EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

ブロンコスト

ブロンコストの隠れたヒット商品EL-PRESS/IN-PRESSシリーズ

ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)の隠れたヒット商品であるEL-PRESS/IN-PRESSシリーズのご紹介をしましょう。
EL-PRESS/IN-PRESSシリーズはAPC(Automatic Pressure Controller)に分類されます。
 
IN-PRESS

IN-PRESSシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

ブロンコストのAPCには圧力センサーの位置で大きく分けて2種類あります。
圧力センサーが流量制御バルブの前(上流)にあるものと、後ろ(下流)にあるものです。
MFCの場合、流量センサーは流れを計りますので、バルブの前にあろうと後ろにあろうと、そのポイントの流量に応じた制御という事になり、用途は変わりませんが、圧力の場合は流量制御バルブで同圧になっている空間が仕切られますので、APCからみた上流の圧力を計って制御したいのか?それとも下流なのか?によって、製品の選定が変わってくるのです。

① 一次側圧力制御型APC P-700シリーズ
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このタイプは圧力センサーが上流側にあります。
一般的なMFCの流量センサーと同じ配置ですね。
圧力センサーがAPCより上流の圧力を測定していますので、APCの一次側圧力を一定にしたい場合に使用されます。
具体的には真空チャンバーの排気系に使用して背圧制御をしたり、ある圧力で封入されるべきワークのガス抜き弁として作動させたりします。
手動背圧弁の自動化目的で使われる用途が多いですね。

② 二次側圧力制御型APC P-600シリーズ
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こちらは上流側に制御バルブ、下流側に圧力センサーを配置したタイプです。
このタイプは下流側の圧力を一定に保つように制御しますので、チャンバーやワーク側から見た場合は供給圧力制御目的のAPCになります。
手動調圧弁の自動化目的で使われる用途が多いですね。

APCとMFCは似ているようで、用途は全く異なります。
更にAPC選定する場合は、調圧弁的な用途なのか?背圧弁的な用途のか?を考慮頂き、決めて頂くと良いと思います。
EZ-Japan Deco までお気軽にご相談ください。

EZ-Japan ここでもう一押し by Deco

真・MFC千夜一夜物語 第389話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その1

寒いですねぇ・・・
Decoは2年前の心不全からの多臓器不全での入院以降、痩せたせいか冬の寒さがきつく感じるようになってしまいました。
ではマスフローコントローラー(以下MFC)はどうでしょうか?
「人間と違って機械だから大丈夫でしょう?」等と思っていませんか?
♪ロボットだから マシンだから ダダッダー♪ではありません。

まず、使用されているMFCの温度仕様を確認してみてください。
初期の半導体向けMFCですと、15~35℃というものがありました。
現在でも5~50℃くらいでしょうか。
この冬場、空調を切ったふつうの作業場や研究室では5℃を切っている事はざらにありますね?
実はこの仕様って空調の効いたクリーンルームで使用するのが前提なのです。
これが一般工業用のブロンコスト(Bronkhorst High-Tech.B.V.)の製品では-10~70℃という広い温度範囲だったりします。
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IP65対応IN-FLOWシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

「使う時には空調をいれているから・・・」とおっしゃるかもしれません。
でも、逆に言えばそれまでの長い時間MFCは冷えた環境で放置されていますから、冷え切っています。
その状態ではMFCに通電してから暖気時間を通常の設定より長くとってあげて欲しいのです。
なぜならば・・・
MFCは熱式流量センサーを搭載しているからです。
下図のあるようにMFCの流量センサーはヒーターから与えた熱を流体が奪っていく量をブリッジ回路で取り出して流量に変換しています。

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このセンサーのヒーターが良く温まっていない状態でMFCを使用し始めるとどうなるか?
厄介なことに熱式センサーは、2もしくは3つのヒーター及び測温抵抗体で構成されています。
これらがスタートアップから均等に性能を果たせるかというと、やはり個体差があったりするのです。
そうするとMFCの流量0=ゼロがなかなか安定しない、つまり測定した流量がずれたまま使用してしまうといった可能性が生じるのです。
寒い時はスタートアップは念入りに、通電後30分とメーカーが書いていても倍の1時間以上は見てあげてください。

そして、目に見えないもっと大きな問題が発生する事もあります。
なぜならばMFCよりも更に冷え切っているものが、MFCの周囲にはあるからです。
それは何でしょう?

