EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

オーバーシュート

真・MFC千夜一夜物語 第331話 MFCの応答性 その7

ご無沙汰しておりました。

心不全からの合併症で正月明けから37日間の入院生活とその後、退院しての自宅での療養生活を送っておりましたが、徐々に仕事を増やしていきつつあります。

EZ-Japan の看板コンテンツ(と、Decoが勝手に思っているだけかもしれませんが・・・)MFC千夜一夜物語も、ようやく再開させることができました。

これも皆様からのご支援、ご声援のお陰です。

危うく330話で終わるところでしたこの物語、”まだまだ続けろ”との天命で命を拾えたと思って、1001話まで頑張っていくつもりです。

 

さて、MFCの応答性に関する解説でしたが、その制御の仕組みをお話ししてきました。

現実のMFCの使用方法で解く面する数々の問題の内、実はこの特性が絡んでいる事例をご説明しましょう。

ユーザーから質問を頂く事がゼロ点と並んで結構多いのが、MFCSV(設定信号)通りに追従しないけど、どうしてか?」というものです。

詳しくお聞きすると、ユーザーさんの入力しているSVは以下の図のような場合が多いです。

 210309_01

または、ランピングと言うある時間をかけてSVを目標値へ到達させるやり方

210309_02

これらSVを刻々と変化させる制御方法は、流量センサーが熱の伝導を原理に用いる熱式センサーを積んだMFCは最も苦手とするところなのです。

大概のMFCはオーバーシュートやアンダーシュートをくり返しながら流量制御をしてしまいます。
SV
の波形通りにMFCを動かしたいのに、制御はかけ離れたぐしゃぐしゃの波形になってしまう訳です。

そもそも現行世代のMFCはそのセンサーの遅さと、それに対して高速なアクチュエーターの危ういバランスで成り立っていますので、こういた制御で流量を増加させようとすると、SVPV(センサーからの流量信号)に至る前に、SVがまた増加してしまい、結果として常にSVPVの状態で流量制御を行うことになります。(流量を減らす際は逆です。)

また、配管のボリュームを考慮すれば、MFCで制御しようとしても、その下流に残留しているガスが制御されるわけではありません。故にMFCPVの波形が、たとえ思惑通りになったとしても、ワークのあるチャンバーへその通りに流れるわけではないのです。

 

本来のMFCに望ましいSVの与え方は、見慣れた下図の形です。

210309_03

この基本を守って、使用いただきたいとDecoはいつも助言させて頂いています。

MFCは万能ではありませんし、流れだしたガスや液体はすぐにそれを増減できるものではありませんので・・・

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第325話 MFCの応答性 その1

最近でこそあまり競わなくなったイメージがありますが、Decoが営業になった1990年代はMFCの応答性精度の数字がどれだけ良いかを競う時代でした。
応答性と精度という項目は、MFCが単独で保証できる性能ではなく、どんな環境で使ってもカタログスペックを発揮できるわけではないという点を最近のユーザーさんは良くわかってきておられるようですね。

下図、SEMI Standard  E17 “ マスフローコントローラの過渡特性テストのガイド” での定義を見てください。
現在マスフローメーカーが仕様に記載する定義・用語は、そのほとんどがこれに準じていると思っていいでしょう。

 180710_01


この定義が普及するまでは,MFCの応答性能表記はメーカーによりまちまちでした。
設定信号(SV値)が入力されてから、流量信号(PV値)が反応するまでの無反応時間(だんまり時間(Dead Time)が含まれます。
これを無視してPVが反応してからの時間を記載したり、無反応時間を含むトータルの応答時間としてステップ応答時間(Step Response Time)で記載する為、流量が設定値の±2%範囲の下限、設定値の-2%側を通過した瞬間で記載していたメーカーもありました。
これには大きな問題点があります。
先の図を見て頂ければお判りいただけると思いますが、ステップ応答を良く見せる為には、例えオーバーシュートが過多であってもOKなのです。

整定時間(Settling Time)の定義が理解されるまでは、こういったオーバーシュート含みの応答波形で出荷されるMFCに当たると、顧客はプロセスに問題を生じてしまい、困ってしまったのです。
特に半導体製造装置や一部の分析装置はリアクターを高真空に維持してプロセスを行います。
これではせっかくポンプで排気してAPCで高真空を保っても、ガス導入時のオーバーシュートによるサージで真空度が悪化してしまいます。

