最近でこそあまり競わなくなったイメージがありますが、Decoが営業になった1990年代はMFCの応答性精度の数字がどれだけ良いかを競う時代でした。
応答性と精度という項目は、MFCが単独で保証できる性能ではなく、どんな環境で使ってもカタログスペックを発揮できるわけではないという点を最近のユーザーさんは良くわかってきておられるようですね。

下図、SEMI Standard  E17 “ マスフローコントローラの過渡特性テストのガイド” での定義を見てください。
現在マスフローメーカーが仕様に記載する定義・用語は、そのほとんどがこれに準じていると思っていいでしょう。

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この定義が普及するまでは,MFCの応答性能表記はメーカーによりまちまちでした。
設定信号(SV値)が入力されてから、流量信号(PV値)が反応するまでの無反応時間(だんまり時間(Dead Time)が含まれます。
これを無視してPVが反応してからの時間を記載したり、無反応時間を含むトータルの応答時間としてステップ応答時間(Step Response Time)で記載する為、流量が設定値の±2%範囲の下限、設定値の-2%側を通過した瞬間で記載していたメーカーもありました。
これには大きな問題点があります。
先の図を見て頂ければお判りいただけると思いますが、ステップ応答を良く見せる為には、例えオーバーシュートが過多であってもOKなのです。

整定時間(Settling Time)の定義が理解されるまでは、こういったオーバーシュート含みの応答波形で出荷されるMFCに当たると、顧客はプロセスに問題を生じてしまい、困ってしまったのです。
特に半導体製造装置や一部の分析装置はリアクターを高真空に維持してプロセスを行います。
これではせっかくポンプで排気してAPCで高真空を保っても、ガス導入時のオーバーシュートによるサージで真空度が悪化してしまいます。

止む無く安定するまで、貴重なプロセスガスをベント側へ捨てて、流量が安定してから切り替えるという無駄を強いられることになってしまいます。
高価なガス、しかも一部は毒性の高いガスであったりしますから、それを純度の高い状態で捨てられると、下流の除害システムにかかる負担も大きくなりますので、こういった傾向は「応答性能を良く見せているだけで、なにも良い事は無いではないか?」という気付きに繋がり、整定時間でMFCの応答性を議論するようになったのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan