EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

ソレノイド

真・MFC千夜一夜物語 第384話 流量制御バルブとアクチュエーター その4

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
MFCに用いられるアクチュエーターの復習として前回はサーマルアクチュエーターのお話でした。
サーマルタイプの問題点を克服すべく、次なるバルブ構造が考案されます。
それがソレノイド(電磁)アクチュエーターを搭載したバルブです。

ソレノイドはおそらく今、世界で稼働しているMFCに搭載されているバルブ方式では最も多い方式ではないでしょうか?
それくらいメジャーなアクチュエーターでなのです。
電磁弁は遠隔操作できる閉止用バルブとしては、色んな産業用途に製品化されていますが、MFCに搭載するソレノイドアクチュエーターは、それらとは少し異なります。
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一般的なMFCのソレノイドバルブ構造を図に示します。(特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)
本方式で用いるソレノイドはDCソレノイドです。
バルブを動かすのは、KM-45のような耐腐食性能を持つ軟磁性材料である電磁ステンレス鋼を芯とし、そこに銅線コイルを巻き通電することで発生する磁力です。
その磁力でプランジャー(可動鉄芯)を引き寄せてバルブを開閉させます。
バルブは磁力の向きと反対方向へ板バネなどでの力で押し付けられ位置決めされています。
こういった基本原理・構造は、一般的な流路閉止動作用電磁弁と同じです。
ただ、閉止動作用電磁弁は、ある電圧をかければ全開(もしくは全閉)という動作をすればいいのですが、MFC用のソレノイドアクチュエーターは流量を細かく制御するために、印可する電圧に伴って少しずつ開き始めて、できるだけ徐々に全開に至る特性であって欲しいのです。
つまり全開-全閉間を広い電圧レンジで制御できるように特別に調整される必要があるのです。

ソレノイドアクチュエーターを採用したMFCは、サーマルアクチュエーターを搭載した機種に対し、高速応答性と大流量に対応しやすい大きなバルブストロークという利点を持っていました。
この方式はMFCにとって非常に扱いやすいという評価を得て、多くのベストセラーMFCを産んでします。
有名なのはTylan社、Brooks社、Unit社の製品でほとんどが米国系企業です。
また、今や一般工業向けで大きなシェアを持つオランダのブロンコストBronkhorst High-Tech.B.V.もラインアップのほとんどをソレノイドで構成している事で有名ですね?


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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第326話 MFCの応答性 その2

前回はマスフローコントローラー(MFCの応答性に関する定義をご説明しました。

比較する物差しが同じでないと意味がありませんからね。

それでなくてもMFCの応答性というスペックは、色んな誤解を生じてきたのです。

今でも顧客さんとお話ししていると言われるのが、「このMFCはピエゾアクチュエーターを積んでいるから、応答が速いですよね?」という認識です。

これは×ではありませんが、必ずしも〇ではりません。

MFCの応答性を構成している要素を下図に示します。

 

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 ここでは熱式流量センサーを搭載したMFCをモデルとしています。

上流/下流で対になった流量センサーの配置された細いパイプへ分流された流体が流れ込み、上流の熱が下流へ移動をします。

その量をブリッジ回路で取り出して流量へ換算します。

換算するというのは、温度補正や直線性などの各種補正も入るという事です。

最近のデジタルMFCではセンサーからの微細なアナログ出力をADコンバーターでデジタル信号へ変換してから行われます。

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こうして流量信号(PVとして出力された信号は、制御回路にある調整計(PID制御回路等)で外部からの流量設定信号(SVと比較・判断され、SV=PVとなるように、バルブ操作量(MV)が決定し、アクチュエーターに向かって指示されるのです。

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ここまでお話ししてくるとお判りいただけるのですが、アクチュエーターの応答性の勝負はこの最後のMV値が設定・可変されてからなのです。(一番上の図で赤い点線で示した部分)


故に
MFCの応答性能はアクチュエーターへの依存は少ないことがわかりますね?

たしかに単体比較ならば、ピエゾアクチュエーターはソレノイドより速いのですが、MFCの応答性を問うならば、当然MFCというパッケージで考えないといけないという事なのです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

アクチュエーターの性能の違いが、MFCの決定的差ではないということを教えてやる!

