EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

インサーションタイプ

真・MFC千夜一夜物語 第430話 MFCの歴史を振り返ろう その6

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回もMFCの熱式流量センサーの巻線型のお話です。
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巻線型の大きな問題点は層流素子(バイパス素子ともいう)による分流比の大きな分流を強いられる構造にあります。
マスフローのセンサー構造を説明した上図でわかるように、巻線型流量センサーは必ずしも流体の全量を測っている訳ではありません。
その為、この方式を「巻線型分流測定方式」とDecoは呼称しています。
どんなフルスケール流量のマスフローでも、そのセンサー管に流れる量は入口で分岐され10mL/min程度なのです。
残りの流量は層流素子側に流れています。
層流素子自体は一定の量をセンサー管に正確に分流するという役割を果たしながら、センサー管内部に層流を作る為に、過剰な量の流体をバイパスさせる仕組みです。
なぜならば熱式センサーが正確に流量を測定するためには、センサー管内に層流が生じる状態(層流運動状態)であることが必要条件だからです。

層流時の流速分布は中央部を頂点とした放物線状になります。(ハーゲン・ポアズイユの流れ) それに対して流速が上がって乱流状態になると、流速分布は中央部で均一で側壁部直前で急激な速度勾配が発生する形となります。
乱流状態では、そこで何が起こっているかわからない状態であり、更にその流れがいかなる状態に至るかを予測するのが大変難しい状態なので、熱式センサーの肝である上流から下流への熱の移動が正確行われているか?を捉えるのが難しくなると考えて下さい。

この分流構造では、センサー管が0.35~0.8mm程度の細い管状に設計され、層流素子もそれに準じる管状流路が大量に配置される構造となります。
なぜなら層流と乱流の境界となる臨界レイノルズ数は、流路直径(d)が決定するからです。
そうするとよほど清浄な流体を流さない限り、この分流構造の流路に異物が詰まらないという保証はありません。
 
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異物が詰まるとどうなるか?「詰まって全く流れなくなるなら問題だけど、少しくらい大丈夫。MFCなら自動で流量制御してくれるから・・・」と誤解しがちですが、そうではありません。
分流構造への異物介在はマスフローでも最大クラスのトラブルを発生させてしまうのです。
異物が混入して、センサー管か層流素子の一部の流れを妨げただけで、製品の出荷流量調整時の正常なセンサー管と層流素子との分流比率が崩れてしまい、測定流量と実流量の間に10%以上の誤差が生じてしまうことになります。
MFCは設定値と流量値が一致するように制御しているのみで、流量値と実流量がずれていてもそれを検証する手段は持っていないので、そのまま延々と制御してしまいます。
ある日突然、異物が入り込んだだけで、「カタログ表記で流量精度が何%で・・・」等と議論していた話が吹っ飛んでしまう事態が起きてしまうのです。
それだけでなく大気圧より若干低い負圧領域=Sub-Atmospheric Pressure条件でのMFMの流量器差も指摘されています。
また、構造上、圧力損失が大きくなる問題もありますね。
ダスティな流体を流す用途や、吸引やブロワ等の低圧力損失で大流量を流す用途では、全量測定のインサーションタイプに後れを取る理由は、こういった分流構造に起因するのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第427話 MFCの歴史を振り返ろう その3

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っていきたいと思います。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして働き始めてからもう10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思っています。

MFCの熱式流量センサーのオリジンであると思われる熱線式風速計のお話をさせて頂いてます。
なみにこの熱線式風速計の原理を直接流量計に応用した製品として、インサーション型熱式流量センサーが挙げられます。
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分流構造を持つ巻線型熱式流量センサーと比較してスルーフロー構造であることが幸いしいて、圧力損失増大、異物侵入や、圧力条件の変動での分流比が崩れることによる再現性能低下という問題が生じにくい特性があります。
つまり、少々汚れた流体を流す用途や、低圧力損失で大流量を流す用途には最適な方式なのです。

逆にこの方式の弱点としては、流体を選ぶ点が挙げられます。
特に軽い水素やヘリウムの場合、測定構造が仇となり、センサーが設置されている流路中心部をパスしていくような必ずしも適切な流れを生成できないので流量測定が正確に行えないことが挙げられます。
1990年代以前は、アナログ回路でしか直線性補正を行えなかった為、直線性が悪いこと=レンジアビリティが狭い事も問題視されていましたが、現在ではデジタルによる多点補正機能の採用で、実用上では大きな問題が無くなっていいます。
ただ、それでも分流型熱式流量センサーを搭載した流量計よりは、ラフな精度仕様で定義されることが多いのは確かです。
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インサーションタイプ熱式流量センサー搭載 MASS-STREAMシリーズ
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第327話 MFCの応答性 その3

前回はマスフローコントローラー(MFCの応答性に関して、流量制御バルブの構成部品であるアクチュエーターが、ピエゾが?それともソレノイドか?は、MFCとしての応答性能を決める決定的な要素ではない事をお話ししました。

今回はセンサーを見てみましょう。

 

センサーで代表的なのは、皆さんも良く御存知の巻線型です。

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巻線式分流構造流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

これに対して最近増えているのがチップ(MEMS)型です。

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MEMS式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

そして、古くからある熱線式風速計をルーツに持つインサーション方式になります。

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インサーション式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

あくまで一般論で言わせて頂ければ、これらのセンサーの中で、応答性能で最も不利なのは、巻線型です。

なぜならば他の2種類のセンサーは、測定対象である流体に直接触れる事で流体の温度を測定しているのに対して、巻線型は細径のSUSチューブの外周にニクロム線を巻き付けている為に、直接流体には接触せず、SUSチューブを介して熱のやり取りを行っている分、不利だからです。

