EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

マスフロー

真・MFC千夜一夜物語 第437話 MFCの歴史を振り返ろう その13

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
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前回からアナログ制御とデジタル制御のお話をしています。
外部から入力された設定信号(SV)がアナログの場合、それをAD変換してデジタルPID制御回路に送ります。
センサーからの流量信号(PV)もまたアナログなので、信号をAD変換します。
両者をデジタルPID制御回路で比較して、バルブ制御信号(MV)を出力しますが、これはデジタル信号なので、アクチュエーターを駆動するためにはDA変換してアナログ信号で伝えなくてはいけません。
また、PVは流量出力として外部に取り出す必要上、ここでもDA変換してアナログ信号にしなくてはならないのです。
更に上位の制御系も同じようにデジタル制御系を持っていたとすると、そこでもまたAD/DA変換が相次ぐ事になります。

「デジタルMFCはアナログMFCより性能がよいのですか?」という質問に対してDecoは「必ずしもそうとは限らないです。」と答えて、こういった解説をする事があります。
アナログ-デジタルの変換が続くと、気になるのが変換ロス、変換が続くことによる誤差拡大です。
例えばA/Dコンバーターはアナログの信号をデジタル信号に変換しますが、その変換に関しては分解能がその性能を左右します。
分解能の性能を二進数の桁数=ビットで表します。
デジタルMFC黎明期は8ビットを使用していましたが、分解能的に充分であったとは言い難く、その後12、16とビット数は増えていき分解能はよくなっていくが、どこまで分解能を上げて行っても、アナログデジタルの変換という、均された信号の積み重ねは、誤差を拡大していくのです。
これは流量精度の問題だけではなく、温度依存性や微分非線形性誤差、積分非線形性誤差といった部分も当然拡大されてしまうということです。

とはいってもアナログMFC自体が世界的にみると絶滅危惧種であり、今やデジタルが当然の世の中です。
一部の強烈なノイズ環境ではデジタルMFCが使用できない事も以前はあったが、この分野はデジタルでのノイズ除去技術は飛躍的に改善されており、今や問題なくデジタルMFCが活躍している事例が多いのです。
デジタルMFCは非常に多機能で優秀です。
だが、デジタルMFCの優秀な性能を活かすには、やはりアナログ信号系での制御ではなく、前述のリスクを踏まえて極力アナログデジタルの変換ポイント数を減らしていく方法=デジタル通信による制御ではないか?とDecoは考えます。

マルチPIDによる低流量域の応答性改善、多点補正と実ガスデータを内蔵することでのマルチガス対応、自動調整システム対応により熟練度を必要としない製造工程の実現等、MFCの進化の上で大きなマイルストーンとなった技術がMFCのデジタル化なのです。
ただ、便利なこと、使いやすいこと=性能がよいと言うことではないと言うことです。
たとえるならアナログのレコードと、デジタルのCDやダウンロードミュージックとの差で、今でもアナログレコードを愛聴する層があることに似ていますね。
デジタルだから性能がよいと簡単に納得せず、なぜデジタルなのか?とい点に、より踏み込んだ理解を持って欲しいと思います。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第436話 MFCの歴史を振り返ろう その12

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

今回からアナログ制御とデジタル制御のお話です。
MFCの流量制御の仕組みは下図の通りです。
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 MFCでは熱式流量センサーが検出器としての役割を果たし、そこからの測定値PVと外部から与えられた目標値SVとを比較し、その偏差を無くす為に、流量制御バルブの操作量MVを決定する自動制御を行っている事、そしてその制御にはPID制御が用いられている事は本ブログで何度か解説させてもらっています。
ここではMFCの制御に関して、デジタルとアナログ両方式に関して説明しましょう。
両方式と言っても実は制御方法の根本は同じです。
アナログ制御の構成を以下の図で示します。
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こちらがデジタルMFCの構成です。

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よく勘違いされるのですが、デジタルMFCと言っても、内蔵している全てのデバイスがデジタルな訳ではありません。
一部はアナログのデバイスも使用しているのです。
センサー、アクチュエーターの入出力はアナログ信号です。
また、MFCの上位制御系からの流量設定信号に関しても、フィールドバスや産業用イーサーネット対応MFCが増えたと今でも、ここ日本ではアナログ信号(0-5VDCや4-20mA)方式も根強く存在しています。
この為、MFCの内部にはAD/DAコンバーターが搭載されることになり、二つの図を一瞥すると、デジタルMFCの方が複雑な構成になっていることがわかりますね?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第435話 MFCの歴史を振り返ろう その11

マスフローコントローラー(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

前回解説したソレノイドアクチュエーターに対して日本のMFCメーカーが多く採用しているのが、MFCの流量制御バルブで第三の方式となるピエゾアクチュエーターです。
ピエゾとは圧電素子の一種で、ある結晶構造体に機械的圧力を加え変位させると、この圧力の大きさに比例して電圧を発生する原理(=正圧電効果)を応用しています。
実際には、この逆で「ある電圧をかけることでで、結晶構造体が変位する(伸びる)」(=逆圧電効果)を利用しているのですが・・・
変位量はナノメータレベルの微小な単位です。
これでは素子単体ではバルブは、ほんの少ししか動かせないで、図にあるように複数を積層スタックすることで使用されています。
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それでも機器に内蔵できるサイズのスタックでは、マイクロメーターオーダーしかストロークは稼げないのです。
その為、決してストロークが必要な大きな流量用途で使用できるわけではないのですが、その応答性能と何よりも発生力の大きさを評価され、半導体製造装置用で多く使われています。   
MFCの流量制御バルブに用いられるアクチュエーターに関して「ピエゾはソレノイドより高速流量制御ができて優れている」という見解を持つ方にお会いすることがあります。
このブログではもう何度も解説していますが、アクチュエーター単体の応答性の差はMFCの応答性の決定的な差にはなりません。
確かに「部品としての応答性能」では、ピエゾの方がソレノイドよりも応答は速いです。
しかし、MFCが“本体内に「検出器」としての流量センサーと、流量を調節する「自動弁」、そしてセンサー信号を受け目標値との偏差を判断し自動弁を操作する「調整計」までをワンパッケージにした製品“である以上、”MFCとしての応答性能“はアクチュエーター単体性能の優劣だけでは決まらないのでしたね?

