EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

ポンプ制御

真・MFC千夜一夜物語 第380話 コリオリ式マスフローの良さが認知されてきました その8

マスフローメーター(以下MFM)、マスフローコントローラー(以下MFC、MFMやMFCの総称としてマスフロー) の中で、究極の質量流量計としてDeco推しておりますコリオリ式マスフローが最近日本でもようやくブレイクし始めました。
それはなぜでしょうか?
答としては、コリオリ式MFMを中核とした分給システムとしての展開が挙げられます。

コリオリ式マスフローを用いた流量制御技術の進化は製薬や食品製造ラインで添加物の正確な添加量を制御する工程で重用されています。
添加剤のドージングは貴重な材料の無駄を防ぐために、環境変化に影響を受けず長期に渡って高精度と高い再現性を維持したいからなのです。
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)LDM (Liquid Dosing Modules)シリーズと言う液体ドージングユニットを製品化しています。
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LDMシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
 

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上図にあるように、PLCから流量指示を送り、それを受けたコリオリ式MFM mini CORI-FLOWが内蔵しているPIDコントローラーでダイレクトに液体注入ポンプ(例えばギアポンプ等)の回転数を制御します。
そして、工程のスループット向上を目的として個々のワークに対してキレのいい添加剤供給を行うべく、PLCでMFM下流の閉止弁の開閉制御を行うのです。
これにより、従来はロードセルなどで添加剤を投入した結果をワーク全体の重さで測って管理していたのを、流しながら質量流量で管理できるようになります。
ポンプ側もただの回転数制御ではなく、今流れ得ている質量流量に応じた繊細な回転数管理が加わることで、安定した添加剤供給が可能になるのです。

もちろんポンプの経年変化に伴う吐出流量の劣化に対しても、MFMからの流量信号との比較制御により、回転数が適切に補正されるので、結果としてポンプのメンテナンスタイミングが来るまでは、環境変化や経時変化の影響を受けにくいドージングシステムが構築されるのです。
更にメイン材料ラインの増減に合わせて、添加剤ラインの流量も変動させることで、混合比率を一定に維持するマスタースレーブ運転での制御への拡張も可能です。
当然、流体の物性変化に影響受けないコリオリ式MFMを採用しているため、添加材種の切り替えにも速やかに対応が可能である。

流体の流量制御に於けるスループット向上の試みで、最も効果があるのは自動化です。
つまり人間という不確かな要素を生産ラインにできるだけ介在させない事なのです。
それを実現するには、人間の経験や勘に頼っていた部分を自動制御で補わなくてはなりません。
環境条件が変動しても、ある一定の再現性を確保できる仕組みが必要になったきます。
コリオリ式マスフローは、流体種を選ばず、そして温度・圧力条件の変動に左右されずに流量測定ができる唯一の“完全な質量流量計”です。
今後、このコリオリ式を凌ぐ存在はなかなか産まれないのではないかと、Decoは考えています。
コリオリ式マスフローは、今後ますます産業界の流量制御分野を席巻していくのではないでしょうか?
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第379話 コリオリ式マスフローの良さが認知されてきました その7

マスフローメーター(以下MFM)、マスフローコントローラー(以下MFC、MFMやMFCの総称としてマスフロー) の中で、究極の質量流量計としてDeco推しておりますコリオリ式マスフローが最近日本でもようやくブレイクし始めました。
それはなぜでしょうか?

それは“完全な質量流量計”であるコリオリ式マスフローを用いた新しい流体制御技術がブレイクしてきているからなのです。
まずは海外からこの動きは始まりました。
それが最新の製薬用途やリチュームイオンバッテリー製造工程で採用され、世界的に大きな需要を生み出している「コリオリ式MFMを用いたポンプの回転数制御」です。
この連載でも何度か、マスフローポンプ、質量流量ポンプとして紹介してきましたが、ここ数年で大きく成長した技術なのです。
コリオリ式MFMとギアポンプを組み合わせて、ギアポンプから吐出される流量をコリオリ式MFMで質量流量測定し、あらかじめ与えられた設定流量になるようフィードバック制御でポンプの回転数を可変することで、脈動の少ない定量液体搬送を可能にしたシステムを質量流量ポンプ(マスフローポンプ)と呼称しています。
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のコリオリ式MFM mini CORI-FLOWシリーズを使用した液体分給システムのことです。
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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

