EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

MFC豆知識

【定期掲載】<注意喚起>マスフローを修理返却されるに当たってのお願い

毎年書かせて頂いているので、またかよ?とおっしゃる方もおられるでしょうが・・・
人命にかかわる事ですので、しつこく書かせて頂きますね。


4月以降の新年度でマスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)を、修理や再校正作業でメーカーに返却される場合、気を付けて頂きたい事があります。

171225_02


出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

修理依頼品に付けて頂きたいメーカー指定の書式があるとお思いますが、Decoが現役のメーカー時代から、これが記載されていなかったり、不十分なものが散見されます。
特に除染関連、このマスフローにはこういった種類のガスをどれだけ流していて、取り外し後はパージ作業を行ったか?という書式は、日本ではなおざりにされがちです。

たとえばブロンコスト・ジャパン(株)でしたら、除染告知書という書式があり、これが必要事項記載されていない場合、作業には取り掛からないという約束が世界的にあります。

200904_1

【除染告知書 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

除染告知をおろそかにするという行為は修理内容の確認で双方の時間を浪費するだけでなく、
最悪の場合作業者の健康を損なったり、生命の危険を招くこともあります。

「Decoさん、いくらなんでも大げさでしょう。」と言われるかもしれませんが、マスフローに流される流体は決して安全な空気だけではありません。
特に半導体製造では毒性、可燃性のガス種のオンパレードであり、ppmオーダーで致死量に至るガスもあります。

もう時効だからお話ししますが、20年以上前お客様から返却された窒素のマスフローに塩素が充たされていたことがありました。添付された書類にはどこにも塩素を流したとは書いてなく、パージの項目は「済み」と記載しました。
受け入れ作業で開封したところ、わずかに塩素ガスの匂いがしたので、あわてて除害ボックスに放り込んだのですが、受け入れ担当は気が付くとうっすらと鼻血が出ていたとのことです。

この話を依頼元のお客様にしたところ、「知らない、君たちの受け入れのやり方が杜撰なんだろう。」と言われました。
安全を確保するには、すべてを疑ってかからないといけないのは確かで、受け入れ側にも改めるべき点はありましたが、自分達が使用したプロセスを把握せずに修理に出す”杜撰な人”に言われたくはありませんね。
(因みにその会社は経営のやり方も杜撰だったのか、もう存在していません。)

マスフローの修理や再校正をご依頼頂く際は、以下の事を明確にしましょう。

・依頼者の連絡先
・製造番号
・どのような流体で使用されていたか?
・送る前にどのような洗浄されたか?
・故障内容の詳細(いつから、どこで、どのように不具合が生じているかを詳細に。)
・再校正依頼ならば、出荷にどういったドキュメント(トレーサビリティ体系図等)を付ける必要があるか?

Decoからのお願いでした。

MFC豆知識 by Deco EZ-Japan

本年もEZ-Japanをよろしくお願いいたします

2023年 明けましておめでとうございます。
お陰様で年末年始の関東地方は晴天に恵まれました。
しかしながら、北日本を始め各地で大雪による災害が発生しているようです。
被災されました方々には、謹んでお見舞い申し上げます。

230109_01s



さて、昨年は新型コロナ陽性等の出来事で仕事をお休みしたりしましたが、年間を通じては大変良い年でした。
本ブログも安定して皆様のアクセスを頂き、真・MFC千夜一夜物語も昨年末の更新で385話を迎える事が出来ました。
これも皆様のお陰と深く御礼申し上げます。

EZ-Japanとしてこの5年間、「唯一の完全な質量流量計」としてPRさせて頂いてきたブロンコスト(Bronkhorst High-Tech.B.V.)のコリオリマスフローの良さを色々な分野のお客様で御理解いただき、各種液体質量流量測定、ポンプをコントロールした質量流量制御用途や、空気や窒素のような気体の流量測定用途にまで幅広く導入を頂けたのが、大きな収穫でした。
なかなか前例を覆さない、新しいものを導入しない、海外製品にアレルギー反応が強い日本市場で、今のブロンコスト製品のスマッシュヒットは画期的な出来事だと思っています。
171003_01
mini CORI-FLOW+ギアポンプ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
思えば2016年後半に「これは良い製品だ!」と思って、ブロンコスト・ジャパン(株)さんと一緒にお仕事をさせて頂く事を決めてから6年。
講習会やブログ、計測技術誌を始めとした技術誌の記事でコツコツとその良さをご説明してきた事も大きな飛躍の一助になったかと思います。

