マスフローコントローラー(MFC)の応答性に関して、調整計での制御方法の解説を始めました。
比例動作を制御する
P制御では、流量設定信号(SV)に対して流量信号(PV)が近づくと、目標値にきわめて近い寄り添った状態で安定してしまう現象が起きてしまい、いつまでもSV=PVになってくれません。
そこで
PI制御で過去の偏差を時間的に蓄積し、蓄積量がある大きさになった所で、MVの操作量を増やして流量を増やし、偏差を解消させるという特別な動作をするのでした。

今回はPID制御です。

 

PID制御

 PI制御の弱点は偏差を蓄積する分、PVSVに合致するのに時間が必要になる点です。
MFC
のように周囲の配管機器とガス供給系を形成している場合は、色々と難しい問題が存在します。
例えばMFC1次側で複数ラインを1つの調圧器(レギュレーター)で賄う際に生じるのですが、バルブ切り替えによる消費ライン数の増加に伴う一時的な払い出し量不足や、二次側の真空チャンバー排気量のゆらぎによる二次圧変動のような突発的に強い外乱が発生した場合、PI制御では偏差をある時間が経過した都度修正するので、元の値に戻すために時間が掛かってしまい、それが問題視されてしまう事がありました。(下図:PI制御の場合) 

それに対する改善方法があるので、今回の解説の最後に紹介しますね。
それがPID制御(比例・積分・微分制御)です。

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しかしこのPID制御も万全ではありません。
むしろ図中の微分動作にあるようなオーバーシュートを伴う急峻な波形を形成してしまうことで、二次側にある真空チャンバーの真空度を一時的に悪化させたり、チャンバー内でパーティクルの巻き上げを起こす可能性があります。

本来それらを防ぐ為に装置のインターロック(PVをモニターし、SVの一定許容範囲を超えた際にアラームを立て、最悪ガス供給を断つ方向へ制御する。)を誤作動させる要件になりかねません。

MFCはよくPID制御されていると表記されますが、実際の動作ではPI制御が主であったりします。PID制御で使用するには、マスフローの流量センサーの主力である巻線型センサーの流量出力信号が決して速くはない事が挙げられます。

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