お話は次回に続きます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第388話 流量制御バルブとアクチュエーター その8

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関するお話の最終回です。
最後はMFCの流量制御バルブに今後求められる大差圧条件での流量制御のお話です。

MFCの流量制御バルブの適用される圧力範囲は結構広いのです。
低圧、少流量を要求する用途があるかと思えば、片や高圧、大流量を重視する分野もあります。
ところがほとんどのMFCは最大制御差圧が0.3(D)程度で、高差圧になると動作ができません。
最近話題になる水素や、アンモニアといった二酸化炭素の排出量を抑制する新技術に用いられるガスには高圧条件で用いられるものが多いのです。
例えばMFCの一次側が10MPa(G)で、二次側は大気開放状態という差圧10MPa(D)の状況から、流量を制御し始めると下流側の圧力が上昇します。
最終的には二次側が9MPa(G)まで上昇して差圧が1/10の1MPa(D)まで小さくなってしまうという極端な条件での流量制御を求められるプロセスも存在するのです。

こういった用途には従来のMFCの流量制御バルブは無力でした。
そもそも国産MFCは高圧ガス保安法で定義される1MPa(G)未満の圧力定格の製品しか存在していないし、法規的に異なる海外製品で高圧対応が可能なMFC、例えばブロンコストのMFCは40MPaという圧力定格ですが、通常のバルブでは先程のような劇的な圧力条件変化には対応できません。

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大差圧流量制御用Vary-Pバルブ搭載MFC F-232M 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

そこでブロンコストが開発したのがVary-Pバルブという特殊なバルブを搭載したMFCです。
このバルブは最低差圧6 bar(D)=0.6MPa(D)という条件で、最大差圧400 bar(D)=40MPa(D)までの大差圧制御を可能にしました。
極言すれば二次圧大気開放条件なら、一次圧0.6MPa(G)から40MPa(G)まで上昇しても流量制御が可能なのです。
このバルブの詳細構造は公開されていませんが、Decoの推測では以下のイメージです。
 
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流量制御バルブの二次側に背圧制御弁があり、これの働きで流量制御バルブの一次圧(P1)が変動しても、常にバルブ直近の二次圧(P1’)を常に変化させてP1-P1’=一定にしているので、流量制御バルブ自体は設定されたKv値に応じて安定した流量制御が可能なのです。
この構造ならば、P2がどれだけ変化しようと、流量制御バルブには何の影響もないのです。
MFCの流量制御バルブと組み合わせて使えるサイズで、流体圧を利用して作動する背圧制御弁を設計する技術力は他の追従を許さないと思います。
Vary-Pバルブは圧力定格40MPa(G)で最小フルスケール10Nml/minから最大フルスケール100NL/minまでのMFCで製品化されています。

MFCの流量制御バルブとアクチュエーターの構造と将来像を解説してきました。
この分野には新規の材料によるアプローチというよりも、既存の流体制御技術の組み合わせ的な要素が強いです。
紹介したブロンコストのVary-Pバルブは、背圧弁との組み合わせで流量制御バルブの前後差圧を一定にしているだけで、決して単独で高差圧から低差圧まで対応できる新たな流量制御バルブを生み出した訳ではないのですが、流体制御で今まで培われてきた技術を熟成させて食い込んだ素晴らしい製品だとDecoは考えます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第384話 流量制御バルブとアクチュエーター その4

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
MFCに用いられるアクチュエーターの復習として前回はサーマルアクチュエーターのお話でした。
サーマルタイプの問題点を克服すべく、次なるバルブ構造が考案されます。
それがソレノイド(電磁)アクチュエーターを搭載したバルブです。