また、コリオリ以外にも高圧ガス対応、本質安全防爆対応、産業用イーサーネット&フィールドバス対応、そして微小流量用小型マスフロー等、色々なマスフローを導入頂けました。
220509_01
FLEXI-FLOW Compact 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

今年も流体の流量測定&制御の新しい形をご提案していける強い確信を抱いております。
2023年6月1日で創業10周年目を迎えるに当たり、EZ-Japan 法人化の準備も進めております。
どうか2023年もEZ-Japan 黒田 誠を宜しくお願い申し上げます。

2023年、年頭に当たって EZ-Japan 代表 黒田 誠

MFCの納期ってこんなにかかってたっけ?

はい、久しぶりのマスフロー徒然日記です。
日頃は技術的なお話をメインで、皆様のお悩みにお応えしてきましたが、新型コロナ感染症以降のここ数年、皆さんを悩ませている問題はお手元のマスフローのゼロドリフトよりも、新規発注分の納期ですよね?
220411_02
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

以前はマスフローコントローラー(MFC)の納期は4~8週間くらいでした。
半導体投資が盛んになるとそれが倍くらいになったりして・・・
そもそもMFCはガス、流量、継手等を指定頂いて製造する受注生産品なので、これは仕方ないかなぁというところなのですが・・・

ところが最近のMFCの納期は、そんなレベルではありません。
「受注後24週間です。」
と回答して「まだ早いね。」とお客様に返されるくらいなのです。
24週間=半年ですが、下手すると7 or 8か月、仕様によっては1年を超えるパターンもあるのです。

「Decoさん、最近のMFCの納期はなぜこんなに長いの?」
こういった問い合わせを頂きます。

まず、トリガーとなったのは、皆様もニュースで見聞きされている半導体、電子部品不足です。
MFCはブロック、継手、バルブのような機械部品とセンサー、基板のような電気部品で構成されています。
その為、多種多様な部品をストックしておかなければなりません。
特に電子部品は調達された部品状態では意味が無いので、業者さんにお願いして基板に実装してもらって納品されます。
まずはここが止まってしまったのです。
MFCに必要な多種多様な電子部品の一つでもショートすれば基板の実装はできません。

これが不幸の始まりだったのですが、更に今度は基板や配線コネクターに用いる樹脂部品(絶縁用)も入らなくなってしまいました。
MFCで良く使用されているD-sub9コネクターが欠品しているというのは、Decoも初めての経験でした。
MFCの基板だけでなく、このコネクターが入らないが為に接続ケーブルも入ってこないという現象も起きてしまいました。
更に表示設定器も電子部品のショートで納期がかるようになってしまったものもあります。
つまりMFCは電気、機械様々な部品で構成されていたことが、アダとなったのです。

これがMFCだけの長納期化でしたら、マスフローメーカーの営業さんも精神的にやられてしまったでしょうが、不幸なことに装置側でMFCを制御するPLC等の機器や、とうとうリレーまでも入ってこない状態になってしまったので、そこまでのことは無かったのですが、やはりお客様に申し訳ないなぁという気持ちで営業を続けるのは辛いものだと思います。

メーカー部材の確保に努力していますし、部品メーカー、材料メーカーさんも同様だと思います。
あとしばらく・・・等と根拠のない気休めを申し上げても仕方ないので、今後しばらくは今の納期が続く事を前提にMFCの導入や、メンテナンスの計画を立てて頂ければと思います。

本当にお客様にはご迷惑をお掛けしておりますが、何卒よろしくお願いいたします。

マスフロー徒然日記 by EZ-Japan Deco

毒性ガスに使用できる継手

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)でラバーシールモデル(エラストマーシールモデル)で毒性ガスを流そうとしていませんか?
あまり知られていない(実はDecoも受け売りです。)事ですが、毒性ガスに使用できる継手種というのは高圧ガス保安法で定めがあります。