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MFCはPVとSVを比較してバルブの操作量を決めるMVを出力します。
決してバルブ単体を指示通りの位置に制御する事を目的とした機器ではありません。
MFCの応答性能のネックは、その制御の起点になる熱式センサーの速さ=流量信号出力の速さです。
流体により奪われた熱の移動を計るMFCのセンサーの応答性は原理から考えても、ソレノイド、ピエゾ両アクチュエーターの応答性よりは遙かに遅いのが現実なのです。
MFCはSVが明確に存在するが故に、流量制御を行う場合に限り、実際のセンサーの応答性よりも早い制御性能を実現しているデバイスなのです。
故にアクチュエーターの応答性の優劣だけを議論する事は、高速応答に直接つながらないというのがDecoの持論です。
ソレノイドにはピエゾにない大きなストロークから大流量に対応出来るという優れた特性があり、そこを評価されて今なお世界中で多くのMFCに採用されている事実がそれを証明しています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第434話 MFCの歴史を振り返ろう その10

マスフローコントローラー(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

MFCの流量制御バルブで、サーマルバルブの次に生まれたのがソレノイドバルブ(比例電磁弁)でした。
電磁弁は遠隔操作できる閉止用バルブとしては、色んな産業用途に製品化されていますが、MFCに搭載するそれは、少し異なる特性を要求されます。
一般的なMFC用ソレノイドバルブの構造を下図で解説します。
(これもあくまで一般的なソレノイドバルブの構造を説明するもので、特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)

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MFCで用いるソレノイドはDCソレノイドです。
KM-45のような耐腐食性能を持つ軟磁性材料である電磁ステンレス鋼を芯とし、そこに銅線コイルを巻き通電することで発生する磁力がバルブを駆動します。
その磁力でプランジャー(可動鉄芯)を引き寄せてバルブを開閉させます。
バルブは磁力の向きと反対方向へ板バネなどでの力で押し付けられ位置決めされています。
こういった基本原理・構造は、一般的なガスライン閉止用電磁弁と同じです。

ただ、閉止用電磁弁は、ある電圧をかければ全開(もしくは全閉)という動作をすればいいのですが、MFC用のソレノイドは細やかな流量制御を可能とするために、印可する電圧に伴って少しずつ開き始めて、できるだけ徐々に全開に至る特性=全開-全閉をできるだけ広いレンジで制御できるように特別に調整される必要があるという違いがあります。

ソレノイドをアクチュエーターとして採用したMFCは、サーマルアクチュエーターを搭載したそれに対し、高速応答性と大きなバルブストローク(=流量をたくさん流せる)を持っている。
故にこの方式はMFCにとって非常に扱いやすいという評価を得て、特にTylan、Unit、Brooks等の北米MFCメーカーで多くのベストセラーMFCが産まれました。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第433話 MFCの歴史を振り返ろう その9

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。


MFCの自動制御でMVによりコントロールされる存在が流量制御バルブです。
その第1号としては、米国タイラン社(現在は存在せず)のFC260シリーズやエステック(現:(株)堀場エステック)のSEC-400シリーズ等の第1世代MFCに搭載されていた「サーマルバルブ」が挙げられます。
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FC-260シリーズ(当時生産していた日本アエラ(株)カタログから引用)

このバルブの構造を下図で示しますね。(あくまで一般的なサーマルバルブの構造を説明するものであり、特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)
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本バルブ方式は一般的なニードルバルブと似通っており、ニードルが前進してオリフィスを塞ぐ構造のバルブです。
中央のアクチュエーター部は熱膨張係数の高い材質で構成されており、周囲もしくは内部にヒーター線が設置されています。
ヒーターを加熱すれば、アクチュエーターは熱膨張して伸びる方向に変形し、ニードルを閉鎖方向へ動かします

このアクチュエーターには構造上の弱点があります。
「熱して延びる」、「醒まして縮む」という動作原理である為、高速動作ができないのです。
また、ニードルをオリフィス部に押しつける構造上、金属同士がぶつかることでパーティクルが発生してしまいます。
それを避けるには少しニードルを少しオリフィスから浮かせた構造を採るのですが、その為に閉止させても出流れが発生してしまいます。
また、MFC二次側が真空の場合、伸びたアクチュエーターの復元させる力=ニードルを引っ張り上げる力が、真空の引っ張り込む力に負け、ニードルバルブがオリフィスに噛み混んだ状態で固着してしまい、ガスが全く流れなくなることもありました。
それと、半導体製造装置で用いるようなガスだと、高温加熱したアクチュエーター部が接ガスするため、分解してしまうガス種もあり、そういったガス種での使用が憚られたのです。
 
 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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