EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

コリオリ

真・MFC千夜一夜物語 第408話 マスフローとアンモニア その5

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)で流量測定や流量制御を行う流体でも最近注目度が高いのは水素とアンモニア(NH3)だと思います。
水素に関しては第176夜と177夜で解説をさせてもらいましたので、今回はアンモニアのお話をさせて頂きます。

今回からはアンモニアを液体で流量制御する事例です。
アンモニアは常温で気体であるという解説を前の解説でいたしまたが、今度は液相で流量制御する方法を考えてみましょう。
常温常圧で気体であるアンモニアですが、圧力を高くすれば液体として搬送が可能になります。蒸気圧曲線から紐解けば、20℃で0.87MPa(A)を超える辺りで液体となる筈ですね?
こういった液体を高い圧力で搬送し、最終段階で気化するのは、気相でのハンドドリングよりも難度は高いと言えます。
だが、それをクリアできる適切なデバイスがあれば、より大流量のアンモニアを搬送する事が可能になるはずです。
それは気体と液体の密度差を考えればわかります。
そして高圧条件で液体流量測定するのが得意な流量計が存在しています。
本ブログで何度も取り上げているので、読者もピンと来ていると思います。
そう、コリオリ式流量計ですね。

ここでコリオリ式流量計のおさらいをしましょう。
コリオリ力は1835年フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(Gaspard-Gustave Coriolis)が発見した回転座標系における慣性力の一種である。回転系に発生する慣性力としてのコリオリ力を流量検出原理としたのがコリオリ式流量計です。
このコリオリ式流量計の流量センサーは回転させる代わりに振動を与えています。
 
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振動と回転は異なる運動系に見えますが、実は図のように回転軸に対し垂直方向からフォーカスすると同じ動きであることが理解できます。
コリオリ式流量センサーは、回転系に発生する慣性力であるコリオリ力を取り出す目的で作られた仮想回転系と考えてもよいでしょう。
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一般的なコリオリ式流量計の構造は2本のU字型チューブを使用しており、それらを逆位相で振動させています。
流体が流れると質量流量に応じたコリオリ力が作用して、振動する2本のチューブには位相差が発生し、捻れが発生します。
流体が進入する側の左側ではコリオリ力は共に2本のチューブの内側に働き、流体が出る右側は流体の向きが180度変わるため、今度は外側に働くからです。
ここで流体が流れたときの位相差を測ればコリオリ力、ひいては流体の質量流量を算出できるのですが、実際それをリアルタイムで測定するのは難しいので、左右のチューブが振動の中立点(捻れ角=0位置)を基準点としてそこを通過する時間差Δtを位相差として測定することが多いのです。
コリオリ式流量計には、チューブを振動させるオシレーター(発振回路)と、左右の捻れを検出するピックアップ(検出回路)が配置されているのが一般的です。
中にはU字管1本で構成されたものもあります。
1本でも原理上は問題が無いのですが、コリオリ力を強く発生させられない場合、つまり流体の質量が小さい場合、センサーの感度が低くなり、結果SN比が悪い信号となるため、外乱=ノイズに弱い傾向を示すため、2本チューブタイプが開発されたと言われています。
 

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真・MFC千夜一夜物語 第396話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その4

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
それに伴い注意いただきたい点をお話ししますね。

前回は振動影響のお話をしました。
もう一つ気を付けるべき点は温度です。
 確かにコリオリ式流量計は流量式に流体の物性に関わる値を含まないので、流体に対する温度圧力の影響を直接受けません。
しかしながら、流量式にあるバネ定数Ksは温度の影響を受ける故に温度補償を行っているというお話をしたと思います。
今回はここが関わっていきます。
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コリオリ式マスフローは、供給圧を上げてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうと解説しましたが、ある種のオイルは低温となる飛躍的に粘度が上がり、ゲル状から固形に至る場合があり、気を付けなくてはいけません。
元圧を上げて押し込めるといっても、コンプレッサーの能力の限界で制限があります。
圧力によっては低温環境では全く流れないこともありえるのです。
その場合は、配管やコリオリ式マスフローをヒーターで昇温する事で解決できることもあります。
オイルなどの粘性の曲線はある温度域で急激に変化する傾向があるので、その温度域より昇温出来るなら、いいのです。
ですが、コリオリ式流量計は繊細な電気回路で構成されている。
例えばピックアップ部や、Ksバネ定数への温度補償回路がそれに当たります。
高温マスフローのお話で解説しましたが、70℃を超える高温はそもそも電子部品にとっては避けるべきでしたね?
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のminiCORI-FLOWシリーズでは、流体温度が70℃を超える場合、周囲環境温度を常温、もしくはそれより下げてほしい旨を下図のように明確に謳っています。


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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

赤線が非通電時、黒線、青線はそれぞれの機種の通電時の縦軸が流体温度、横軸が周囲温度です。
これは周囲温度を下げる事で、流体に直接触れない電子部品を保護する意味合いがあるとDecoは理解しています。
このようにヒーティングを行う場合は、くれぐれも注意して行って下さい。
流体を流す為に高価なコリオリ式マスフローを壊してしまっては意味が無いですし、そこまでには至らなかったとしても、折角のコリオリなのに不確かなデータを採っても意味は無いですから。

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真・MFC千夜一夜物語 第395話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その3

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
それに伴い注意いただきたい点をお話ししますね。

完全な質量流量計であるコリオリ式で何に気を付けるべき振動影響です。
コリオリ式流量計の中でも特に微小流量域を得意とするBronkhorst High-Tec.B.V.(ブロンコスト)のmini CORI-FLOWシリーズのように流量レンジによっては内径1mmを下回る細径のステンレスチューブを使用している場合、コリオリ式マスフローにポンプが近接して設置されていて、しかも設置が同じプレート上や構造体の中だった場合、振動の周波数が干渉するとコリオリ式センサーに影響を及ぼしてしまうのです。
また、複数台のコリオリ式マスフローを近接して設置すると相互干渉(クロストーク)を起こす可能性もあります。

少し珍しい例になりますが、微小流量という事でコリオリ式マスフローに接続された1/8インチの配管がしっかりステーで固定されておらず、コリオリ式マスフローとチャンバーの間でフリーになっていて、しかもそれが直角の曲げがあって旗状になっていたりすると、それが周囲の振動を拾って自身も振動してしまうという、言わば”振動のアンテナ”のような役割を果たしてしまって、コリオリ式流量センサーに問題を起こしたこともありました。

いずれの場合も振動の周波数によって、ポンプやコリオリが近接すれば必ず起きるわけではないのですが、不幸にもこういった現象に見舞われた場合の対策をお話ししましょう。
Decoは基本的にブロンコストのコリオリ式マスフローをお買い上げいただいた際は、画像にあるようなステンレスの重量ブロックにインシュレーター(制振材)を配したマスブロック(制振台)を取り付けて使う事をお薦めしています。
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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

これにより振動影響をかなり取り除く事が出来ます。
先ほどの不具合事例は、配管作業の必要性からこのマスブロックを外して使用した場合に発生していたものです。
つまりコリオリ式マスフロー側で振動対策を取ればほとんど解決できてしまうんですね。
マスブロックを使えば複数のコリオリ式マスフローを直近で並べてもクロストークを抑え込むことも可能です。

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真・MFC千夜一夜物語 第394話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その2

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
それに伴い注意いただきたい点をお話ししますね。
・・・とは言いながら、熱式を長く売ってきたDecoからすると、コリオリ式はすごく良い子で、特に問題はありません。
応答性能も流体に奪われる熱の移動を測る熱式と異なり、コリオリ式はセンサーの応答が速い為に、今まで見えなかったような波形を確認する事が可能ですし、ゼロも熱式のようにずれません。
そして熱式の最大の弱点であるコンバージョンファクター(CF)問題も存在しません。
 
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上にあるように、コリオリ式は流量式に流体の物性値を含んでいません。
故に流体の物性がよくわかっていない材料や、刻々と組成や混合比が変化していくような流体でも質量流量測定ができる完全な質量流量計なのです。
つまり流体や条件毎にCFが存在しないという事です。
熱式のように流体の定圧比熱に左右されたり、温度、圧力、あげくはMFCの分流構造でCFが複数存在してしまったり、最悪はその流体のCFがわからないという事が一切ありません。
圧力をかけてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうというのが、コリオリ式の特徴です。

では、そんな完全な質量流量計であるコリオリに何に気を付けるかというと、それは先ほどコリオリの長所としてご説明したセンサーの測定原理が絡んでくるのです。
熱式流量センサーの弱点は熱影響であったのと同じく、振動系のコリオリ式流量センサーの弱点は、やはり振動なのです。
以下の動画の55秒目くらいから、コリオリ式流量センサーの動きを見てください。
チューブ自体が振動しているのがわかりますね?
(これは説明の為に少しデフォルメされている事をお断りしておきます。)

出展:ブロンコスト・ジャパン(株)

例えばコリオリ式マスフローを設置した際にポンプが近接していて、しかも設置が同じ構造物だった場合や、配管がしっかり固定されておらず、振動を拾って自身も振動してしまいやすい状況ですと、振動の周波数によってはコリオリ式センサーに影響を及ぼしてしまうのです。
複数台のコリオリ式マスフローを近接して同じ構造体の上に並べてもクロストーク(相互干渉)を起こしてしまう事もあります。
これは必ず生じるわけではありません。
でも、もし不幸にもこういった現象に見舞われた場合は、どうしたらいいでしょうか?

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真・MFC千夜一夜物語 第393話 コリオリ式マスフローで気を付けて頂きたい事 その1

最近、コリオリ式マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラーMFC)、マスフローポンプのご用命を頂く事が増えました。
熱式を長く売ってきたDecoからすると、コリオリ式はすごく良い子です。
どこが?というと、コリオリ式はお納めした後のクレーム、問い合わせが非常に少ないんです。

熱式は「ゼロがずれる」、「実ガス流量があってない」、「応答が遅い」といったお客様からの納品後の問い合わせが本当に多かったのですが、コリオリ式にはそれがありません。
それはコリオリの持つ以下の熱式に対するアドバンテージのお陰です。
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要約すると・・・

・コリオリは完全な質量流量計である。

・コンバージョンファクター(CF)が存在しない。

・流量センサーの感度が高く、応答が速い


これは両者の流量式から読み取れます。
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では、そんな完全無欠なコリオリ式を使う上で、注意すべき点は何でしょうか?
次回からご説明しましょう。

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EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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