止む無く安定するまで、貴重なプロセスガスをベント側へ捨てて、流量が安定してから切り替えるという無駄を強いられることになってしまいます。
高価なガス、しかも一部は毒性の高いガスであったりしますから、それを純度の高い状態で捨てられると、下流の除害システムにかかる負担も大きくなりますので、こういった傾向は「応答性能を良く見せているだけで、なにも良い事は無いではないか?」という気付きに繋がり、整定時間でMFCの応答性を議論するようになったのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第303話 MFCとは不思議な存在 その3

【お知らせ】
今まで本ブログは、"EZ-Japan BLOG since 2017”と "真・MFC千夜一夜物語”@niftyココログ版の2つで同時連載進行を行って参りましたが、既に告知の通り2019/5/11をもって@niftyココログ版の方を終了させていただきました。こちらのブログ"EZ-Japan BLOG since 2017"版での連載は、変わらず続けて参りますので、どうか千夜一夜=1001話にたどり着く迄、宜しくお願い申し上げます。

前回は流量制御に関して、手動制御自動制御のお話をしました。
自動制御では流量値を電気信号、もしくは通信で発信できる流量計(センサー)と、同じく電気信号や通信で動作する自動制御弁を調整計と呼ばれる機器に接続することで、流量計からの検出値と目標値を①比較し、それらの偏差を②判断し、自動制御弁の開度を③操作する事で自動制御を行います。これが計装業界では一般的な機器の配置です。

マスフローコントローラー(MFC)は、この自動制御に必要な機器の組み合わせを、一つのモジュールにまとめってしまった機器なのです。
下図にその流れをまとめておきましょう。
 200120_01
ここで勘違いしてはいけないのは、「手動制御が自動制御に劣る」「一体型のMFCの方が優れている」という考えです。
手動制御は自動制御のような人を廃除することはできませんが、環境条件等が大きく変動する要素が無い場合は、ローコストで設置できる利点を活かせます。
制御させることが少ないので、人が介在するのが立ち上げ時と、点検時だけでいいような場合、ワンショットの実験等ですぐラインを解体してしまう場合が挙げられます。
また、一体型にする利点はシステムの小型化や、個々の機器を組み合わせるより設置・調整の手間がかからず、しかもローコストで調達できる利点があります。
ですが、一体型であるが故の問題点というものも存在するのです。

たとえばこういった状態でガスを導入する場合です。
200120_02

 
よくある事例で、このブログでも何度もご説明していますが、流量設定信号(SV)が
0以外のある値でMFCに入力された状態で、何らかの理由(図では空圧弁へ圧縮空気を送る電磁弁が閉、従って空圧弁も閉状態)でガスの供給が遮断された場合、MFCの調整計はSV>流量信号(PV)の状態をSV=PVとすべく、バルブ制御信号(MV)を増やしますが、当然SV>PVは解消されないので、バルブ開度最大でMFCが待機してしまっている状態です。

この状態で空圧弁を開いてガスを導入すると、全開で待機していたMFCの流量制御弁をすり抜けたガスが大きなガスサージを下流で発生させます。
下流側にワークの入った真空チャンバーがあった場合、真空が破壊されたり、巻き上がったゴミがワークに付着したり、最悪はワークが破壊されたりする深刻なトラブルを招きかねません。
しかし、これはMFCの不具合かというと、そうではないのです。

よく、「MFCが制御不良からオーバーシュートして不具合を起こした!」とユーザーさんからクレームを付けられるケースですが、実は制御不良ではないのです。
そもそもMFCはSV=PVとなるよう(MFCにとって)正常な制御を行っている状態であり、空圧弁が開いた後、SV<PVの状態を感知して、SV=PVとすべく、MVを小さくしてバルブ開度を制御させたのであって、応答制御不良でオーバーシュートを起こしたわけではなく、急激なガスの侵入に対して制御が間に合わなかった分がガスサージとして下流に流れて行ってしまったのです。

一体型のMFCの内部で調整計が制御を行っていると、なかなかその動きが外から見えにくく、MFCの制御不良、オーバーシュートによるものと誤解されてきた過去がありました。
対策はありまして、それはMFCに「自動制御をやめろ!」と指示することなのですが・・・
(次回につづく)

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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