流量測定ではなく流量制御ならば流量制御バルブの開度をフィードバックコントロールする液体用MFCがあり、それとポンプを接続すればよいのではないかと考えがちですね?
しかし、ポンプは回転数を設定して、一定の圧力で液体を送り出そうとするのに対し、MFCはポンプの送り出した液体の流量を測定して、設定流量になるようPID制御でバルブ開度(=流路抵抗)を可変させているというこの流量制御方式は、わざわざポンプが送り出した液体を、MFCが流量制御バルブで制限することで必要な流量を供給しています。
これはポンプとMFC、実は双方が流体を制御しようとしている事に気付きませんか?
それでは無駄が多いのではないでしょうか?
「ならばMFMで測った流量と希望する設定流量が一致するようにポンプの回転数をダイレクトに制御してしまえばいいのでは?」という発想が出てきても不思議ではないですね。
この“マスフローポンプ”はそういった発想で企画されたシステムです。
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元々、ブロンコストのMFMは流量を測定するだけでなく、PIDコントローラーを搭載することで外付けの流量制御バルブを制御することが可能という珍しい特長を持っていました。
それを応用してMFMからのポンプへダイレクトで流量制御信号を送っているのです。
MFMの流量信号(検出値=PV値)を受けて、入力されている設定信号(目標値=SV値)と比較して偏差を判断して、ポンプの回転数を操作すべく、制御信号を送っています。
本来この種の制御に必要な別置きPIDコントローラーを不要としているところが大きな特長で、ユーザーにとっては購入した機器を設置するだけで、複雑な設定は必要なく、すぐ使用できる利点がある。
ポンプで液体を流し込む場合、流量センサーを用いたフィードバック制御を行っていないと環境要因(特に温度)、ポンプや配管のコンディションの経時変化により、流される液体の流量に大きな差が生じてしまいます。
マスフローポンプは読んで字のごとく「質量流量でフィードバック制御されるポンプ」です。
この利点は、不変の単位である“質量流量”を用いて流量を制御できることです。
ポンプの吐出量は、常に一定であると誤解しているユーザーは思ったよりも多いのではないでしょうか?
現実には環境条件の変化や、経時変化、そして下流側配管抵抗の変化でポンプの産み出す流量は刻々と変化しているのです。
精密な微小流量液体分給には、コンディションを問わず正確な流量を測定できるコリオリ式MFMからのフィードバックによる回転数制御がマストになる日が到来しようとしているのでした。 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第378話 コリオリ式マスフローの良さが認知されてきました その6

マスフローメーター(以下MFM)、マスフローコントローラー(以下MFC、MFMやMFCの総称としてマスフロー) の中で、究極の質量流量計としてDeco推しておりますコリオリ式マスフローが最近日本でもようやくブレイクし始めました。
それはなぜでしょうか?

前回の最後に「現状でコリオリ式流量計の一番の弱点は、コリオリ力が発生しない、もしくは微弱にしか発生しないような密度の小さな流体、具体的には低圧条件の気体や微少流量液体の測定が難しいことです。」と書きました。
特に気体の流量測定では、その密度の小ささが災いして充分なコリオリ力が得られない事が多いのです。
そして、本来ならばワクチン等の製薬ラインで必要とされる微小流量液体の測定も難しいものがありました。
その為に「コリオリ式流量計はプラントレベルの大流量測定に用いるもの」と言う認識が強かった時代があったのです。

この弱点を解消する方法は2つありました。
純粋にコリオリ力が弱い=流量センサーとしてのSN比が悪化しているのだから、コリオリ力を強くするために密度を上げるという方法です。
特に気体は圧縮性があるので比較的高い圧力で供給すれば密度を上げる事が可能です。
例えば燃料電池自動車の水素ステーションでの流量測定用途で、あの密度の小さいガスの代名詞である水素を70~100MPa(G)という高圧で測定する流量計にコリオリ式が選定されている事からもわかります。

もう一つはブロンコストが開発したように細径のセンサーチューブを採用して、コンパクトなコリオリ式センサーを作り上げることです。

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mini COIR-FLOW コリオリ式流量センサー  出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

アプリケーションによっては、現実的にはあまり高い圧力での供給は望めないものもあります。
そういった場面では、センサーチューブを細径にして小型化したブロンコストのmini CORI-FLOWの独壇場となります。

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mini COIR-FLOW ML120  出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
現時点で最小流量範囲を受け持つM12/ML120シリーズでは、選択できる最小フルスケールが5g/hです。
最小測定流量はMFMの場合で0.05g/hです。
コリオリ式センサー、特に上図のような複雑な形状に曲げ加工が必要な金属チューブの細径化は限度があります。
数年前に筆者もステンレスチューブメーカーさんとお話したことがあるのですが、直径0.25mm長さ500mmのSUS316チューブが、上記条件では現状で最も細径なチューブであると説明を受けています。

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真・MFC千夜一夜物語 第377話 コリオリ式マスフローの良さが認知されてきました その5

マスフローメーター(以下MFM)、マスフローコントローラー(以下MFC、MFMやMFCの総称としてマスフロー) の中で、究極の質量流量計としてDeco推しておりますコリオリ式マスフローが最近日本でもようやくブレイクし始めました。
それはなぜでしょうか?