もちろんそれ故に腐食性流体に強く、半導体製造プロセスのような特殊ガスを使用することで成り立っている装置産業には無くてはならないものなのですが、流体への接触が可能な流体(例えば空気や窒素)に限っては、巻線型は応答性能では最初からディスアドバンテージを背負っていると言えるのです。

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MFCの応答性 出典:EZ-Japan

前回から使っているMFCの応答性能を構成するチャートで示すと、「熱の移動量を流量へ換算して流量信号として取り出す」という部分の流量センサーが担当する仕事が速ければ速いほど、MFCとしての応答性能は向上する事になります。

今までこの部位が巻線型のMFCを使っていたユーザーが、アクチュエーターはソレノイドのままで、センサーをMEMSモデルのMFCに変えてみた場合、非常に良好な応答制御性が得られて驚かれるパターンを何度もDecoは見てきています。

もし可能なら、試してみられると良いかと思いますよ。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第245話 バイパスはトラブルの元なの? その4

もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年2月号(1/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第42回は、熱式流量センサーを用いる際のキーワードとなる“コンバージョンファクター(CF)”に関する解説記事です。

さて、マスフローコントローラ(MFC)&マスフローメーター(MFM)の最大のトラブルは、センサーチューブとバイパス(層流素子)の分流比が何らかの原因で初期値より変化すること・・・というお話をしています。
異物が侵入することで、内径1mm以下のキャピラリ部分に詰まってしまうことが、流量異常を引き起こしてしまうのですが、ではどういった使用方法で気を付けないといけいないのでしょうか?

大きく2つありますので、見ていきましょう。
1つはコンプレッサーやブロワで大気を圧縮して流すラインでマスフロー(MFC&MFMの総称)を使う場合です。圧縮される空気は当然埃や水分を含んでいます。
コンプレッサーでは、フィルターやドライヤー等でこういったゴミや水分をトラップして、供給先に送らないよう工夫はされているのですが、完全には取り切れません。
特に昨今のPM2.5研究などで用いられる大気捕集装置では、大気を吸引する際に正確に吸引した流量を測定する為にMFMを使用される場合がありますが、大気圧からの吸引である関係上、MFMを含む配管系の圧力損失を極力小さくする必要があります。
ところがMFMの方から見ると、大気中のゴミや水分をできるだけ入れたくないので、吸引する空気に対してフィルターを入れたいところなのですが、フィルターは目が細かくなればなるほど圧損が大きくなってしまう問題が生じます。

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そこでよくご提案するのが、スルーフロータイプのインサーションタイプ熱式流量センサーを搭載したMFMです。
 
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インサーションタイプMFM MASS-STREAM 【出展ブロンコスト・ジャパン(株)】


このタイプのMFMは、層流素子による分流構造を採っていませんので、流路に狭細なキャピラリ上のパーツがなく、比較的異物の混入に強い傾向があります。
もちろん比較して強い傾向があるというだけで、異物が入っても全く大丈夫というわけではありません。
整流用のフィルターがMFMの入り口にはありますので、それが詰まっては抵抗が大きくなって流れが悪くなりますし、ヒーターや温度センサーは金属シースで保護されているとはいえ、そのシースに異物が堆積すれば熱伝導率も変化してしまします。

ですが、シンプルな全量測定構造というだけで、こういったバイパスや層流素子が原因で生じる経時的な流量異常問題をかなり軽減できるのは確かです。
また、分流構造のMFMより流路構造がシンプルなので、本体の圧損も比較すると小さく、前述のように配管の圧力損失にシビアな用途には、そもそも向いていると言えます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

【供給終了のお知らせ】ブロンコスト IN-FLOW CTA シリーズ

ブロンコスト・ジャパン(株)から供給終了のお知らせが出ています。

「ガス用マスフローメータ・コントローラIN-FLOW CTAは、2018年夏を目途に供給終了予定です。
修理は10年程度続ける予定です。
代替品はMASS-STREAMですが、更新・増設をご検討の方はお急ぎ下さい。」


勘違いしてはいけないのは、供給停止になるのはIN-FLOW CTA (写真下)のみです。
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一般産業用に好評をいただいている、IN-FLOWシリーズ(写真下)自体は、これからも主力機種として生産が続けられますので、お間違いないよう・・・・
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両者には大きな差があって、それはマスフローの命である流量センサーの構造です。
CTAは全量測定のインサーションタイプ熱式センサーです。
それ以外の一般的なIN-FLOWは分流測定の巻線型熱式センサーです。

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今回、供給終了になるのは、このインサーションタイプのIN-FLOWのみなんですね。

ところでDecoさん一押しの同じセンサー方式のマスフローがありましたね?
そう、MASS-STREAM シリーズです。
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実は昨年、MASS-STREAMのブランドが M+W Instrument から Bronkhorst にリブランドされたので、Bronkhorst ブランドに、同じ方式のマスフロー、MASS-STREAM と IN-FLOW CTA が存在する意味もなくなったための処置と思われます。
両者の関係は、クルマで言うならスバルのBRZと、トヨタの86みたいなものだったんですね?

つまり実質、ラインナップは何も変わらないという事です。
ただ、完全に外形寸法が一致しているわけではない(MASS-STREAMの方が背が低いので問題は無いかと思いますが・・)ですし、変更管理を厳しく行われている業界や、そうでなくてもCTAを装置の補修パーツで登録されてる場合もあるかと思いますので、お客様へは1年前に告知という形を取らせてもらったのだと思います。

EZ-Japan MFC ニュース by Deco
EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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