もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20187

月号(6/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)及びマスフローメータ(MFM)内部の分流構造が、流量の繰り返し性に対して及ぼす影響を解説していますので、本解説と合わせてお読みいただけたらと思います。

 マスフローの防爆仕様についてですが、まずは防爆そのものに関して解説していきましょう。

爆発性ガスによる爆発事故を防ぐのが、読んで字のごとくの防爆の役割ですが、あまり一般的に知られていないイメージがあります。

特にマスフローの世界は主戦場であった半導体製造装置等の真空装置分野でこの対応が求められていない為、下手するとメーカーの営業ですら、防爆製品の存在を知らない事があるのです。
例えば石油類は常温状圧でも気化します。
環境条件によっては、スイッチの開閉に伴うわずかな電気火花や静電気による火花で引火や爆発する危険性があるのです。
燃焼用ガス(LPGLNG 類)も、配管の漏れが生じて空気と混ざり合う事で、やはり爆発が起きますね。
近年でこそ減少していますが、アセチレンガスは現在のアセトンを使った充填方式が採用されるまでは、事故が相次ぎました。
水素社会ともてはやされる水素ガスも、漏れやすく爆発範囲が広いその性質から非常に危険な存在です。

今回はガス蒸気に話を絞りますが、防爆にはこれ以外に、空気中に浮遊している燃焼性微粉の濃度が爆発限界内にあり、点火源がある際に生じる爆発を対象にした「粉塵防爆」という分野があります。
マグネシウム等のように、雰囲気中に酸素が少なくても爆発を起こす“爆発性粉じん“と小麦粉で有名になった酸素と発熱反応を起こし爆発する”可燃性粉塵“があります。
工場の安全管理という点では、ガス、蒸気よりも身近にある可能性もあるので、勉強して頂けたらと思います。

 

爆発性ガスが存在する場所を危険場所と呼称して、そこで使用される電気機器は「防爆検定に合格した製品でなくてはならない」と、労働安全衛生法、電気事業法および同関係規則、消防法を根拠で求められています。

「防爆」という語句は、類似している「防水」、「防塵」と異なり、必ずしも爆発性ガスを電気機器への侵入を防げばよいという訳ではなく、爆発事故そのものを防ぐ事が趣旨で、その為に電気機器ではなく点火源そのものを各種手段で爆発性ガスから隔離する構造を求めている点が大きく異なります。
その為、下図のような複雑な規格表示となります。


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防爆に関する国内の規定はIEC 60079を元にJIS C60079として定められています。
JIS C60079-10
では、爆発性ガス又は蒸気によって危険が生じる可能性がある危険区域の分類についての規定が定められており、これに定められた危険区域  (hazardous area)で使用する電気機器は予め危険に対する予防策を施さなくてはなりません。
危険区域は,ガス状の爆発性雰囲気の生成頻度及び持続時間によって、 3 種類の危険度区域に分類されます。(下図)

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この危険場所の定義ですが、0種場所というのは常に爆発性ガスや蒸気と接するという意味で、石油タンクのような空間内に設置されるイメージです。
それに対して1種、2種の区分けは、通常の状態=稼働状態、異常な状態=修理、メンテナンスを行う必要がある状態と考えてください。
稼働状態で危険雰囲気が生じる可能性が無いことを証明するのは難しいことです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan