド体系が各社ごとに異なるのです。

人間で言えば、日本語とドイツ語で話しているくらいの差があるのです。(いや、それ以上かもしれません・・・)

これでは互換性なんかある訳がありませんね?

(なぜか異なる2社で同じプロトコルを使っていたりしましたが、それは大人の事情ですw)

 

これに一石を投じたのが、前述のフィールドバスへの対応です。

例えばDeviceNetの場合、通信ケーブルはM12 DeviceNet コネクタケーブルを使うことになっています。

当然、プロトコルも共通の通信仕様が用意されています。

これで上述の互換性の問題は解消されましたね!


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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

 

ただ、互換性があるのは同じフィールドバスの中だけです。

DeviceNet と Profibus、そしてCC-Link の間には互換性は無いのです。

以前にも見てもらった統計を再度見てもらいましょう。

 

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出典:産業用ネットワーク市場シェア動向 2019”” HMS 社統計)by Andrea Jacobson | 5 07, 2019

 

これだけの数のフィールドバスがあり、更に産業用イーサーネットが伸びてきているのです。

マスフローの本体性能には関係ないところなのですが、対応しないわけにもいかないですよね。

やはりマスフローの互換性を確保するのは、難しい事なのですね・・・

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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