EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

マスフローメーター

真・MFC千夜一夜物語 第433話 MFCの歴史を振り返ろう その9

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。


MFCの自動制御でMVによりコントロールされる存在が流量制御バルブです。
その第1号としては、米国タイラン社(現在は存在せず)のFC260シリーズやエステック(現:(株)堀場エステック)のSEC-400シリーズ等の第1世代MFCに搭載されていた「サーマルバルブ」が挙げられます。
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FC-260シリーズ(当時生産していた日本アエラ(株)カタログから引用)

このバルブの構造を下図で示しますね。(あくまで一般的なサーマルバルブの構造を説明するものであり、特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)
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本バルブ方式は一般的なニードルバルブと似通っており、ニードルが前進してオリフィスを塞ぐ構造のバルブです。
中央のアクチュエーター部は熱膨張係数の高い材質で構成されており、周囲もしくは内部にヒーター線が設置されています。
ヒーターを加熱すれば、アクチュエーターは熱膨張して伸びる方向に変形し、ニードルを閉鎖方向へ動かします

このアクチュエーターには構造上の弱点があります。
「熱して延びる」、「醒まして縮む」という動作原理である為、高速動作ができないのです。
また、ニードルをオリフィス部に押しつける構造上、金属同士がぶつかることでパーティクルが発生してしまいます。
それを避けるには少しニードルを少しオリフィスから浮かせた構造を採るのですが、その為に閉止させても出流れが発生してしまいます。
また、MFC二次側が真空の場合、伸びたアクチュエーターの復元させる力=ニードルを引っ張り上げる力が、真空の引っ張り込む力に負け、ニードルバルブがオリフィスに噛み混んだ状態で固着してしまい、ガスが全く流れなくなることもありました。
それと、半導体製造装置で用いるようなガスだと、高温加熱したアクチュエーター部が接ガスするため、分解してしまうガス種もあり、そういったガス種での使用が憚られたのです。
 
 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第432話 MFCの歴史を振り返ろう その8

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

前回までMFCの要である流量センサーの技術動向を振り返りました。
流量を測定するというのはMFCが流量制御する為の第一段階であり、ここでつまずいては正確な流量制御はできません。
そして、今回からはMFCの流量制御のもう一つの要である流量制御バルブを用いた自動制御に関して解説していきます。
そもそもMFCが使われるようになる前、流量制御は下図のようなフロート式流量計とニードルバルブを組み合わせたものが主流でした。
 
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人間が検出器である流量計のフロートの位置(流量値)を目視で読み取り、頭脳で目標値である流量と比較判断して、ニードルバルブの開度を手で調整することで制御を達成します。
人間が目視し、判断し、操作することで調整計としての役割で介在するプロセスであり、このような制御系は手動制御という形の立派な制御の形なのです。
手動制御の問題点は、そこに人間が介在しなくてはいけないことです。
人間は24時間同じパフォーマンスを発揮し続けることが難しいですし、熟練度により目視から判断の過程で差が生じます。
そういった手動制御の問題を解決するには、自動制御が必要となります。
流量計を流量信号を出力できるもの、例えばマスフローメータ(以下 MFM)に変えることで、人間の介在しない自動流量制御を行うが下図です。
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自動制御に必要となるのは、人間の代わりに比較、判断、操作をこなす調整計です。
調整計は人間の目と頭脳と手の代替機能を持っていますが、全く同じ動作をする訳ではありません。
例えばフロート式流量計は、人間の目で読み取るというアクションが必要なため、検出値を調整計で処理するための信号化が難しいのです。
その為MFMのような流量を電圧や電流信号に変換できるデバイスが必須とされました。
このMFMと自動調整バルブ、そして調整計を一つのパッケージにまとめたのがMFCなのです。

MFCはそれ単体で、熱式流量センサーが検出器としての役割を果たし、そこからの測定値(Process Variable 以下PV)と外部から与えられた目標値(Set Variable 以下SV)とを比較し、その偏差を無くす為に、流量制御バルブの操作量(Manipulative Variable 以下MV)を決定する自動制御系なのでしたね?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第431話 MFCの歴史を振り返ろう その7

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回は.熱式流量センサー MEMS型のお話です。

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熱式流量センサーのMEMS型は、流体に直接センサーを接触させる方式です。(上図)
その為、流体との熱のやりとりという側面では、インサーションタイプと同様非常に効率が良く、応答性能では巻線式を圧倒します。
当然感度も良いので、SN比でも優れた特性を発揮するセンサーもあり、通常の巻線式ではターンダウンレシオ1:50程度なのを10倍以上の値をカタログスペックとしているメーカーもあるくらいです。
後発で1990年代後半から2000年代に市場へ導入されただけあって、デジタル制御技術の恩恵を被り、非常に優れた性能を発揮するものが多いです。
ただ、勘違いしてはいけないのは、MEMSというのはあくまでアナログのヒーター、測温抵抗体を小型にして半導体チップに実装できるようにしたものであり、アナログデバイスである事では他の2方式と変わりはないという事です。
その後段で信号をいかにロスが少なくデジタル化して用いるかで、MEMSタイプの性能には雲泥の差が産まれます。
目安程度の流量センサーや、フロースイッチ的な用途にとどまるものから、本格的な流量測定用途の流量計まで、種々の“MEMS流量センサー“と名乗る製品が市場にはあふれているので要注意です。
MEMS型の弱点は、ガスに直接触れるという利点の裏返しで、使用できる流体種に制限があることです。
腐食性流体はもちろん、図にあるダイヤフラム構造上、その直下の空間に残留するとまずい毒性ガス、バリア膜で用いているSi系の膜と反応する流体にも使用は難しいのです。
また、MEMSセンサーを固定する樹脂材料は、そこからのアウトガスを気にする分析用途では使用が難しいこともあります。
また、MEMS型といっても、分流構造とは無縁ではありません。
巻線型ほどの分流比ではないにしても、流量レンジによっては分流構造を持たねばならないものが多く、それらは前項で触れた異物混入による分流比異常の問題が付きまとうし、MEMSセンサーそのものに異物が付着した場合のトラブルも考えられるのです。
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