MFC豆知識のコーナーです。

前回と違って、えらく長いタイトルですが、某ロボットアニメの赤い人のセリフ モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる”のパロディです。

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よくこのMFCはピエゾだから応答が早いという話をされるお客様がおられますが・・・
間違いではないけど、正解でもありません。
確かに第1世代のサーマル(=熱膨張式)アクチュエーターと比較すれば早いでしょうが、そもそもMFCの応答性能はアクチュエーターの性能だけでは決まらないからです。

MFCとしての応答性能は下図のようなプロセスを経て、流量が制御されるまでの時間を表しています。

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この中で圧倒的に遅いのは、実は初段の部分=センサーでの熱移動の感知です。
そもそも熱というものは、そんなに素早く移動しません。
熱式流量計というものは、数ある流量センサーの中でも鈍いセンサーなのです。
例えば歪を捉える圧力センサーと比べたら10倍は遅いでしょうね。

「あっ!だから圧力式MFCの方が応答が早いんですね!」
というご意見も、あまり当たっていません。

MFCの応答性、それはPVを出力する流量センサー、SV=PVとなるよう比較・判断・操作する調整計、調整計からのMVで動く流量制御バルブ(アクチュエーターを含む)、この3つが積み上げた結果の値なのです。

MFC千夜一夜物語 第301夜からのお話は、この辺りをお話ししてみましょうか?
このお話の終着駅にある結論は、いささかとんでもないものになりそうなのですが・・・
下手するとMFC不要論にもなりかねない、マスフローマイスターが廃業しなくてはならないような怖いお話かもです。

お楽しみに!

【MFC豆知識】 by Deco EZ-Japan



真・MFC千夜一夜物語 第260話 マスフローに防爆仕様は存在するの? その7

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20189

月号(8/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)の流量校正に関する解説です。

本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

 

さて、今回からブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech B.V. 以下ブロンコスト)の防爆用=危険場所用マスフロー(MFCMFMの略語)のEX-FLOWシリーズを国内本質安全防爆で(株)タテヤマ製作所のユニバーサル・ワンループ・プロセスコントロールモジュールの拡張機能であるPIDコントローラを用い、防爆仕様MFCとしての運用を解説しますね。

 

のっけから恐縮なのですが、本質安全防爆構造TIIS Technology Institution of Industrial Safety)認証(正確には“TIIS国際規格に整合した技術指針及び技術基準認証”)MFCは、残念ながら一体型のパッケージでのMFCとしては存在していません・・・

現在、ブロンコストがラインナップしているのはATEX本質安全防爆構造のものだけなんですね。(写真)

 

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<EX-FLOW MFCタイプ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

なーんだ、とおっしゃらずに続きをお読みください。
これは多分に流量コントロールバルブに使用されるソレノイドアクチュエーターにその原因があります。

今回はまず、ATEX本質安全防爆構造のMFCを解説し、その後の連載でTIIS認証本質安全防爆MFMMFCとして流量制御を行わせるにはどうしたらよいかを説明していきたいと思います。

 

ATEX本質安全防爆構造MFC


ブロンコストのラインナップで一番特異なマスフローが危険場所での使用に対応した“EX-FLOWシリーズです。

TIIS認証国内本質安全防爆に対応したMFMを初めて世に送り出したのが、他ならぬオランダのメーカーであるブロンコストであった事からもわかる通り、「マスフローの日本国内規格に合わせた防爆規格取得」というニッチで特異な分野への挑戦を絶やさないメーカーさんです。

「利益の8割は、市場の2割で稼いでいるのだから、残りの市場に注力する必要は無い」とか、「選択と集中」等という言葉で経営を行っているメーカーなら、まず手を出さない分野です。
こういったニッチビジネスを重視していくのが、流量計・マスフローという決して杯の大きくない市場で生きてきたホンモノのメーカーが取る戦略だとDecoは思うのです。

だから、流量計・マスフローメーカーには中小企業が多いのかもしれませんね?

 

EX-FLOWMFCタイプに搭載されているコントロールバルブは、MFMと一体型(=MFC)としても、独立型(コントロールバルブユニット)としても供給が可能です。

このコントロールバルブユニットはMFCとしては一般的なソレノイドアクチュエーターを用いた比例電磁弁構造であり、高速応答はもちろんのこと、リフト量の大きな大流量制御に適したものです。

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<コントロールバルブ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

ブロンコストでは用途に応じて、上の写真にあるように左から標準的な直動型、定格圧40MPa70MPaといった高圧条件で最大差圧40MPa(d)に対応できる“Vary-P”バルブ、大流量向けのパイロットバルブ型を選択可能です。

本来コントロールバルブユニットは機械部品で構成されています。

電流を流すことで磁力を発生させ、バルブ開度を制御するソレノイドアクチュエーターのコイル部分のみが電気部品なので、危険場所で使用するに当たっては、防爆構造でなくてはならない箇所です。
これらのコントロールバルブは、防爆構造に対応する為にATEX防爆認定品のコイルを備えておりXBコイルXCコイル2つの選択肢があるのです。(下図)

第2図

 

次回に続く

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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