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コリオリ流量計の流量式にあるように、コリオリ式の測定原理には、同じ質量流量計である熱式流量計の比熱のような流体の物性に関わるものが一切含まれていません。
これは「コリオリ式は流体を選ばず質量流量を測定できる」という事を意味していて、流量計として他にないストロングポイントなのです。
なぜなら製薬や半導体のような技術革新ペースが速い産業分野では、物性が不明な新材料というものが日々登場してきます。
たとえ物性は特定できていても、温度・圧力条件が安定した状態で、流量を測定できるとは限りません。
環境条件の変化で刻々と物性が変化する流体も存在しますし、ましてや複数流体の混合流体に至っては、測定現場においてその混合比率が常に一定となるとは限りませんね?
このような用途では、流体種を特定できないと流量測定ができない熱式流量計は使いにくいのです。
かろうじて同一条件下での繰り返し性を担保するのがやっとです。
物性がわからない流体を質量流量測定できるコリオリ式流量計のメリットは限りなく大きいのです。
故にコリオリ式流量計こそが理想の質量流量計に近い存在であると、Decoは考えています。
以下にコリオリ式と熱式の比較をまとめてみました。
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しかし、理想の質量流量計に近いコリオリ式流量計にもウィークポイントは存在します。
外部環境変動影響からフリーではないのです。
まずセンサーチューブのバネ定数Ksを左右するファクターとして温度が挙げられます。
コリオリ式にはチューブの温度条件をモニターして温度補償させるための温度センサーが必要になります。
言い換えるなら、コリオリ式は温度補償が追従できないような急激な温度変動が生じる環境での使用には難があるという事になります。

また、センサーチューブを振動させる方式のため、外部環境からの振動影響も受けてしまいます。
例えば身近な機器で言えば、液体を圧送するポンプの振動です。
その為、コリオリ式流量計は大型化し、自重が重いものが多いのです。
微小流量用に小型化した場合は、制振台やインシュレーターで振動影響を押さこんだ設置を心がければいいのです。

そして現状でコリオリ式流量計の一番の弱点は、コリオリ力が発生しない、もしくは微弱にしか発生しないような密度の小さな流体、具体的には低圧条件の気体や微少流量液体の測定が難しいことです。
特に気体の流量測定では、その密度の小ささが災いして充分なコリオリ力が得られない事が多いのです。
この低圧、微小流量、気体と言った分野に注力したのが、ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のmini CORI-FLOWシリーズなのでした。
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出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

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真・MFC千夜一夜物語 第376話 コリオリ式マスフローの良さが認知されてきました その4

マスフローメーター(以下MFM)、マスフローコントローラー(以下MFC、MFMやMFCの総称としてマスフロー) の中で、究極の質量流量計としてDeco推しておりますコリオリ式マスフローが最近日本でもようやくブレイクし始めました。
それはなぜでしょうか?

今週もコリオリ式流量計に関する復習です。
コリオリ力は1835年フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(Gaspard-Gustave Coriolis)が発見した回転座標系における慣性力の一種です。
回転系に発生する慣性力としてのコリオリ力を流量検出原理とているのがコリオリ式流量計の流量センサーです。
このセンサーでは、配管系を回転させる代わりに振動を与えています。
振動と回転は異なる運動系に見えますが、回転軸に対し垂直方向からフォーカスすると、実は同じ動きをしている運動系であることが理解できます。
コリオリ式流量センサーは、回転系に発生する慣性力であるコリオリ力を取り出す目的で作られた仮想回転系と考えてもいいでしょう。
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一般的なコリオリ式流量計の構造は2本のU字型チューブを使用していて、それらを逆位相で振動させます。
流体が流れると質量流量に応じたコリオリ力が作用して、振動する2本のチューブには位相差が発生し、捻れが発生します。
流体が進入する側の左側ではコリオリ力は共に2本のチューブの内側に働き、流体が出る右側は流体の向きが180度変わって外側に働くのです。
ここで流体が流れたときの位相差を測ればコリオリ力、ひいては流体の質量流量を算出できるのですが、実際にそれをリアルタイムで測定するのは難しいです。
そこで左右のチューブが振動の中立点(捻れ角=0位置)を基準点としてそこを通過する時間差Δtを位相差として測定することが多いのです。

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】
コリオリ式流量計には、チューブを振動させるオシレーター(発振回路)と、左右の捻れを検出するピックアップ(検出回路)が配置されているのが一般的です。
しかし、中にはU字管1本で構成する事も可能であり、今回取り上げたブロンコストのmini CORI-FLOWシリーズは1本で構成されています。
コリオリ力が弱い=流体の質量が小さい場合にセンサーの感度を補うべく開発され2本チューブタイプですが、ブロンコストはそれを図にあるようなチューブの曲げを特殊な形状(通常のコリオリがUやΩの形なのに対して、Ωの上半分を折り曲げて反転させたイメージ)にすることと、光ピックアップの性能向上でクリアしているのです。 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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