もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 2019年4月号(3/25発売)ではマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータに異物が混入した際のトラブルシュートを解説しています。


 Bronkhorst High-Tech B.V.(以下ブロンコスト)の MASS-STREAM D-6371は、圧力損失はわずか38.6kPa(d)で500L/min[N]のアンモニア流量制御ができる低圧損大流量MFCです。
なぜこのような低圧損で大流量制御が可能なのでしょうか?
それは流量センサー構造の差です。

 

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従来のマスフローの多くが図の上にあるような分流構造をとっています。

この方式では流れる流体の一部(数mL/min程度)を0.3~0.8mmφ程度のセンサー管側に流して熱移動を測定し、残りほとんどを分流素子(バイパス)に流しています。

その為、センサーと層流素子の分岐部分に抵抗=圧力損失を設けてやってセンサー管へ流体が常に流れる構造にしなくてはいけません。

また層流素子自体の抵抗もセンサー管と同径の細管の集合体であったり、エッチングで凸凹を付けた板を丸めたものであったり、焼結フィルターを使っているものもある為、流量が大きくなるにつれこの構造部のボリュームも大きくなり、圧力損失が大きくなるのはやむを得なかったのです。

ところがMASS-STREAMのセンサーは、スルーフロー構造という直接流体を測定するインサーションセンサータイプで、分流構造のない全量測定方式です。

整流の為のフィルターは入っていますが、比較すれば圧倒的に少ない抵抗で流体を流すことができます。

ガスに直接触れるヒーターと熱センサーはSUSU316のシースで保護されているのでアンモニアどころか塩化水素(もちろんドライガス状態のみ)の使用にも耐えるのです。

また、MFCの構成物で最も大きな圧損を産むバルブ部分に関しても、5000L/minクラスのKv値を持つMFC一体型バルブが準備されていますし、それ以上の大流量、低圧損要求にはKv値を最大6まで選べる別体型モーターバルブも用意できるのがこのマスフローの強みです。

モーターバルブはソレノイド式よりも応答性では、劣りますが、構造上圧力損失を非常に小さくできる利点があります。


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理論上ではこの組み合わせでKv値4.4のバルブを選んだ場合、F.S.1000L/min[N]レンジで比較しても、分流構造タイプのMFCの1/4程度の圧力損失で流体制御が可能なのです。
MASS-STREAMがEU圏、特に窒化炉メーカーの多いドイツでアンモニアの流量測定&制御用途で高く評価され採用されているのは、こういった他に無い特性を評価されてのことだそうです。

シール材に関しては、アンモニアに使用するマスフロー全てにいえることですが、一般的なエラストマー材であるバイトンは膨潤してしまうため使用不可です。
EPDMかNBRが推奨されます。
メタルシールが普及し、少し危なそうなガスはなんでもメタルシールにする傾向が最近顕著ですが、大流量メタルシールモデルは存在していませんし、そもそもメンテ性を考えればエラストマーシールで問題ないガスをわざわざメタルシールにする必要はないとDecoは考えます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan