EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

コンバージョンファクタ

真・MFC千夜一夜物語 第274話 マスフローでこのガスを使う時は注意しよう! その6

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 2019年3月号(2/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)の流量制御バルブのアクチュエーターとしてソレノイドを搭載したMFCの使用上の留意点を解説しています。

アルゴン(Ar)
アルゴンは不活性ガスの代名詞のようなガスですね?。
アルゴンのネーミング由来が、ギリシャ語でelgon「働く」という言葉に否定語のanを付け「働かない:=不活性な」という造語であることからもうかがえます。
実はニートなガスだったんですね、アルゴンは。
アルゴンはヘリウム、ネオン、クリプトン等と同じ希ガスですが、液体空気からの分留で容易に得られるため、比較的入手しやすいガスで、半導体製造工程ではスパッタ装置を始め各種工程で使用されていますし、分析装置では試料のキャリアガスとして、そしてアルゴン溶接では溶接中の酸化を抑える保護ガスとして各業界で幅広く活躍しているガスなのです。


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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

マスフローコントローラ(MFC)にとって、アルゴンは窒素と並んで制御しやすいガスなのですが、少々厄介なところがあることはあまり知られていません。
実はアルゴンとヘリウムのコンバージョンファクタ(CF)は近似していて、だいたい1.4近辺です。
では、この2種のガスを切り替えて一つのMFCで流量制御できるか?というと大間違いなのです。
それはバルブ側に原因があります。
流体としてのヘリウムとアルゴンは、バルブ部のオリフィスを通過しやすさで比較すると、必ずしも同じではないのです。
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ここで重要になるのは、密度です。
窒素の密度が1.25kg/m3に対して、ヘリウムは0.1785 kg/m3しかありません。
それに対してアルゴンの密度は1.784 kg/m3もあるのです。(いずれも0℃,1013hPa条件) 
バルブでよく使われる容量係数であるKv値の式に当てはめて、あるバルブオリフィスを選定した場合に、同じ圧力・温度条件でヘリウムとアルゴン、2つのガスを流した時に流れる流量比を計算すると、ヘリウムの方が3倍以上多く流れる結果が出てしまいます。
(MFCの場合、このKv値、もしくはCv値でバルブオリフィスの全開流量を算出しても、全開流量がそのまま流量制御フルスケール流量ではないのですが、目安にはなります。)
つまり同じバルブ設定ではこの2つのガスは流量差が大きすぎて、同じように制御できない可能性が高いということです。
ヘリウム用のMFCでアルゴンを制御した場合、低設定流量の制御は問題ないが、設定を高くしていくとどこかのポイントで流量制御が頭打ちして流れなくなってしまい、SV値(流量設定値)>PV値(流量出力値)という現象が発生してしまいます。
応急処置としては、アルゴンの供給圧力を上げることで、なんとか流すことができることもありますが・・・
やはりCFが似通っているからという理由だけで、他のガスを流すのは様々なリスクがあると考えて下さい。
アルゴンのような重いガスとヘリウムのような軽いガスは、そもそも流量制御バルブの選定が異なって当然という認識を持ってくださいね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第268話 コンバージョンファクターは1つではない その5


 もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」  20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。

 さて、本物語のラスボスの一つ“CFの信憑性”との戦いは続いています。

それではいってみましょう。

 CFへのセンサー方式による影響

 これはある意味当たり前と言ってしまえば終わりなのですが、ユーザーサイドでは知られていない事ですので取り上げます。
下図にあるインサーションタイプの全量測定型熱式センサーを搭載するマスフローと、巻線式分流測定方式のものとはCF値は共有されない。
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アルゴンFS600SLMMFMとして、巻線式分流測定方式F-113AC-1M0とインサーションタイプ全量測定方式のMASS-STREAM D-6370の比較を行ってみました。
ソフトが両者で異なりますので比較し辛いかもしれませんが、F-113AC-1M0CF1.422100%FSに対して、D-6370CF2.017100%FSなのです。
この2種類に関しては確かに熱式流量センサーを搭載しており、原理は同じ熱式流量計と考えてよいのですが、センサー構造が全く異なることから、別のマスフローであると考えなくてはなりません。
インサーション方式は、熱式流量計という名称で国内外各社から販売されており、現場で混在して使用しているユーザーが、マスフローとして一からげにして巻線式分流測定方式のCFで流量換算をされていたのを見かけたことがありますので、取り上げてみました。

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 “マスフローのラスボスの一つ”というのは大げさではとおっしゃる向きもありますが、かってはほとんどのマスフローメーカーが流体種とCFを一対一で表記=シングルCFで運用してきたことの信憑性にかかわってくる内容なのです。
今回の記事で分かってきたように、CF1つで管理するのはかなり乱暴なことであり、複数のCFが存在することは認めなくてはいけません。
現在、多くのマスフローメーカーはCF表の公開をやめ、マルチガス・マルチレンジ マスフローに移行しています。
要はシングルCFの限界をユーザーから指摘され、実ガス流量保証という名のマルチCFへの移行を行っているのです。

マスフローを使用する上で、校正ガスである窒素(空気)と実ガスの相関は、決して流量式だけで算出できるものではありません。
温度、圧力、流量レンジとマスフローの分流構造といった膨大なファクターを踏まえて、実ガス流量に近づける努力をマスフローメーカーは行っている。
だが、あまりにも膨大な作業量が目の前には広がっており、問題はその解を得たところで、それが商業的な成功と結びつくのか?という経営サイドからの問いに対してどうするか?なのです。
「メーカーは製品の根幹にかかわる技術の蓄積と整備を蔑ろにしては、成り立たない。」筈なのに、昨今の日本メーカーの品質上の不祥事続きは、「目先の利益につながるか?どうか?」を優先しすぎたしっぺ返しではないでしょうか?

マスフロー業界として、CFというものを一度総括し、この先のマルチCFとしての標準化をどう進めていくのか?という指針を出していかなくてはならないとDecoは考えます。
オランダという人口では日本よりはるかに少ない国で、ガス種、圧力条件、温度条件、モデル構造別にCFデータベース作り上げ、製品の製造工程で運用するだけでなく、その成果を社内資産でとどめず、FLUIDATのようなWEB上のアプリで全世界のユーザーへ発信するブロンコスト社の姿勢は、日本のマスフロー業界は大いに参考とすべきなのではないでしょうか?
 既報の半導体製造ガス流量ワーキンググループ(SGF-WG)発足”の動き等、日本のマスフロー業界でもこの戦いへの参戦が始まりました。
この試みに関しても、可能な限り本ブログでご報告していきたいと思っています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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