ソレノイドはおそらく今、世界で稼働しているMFCに搭載されているバルブ方式では最も多い方式ではないでしょうか?
それくらいメジャーなアクチュエーターでなのです。
電磁弁は遠隔操作できる閉止用バルブとしては、色んな産業用途に製品化されていますが、MFCに搭載するソレノイドアクチュエーターは、それらとは少し異なります。
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一般的なMFCのソレノイドバルブ構造を図に示します。(特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)
本方式で用いるソレノイドはDCソレノイドです。
バルブを動かすのは、KM-45のような耐腐食性能を持つ軟磁性材料である電磁ステンレス鋼を芯とし、そこに銅線コイルを巻き通電することで発生する磁力です。
その磁力でプランジャー(可動鉄芯)を引き寄せてバルブを開閉させます。
バルブは磁力の向きと反対方向へ板バネなどでの力で押し付けられ位置決めされています。
こういった基本原理・構造は、一般的な流路閉止動作用電磁弁と同じです。
ただ、閉止動作用電磁弁は、ある電圧をかければ全開(もしくは全閉)という動作をすればいいのですが、MFC用のソレノイドアクチュエーターは流量を細かく制御するために、印可する電圧に伴って少しずつ開き始めて、できるだけ徐々に全開に至る特性であって欲しいのです。
つまり全開-全閉間を広い電圧レンジで制御できるように特別に調整される必要があるのです。

ソレノイドアクチュエーターを採用したMFCは、サーマルアクチュエーターを搭載した機種に対し、高速応答性と大流量に対応しやすい大きなバルブストロークという利点を持っていました。
この方式はMFCにとって非常に扱いやすいという評価を得て、多くのベストセラーMFCを産んでします。
有名なのはTylan社、Brooks社、Unit社の製品でほとんどが米国系企業です。
また、今や一般工業向けで大きなシェアを持つオランダのブロンコストBronkhorst High-Tech.B.V.もラインアップのほとんどをソレノイドで構成している事で有名ですね?


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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

FLOW-BUSを使ったデジタル通信のご提案

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM、MFC&MFMの総称をマスフローとします)をアナログ信号で制御信号を送ったり、流量信号を取り込むというやり取りは日本ではまだ根強いのですが、EUではほとんど使われなくなっているそうです。

数年前、ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech)のオランダ人エンジニアが不思議な顔をして、「日本はなんでまだアナログ信号を使ているんだい?」と尋ねてきた事があります。
確かにやり取りできる情報の質と量、記録に残したり、共有しやすさ、配線の簡略化を考えたらマスフローと直接デジタルで通信する方がメリットが多いのは確かさです。
わざわざアナログで送った信号も最終的にAD変換して、PLC等で制御していたりする場合も多いのですから・・・
まして日本で主流の電圧信号0-5VDCはノイズに弱く、伝送距離も稼げません。
せめて電流信号4-20mAにしたほうがいいのではと、Decoは昔から思っていましたが、なかなか日本という国には前例重視というか、保守的な層が多い為に実績がある0-5VDCからの移行は難しかったのです。

ただ、MFCのメインマーケットである半導体製造装置向けで変化が起こり、300mmウエハー装置でAMAT社の装置でフィールドバスであるDeviceNetが採用された辺りから、確実に風向きは変わりつつあります。
若い世代の研究者間では、デジタルが当たり前になりつつあり、昔ながらのLEDの表示器やボリュームタイプの設定器が徐々に需要が減っていきつつあるのが現状です。

そんな訳で今からデジタル通信に入門したい方には、ブロンコストオリジナルのフィールドバス”FLOW-BUS"がお薦めです。
ブロンコストは早くから自社開発のRS485ベースのフィールドバス”FLOW-BUS”を製品に搭載してきました。
シンプルな機器構成とブロンコスト提供する数々のアプリを使って快適にマスフローのデジタル通信化ができるようになっています。

中にはこのFLOW-BUSをLabVIEW​と組み合わせて研究に使うMFCをPCから制御しログを取るような仕組みを導入されたお客様もおられます。
また、既存のアナログで制御している装置に、デジタル通信を追加して、通常時はログを取るサブシステムとして運用し、非常時に装置本体がダウンしてPLCからの指示が届かない場合は、こちらからMFCを制御するようなシステムをご依頼いただいたこともあります。

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上の図のようにPCでモニタリングをしながら、通常の流量制御はPLCでアナログ信号で行うというシステム例です。
デジタルコマンドで制御の優先をデジタル(PC)側に切り替えれば、全てのFLOW-BUSのコマンドを使った制御が可能です。
全てPCから制御するのは怖いと言った世代は、こういったハイブリットシステムで対応するのも手ですね?
EZ-Japanまでご相談ください。

EZ-Japan MFCニュース by Deco
EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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