真・MFC千夜一夜物語 第430話 MFCの歴史を振り返ろう その6

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回もMFCの熱式流量センサーの巻線型のお話です。
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巻線型の大きな問題点は層流素子(バイパス素子ともいう)による分流比の大きな分流を強いられる構造にあります。
マスフローのセンサー構造を説明した上図でわかるように、巻線型流量センサーは必ずしも流体の全量を測っている訳ではありません。
その為、この方式を「巻線型分流測定方式」とDecoは呼称しています。
どんなフルスケール流量のマスフローでも、そのセンサー管に流れる量は入口で分岐され10mL/min程度なのです。
残りの流量は層流素子側に流れています。
層流素子自体は一定の量をセンサー管に正確に分流するという役割を果たしながら、センサー管内部に層流を作る為に、過剰な量の流体をバイパスさせる仕組みです。
なぜならば熱式センサーが正確に流量を測定するためには、センサー管内に層流が生じる状態(層流運動状態)であることが必要条件だからです。

層流時の流速分布は中央部を頂点とした放物線状になります。(ハーゲン・ポアズイユの流れ) それに対して流速が上がって乱流状態になると、流速分布は中央部で均一で側壁部直前で急激な速度勾配が発生する形となります。
乱流状態では、そこで何が起こっているかわからない状態であり、更にその流れがいかなる状態に至るかを予測するのが大変難しい状態なので、熱式センサーの肝である上流から下流への熱の移動が正確行われているか?を捉えるのが難しくなると考えて下さい。

この分流構造では、センサー管が0.35~0.8mm程度の細い管状に設計され、層流素子もそれに準じる管状流路が大量に配置される構造となります。
なぜなら層流と乱流の境界となる臨界レイノルズ数は、流路直径(d)が決定するからです。
そうするとよほど清浄な流体を流さない限り、この分流構造の流路に異物が詰まらないという保証はありません。
 
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異物が詰まるとどうなるか?「詰まって全く流れなくなるなら問題だけど、少しくらい大丈夫。MFCなら自動で流量制御してくれるから・・・」と誤解しがちですが、そうではありません。
分流構造への異物介在はマスフローでも最大クラスのトラブルを発生させてしまうのです。
異物が混入して、センサー管か層流素子の一部の流れを妨げただけで、製品の出荷流量調整時の正常なセンサー管と層流素子との分流比率が崩れてしまい、測定流量と実流量の間に10%以上の誤差が生じてしまうことになります。
MFCは設定値と流量値が一致するように制御しているのみで、流量値と実流量がずれていてもそれを検証する手段は持っていないので、そのまま延々と制御してしまいます。
ある日突然、異物が入り込んだだけで、「カタログ表記で流量精度が何%で・・・」等と議論していた話が吹っ飛んでしまう事態が起きてしまうのです。
それだけでなく大気圧より若干低い負圧領域=Sub-Atmospheric Pressure条件でのMFMの流量器差も指摘されています。
また、構造上、圧力損失が大きくなる問題もありますね。
ダスティな流体を流す用途や、吸引やブロワ等の低圧力損失で大流量を流す用途では、全量測定のインサーションタイプに後れを取る理由は、こういった分流構造に起因するのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第429話 MFCの歴史を振り返ろう その5

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回もMFCの熱式流量センサーの巻線型のお話です。
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巻線型の三線式流量センサーは定電流回路を組むことで、流体が流れた際に上流側温度(T1)と下流側温度(T2)の変化が起き、ΔTが生じ、それをブリッジ回路で取り出すという基本に忠実な回路で構成です。
二線式の多くは対になる測温抵抗体のT1,T2を常に一定にする定温度方式です。
この流れは熱線式風速計が定電流制御方式から定温度制御方式に移行したのと全く同じでフィードバック制御で応答性能が向上する事を期待しての回路構成ですね。
つまり二線式、三線式という見かけの構成だけで性能の優劣を論じることは意味がないという事なのです。
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出典:ブロンコスト・ジャパン(株) *EZ-Japan黒田 加筆

定温度方式は、現行の巻線型センサーが多く採用しています。
その理由は、熱式、特に巻線型の弱点である応答性能を少しでも改善するためです。
そもそも熱の移動を捉える熱式センサーの応答は決して速くはありません。
圧力センサーベースの流量測定モジュールが応答性を売りにする際に、熱より圧力の検知は10倍以上速いという宣伝をしている事からもわかりますね?(でも、圧力を検知するのは10倍速くても、流量をその速度で測定している訳ではないのですが・・・)

さらに巻線型は流体に直接触れていないという、応答性と感度の点で非常に不利な構造をしています。
よく筆者は、「厚いゴム手袋をした手を風呂の湯船に突っ込んで湯温を測っているようなものだ」という喩えを用いて説明することがあります。
この問題は、巻線型の致命的な弱点なのですが、逆に「直接触れないことで、半導体プロセスで使用される腐食性流体に対応できたと」いう怪我の功名的な成功を収めることができたことを見逃してはいけません。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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