EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

ガスサージ

真・MFC千夜一夜物語 第304話 MFCとは不思議な存在 その4

【お知らせ】

今まで本ブログは、"EZ-Japan BLOG since 2017”と "真・MFC千夜一夜物語”@niftyココログ版の2つで同時連載進行を行って参りましたが、既に告知の通り2019/5/11をもって@niftyココログ版の方を終了させていただきました。こちらのブログ"EZ-Japan BLOG since 2017"版での連載は、変わらず続けて参りますので、どうか千夜一夜=1001話にたどり着く迄、宜しくお願い申し上げます。

 

流量設定信号(SV)が0以外のある値でMFCに入力された状態で、何らかの理由でガスの供給が遮断された場合、MFCの調整計はSV>流量信号(PV)の状態をSV=PVとすべく、バルブ制御信号(MV)を増やしますが、当然SVPVは解消されないので、バルブ開度最大でMFCが待機してしまい、いざガスを導入すると、全開で待機していたMFCの流量制御弁をすり抜けたガスが大きなガスサージを下流で発生させるトラブルに対しての対策は簡単です。


MFC
「自動制御をやめろ!」と指示すればいいのです。

 

「えっ?Decoさん、それどういうこと?」とおっしゃるかもしれませんが、読んで字の通り。

SVPV状態で、MVは最大値となって、流量制御バルブが全開待機することが問題なのですから、MFC「ユー そんな制御やめなよ!」というコマンドを入れてやればいいのです。

 

具体的には2つ方法があります。

1つはSV=0Vを装置からMFCに入れてやることです。でも、これだけでは足りません。なぜならMFCのゼロがずれていた場合、SVが0VでもPV-0.1Vならば・・・やはりSVPVとなりバルブは開いてしまいます。

これと連動して、SV値が0V近辺となった場合に、流量制御モードから強制的にバルブ閉モードに変更仕組みが必要になるのです。

この機能は、「オートシャットオフ」等と呼称されています。

具体的にはSV=0Vではなく、流量制御下限値2%未満の信号が入った際にこのモードを働かせています。この閾値は、メーカーにより色々で1%付近だったり、もっと0に近かったりします。これは「0Vという信号」を電気的に安定して入力するというのが難しいからです。

200203_01

もう1つは、外部から任意のタイミングで、流量制御モードを強制バルブ閉モードに変更する信号を入れる事です。

この信号は、MFCの電気コネクターでは、SV入力とは別のピンがあり、そこに-15Vを入力したり、COMとショートさせることで動作します。(メーカーによって異なりますので、要確認です。

「バルブ強制閉信号」、「VORと言われる機能ですね。

このモードは、前述の通りメーカーによる動作信号種の差もあったり、中にはこの機能を装備していないメーカーもあるので、装置側から見ると少し使いにくい機能といえます。

 

今、アナログ信号で説明しましたが、デジタルの場合は、電圧信号のノイズ影響のような不確かさはありませんから、どちらのモードを使っても確実な動作は保証されます。バルブ強制閉コマンドが統一されていない場合は、前者のオートシャットオフ機能付きのMFCで、SVを0にすればOKです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

真・MFC千夜一夜物語 第303話 MFCとは不思議な存在 その3

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前回は流量制御に関して、手動制御自動制御のお話をしました。
自動制御では流量値を電気信号、もしくは通信で発信できる流量計(センサー)と、同じく電気信号や通信で動作する自動制御弁を調整計と呼ばれる機器に接続することで、流量計からの検出値と目標値を①比較し、それらの偏差を②判断し、自動制御弁の開度を③操作する事で自動制御を行います。これが計装業界では一般的な機器の配置です。

マスフローコントローラー(MFC)は、この自動制御に必要な機器の組み合わせを、一つのモジュールにまとめってしまった機器なのです。
下図にその流れをまとめておきましょう。
 200120_01
ここで勘違いしてはいけないのは、「手動制御が自動制御に劣る」「一体型のMFCの方が優れている」という考えです。
手動制御は自動制御のような人を廃除することはできませんが、環境条件等が大きく変動する要素が無い場合は、ローコストで設置できる利点を活かせます。
制御させることが少ないので、人が介在するのが立ち上げ時と、点検時だけでいいような場合、ワンショットの実験等ですぐラインを解体してしまう場合が挙げられます。
また、一体型にする利点はシステムの小型化や、個々の機器を組み合わせるより設置・調整の手間がかからず、しかもローコストで調達できる利点があります。
ですが、一体型であるが故の問題点というものも存在するのです。

たとえばこういった状態でガスを導入する場合です。
200120_02

 
よくある事例で、このブログでも何度もご説明していますが、流量設定信号(SV)が
0以外のある値でMFCに入力された状態で、何らかの理由(図では空圧弁へ圧縮空気を送る電磁弁が閉、従って空圧弁も閉状態)でガスの供給が遮断された場合、MFCの調整計はSV>流量信号(PV)の状態をSV=PVとすべく、バルブ制御信号(MV)を増やしますが、当然SV>PVは解消されないので、バルブ開度最大でMFCが待機してしまっている状態です。

この状態で空圧弁を開いてガスを導入すると、全開で待機していたMFCの流量制御弁をすり抜けたガスが大きなガスサージを下流で発生させます。
下流側にワークの入った真空チャンバーがあった場合、真空が破壊されたり、巻き上がったゴミがワークに付着したり、最悪はワークが破壊されたりする深刻なトラブルを招きかねません。
しかし、これはMFCの不具合かというと、そうではないのです。

よく、「MFCが制御不良からオーバーシュートして不具合を起こした!」とユーザーさんからクレームを付けられるケースですが、実は制御不良ではないのです。
そもそもMFCはSV=PVとなるよう(MFCにとって)正常な制御を行っている状態であり、空圧弁が開いた後、SV<PVの状態を感知して、SV=PVとすべく、MVを小さくしてバルブ開度を制御させたのであって、応答制御不良でオーバーシュートを起こしたわけではなく、急激なガスの侵入に対して制御が間に合わなかった分がガスサージとして下流に流れて行ってしまったのです。

一体型のMFCの内部で調整計が制御を行っていると、なかなかその動きが外から見えにくく、MFCの制御不良、オーバーシュートによるものと誤解されてきた過去がありました。
対策はありまして、それはMFCに「自動制御をやめろ!」と指示することなのですが・・・
(次回につづく)

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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