これは配管と接続する継手だけでなく、MFCやMFM(マスフローと総称)と継手部品をつなぐのボディのメスネジ部に関わるお話です。
良い機会ですから毒性ガスに対する日本国内での法的な規制に関わるお話をします。
*あくまでこれは日本国内法である高圧ガス保安法の解釈ですので、海外メーカーの製品はその解釈に準じている訳はありません。

高圧ガス保安法 一般則 第六条 三十五 “毒性ガスのガス設備に係る配管、管継手及びバルブの接合は、溶接により行うこと。ただし、溶接によることが適当でない場合は、保安上必要な強度を有するフランジ接合又はねじ接合継手による接合をもつて代えることができる。”

以上の取り決めがあります。
「溶接が適当だが、そうできない場合は必要な強度を有するねじ接合継手で良い」というところはDecoも読んでいたのですが、この継手形状に関する具体的な記載が、実は高圧ガス保安法令関係例示基準で示されていたのです。
ここで記載された形状の共通点は、ネジ部に毒性ガスが触れない事です。

図示してみましょう。

220126_01

 
左の継手のねじのエンドポイントにOリングがあるタイプが、ほとんどのエラストマーシールモデルのマスフローで使われているシール方法です。
ところがこれは高圧ガス保安法例示基準に照らし合わせると毒性ガスへの使用はダメなのです。
図の右のように継手のねじの先端にOリングがあるタイプが例示基準で認められた“溶接にできない場合のねじ接合継手”なのです。
違いはネジ部に毒性ガスが入り込むか?否か?です。

マスフローの場合、ここの形状は規格がUNFであれBSPPであれ、このエンドポイントにOリングがある構造が多く、ネジ部が毒性ガスに晒されてしまうので、国内では毒性ガスにMFCが使えなくなってしまうのです。

こういった場合は、やはり素直にメタルシールモデルを選定しましょう。
どこのMFCメーカーにもメタルシールモデルはあります。
例えば半導体色が薄いブロンコストでも、化合物半導体用MO-CVD向けに開発したメタルシールモデルEL-FLOW Metal Sealedというシリーズがあります。
EL-FLOW_Metal_Seal
【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

通常のEL-FLOWシリーズ程は広い流量レンジや圧力定格ではありませんが、毒性ガスは大量に消費されるものでもないので大丈夫かと思います。
 
MFC豆知識 EZ-Japan Deco

MFCがJISに記載されていない理由を考えてみた

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC:MFM&MFCを総称してマスフロー)は流量計の中でも質量流量計に分類されます。

190826_02

上の図で黄色く塗っているのが体積流量計、青が質量流量計です。
質量流量計と体積流量計の差は?
もうご存知ですね。

質量流量とは流体が単位時間当たりに、ある地点を通過する流体の量を”質量”で表したもの

体積流量とは流体が単位時間当たりに、ある地点を通過する流体の量を“体積”で表したもの

190820_01

では、その大元に当たる流量計とは何でしょうか?
流量計とは流量を計るものです。
そして流量とは、読んで字のごとく「流れの量」のことです。
気体・液体等の流体が単位時間当たりに、ある地点を通過する量のことです。
単純な流量を知る方法が発見されたのは、古代ローマ時代であり、今日までその基本は変わっていません。
なぜ、人類は流量を計ろうとしたか?と言いますと、それは2つの理由があります。
1つはそもそもローマ時代からの要求で、使った流量に応じた料金を徴収する、つまり料金を正確に算出する根拠とする為です。
そして2つ目は近年、工業用途でガスや液体が使われるようになってからの要求で、安定した歩留まりで生産する、つまり製造プロセスの再現性向上の為です。

JISの定義にある流量計は公の用途である1つ目に用いられるものが多いのが特長です。
水、油、石油等の国家の流量基準にトレーサブルな流量計で測ることが法で定められた流量計だからですね?
190826_01

ところがマスフローはこの2つの内の後者、特定産業での製造プロセスの再現性向上の為に用いられています。
マスフローがJISではなく、MFCを大量に使用する半導体業界の基準であるSEMI Standardを拠り所にするのは、ある意味自然な成り行きなのでした。

MFC豆知識 EZ-Japan Deco
EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
QRコード
QRコード
Decoへのメッセージ

名前
メール
本文
記事検索
タグクラウド
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