EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

信憑性

真・MFC千夜一夜物語 第266話 コンバージョンファクターは1つではない その3

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」 201812月号(11/26発売)では、マスフローのゼロシフトに対するゼロ調整に関して解説しています。

本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

 

さて、本物語のラスボスの一つCFの信憑性”との戦いの最中です

前回はCFへの温度影響を確認しましたが、今回は圧力影響に関してです。

Bronkhorst HIGH-TECH B.V.(以下ブロンコスト)WEBで提供しているFLUIDATonthe Net”(以下FLUIDAT) を使って今度は、ガスをアルゴンにして解説しましょう。

 
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上図ではアルゴンガス、FS100SCCMMFM での比較です。
今回は圧力条件(流体の供給圧)での比較となります。
マスフローの一般的な構造を下図に示しますが、ここでいう圧力は流量センサー管にかかる圧力になるので、一次圧のことを言い、MFCの際の二次圧や差圧は関係ありません。

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*以前、UNIT社とそのフォロワーにあったMFC二次側に流量センサーを置く=流量制御バルブ→流量センサーという特異なレイアウトのMFCにとっては、ここは二次圧となるのですが、これではセンサー管内の圧力がプロセスで変動しやすくなり、あまり好ましくなかったのではないかとDecoは思っています。)


0.1MPa
条件と、選定したMFMの圧力定格最大値である10MPaで比較してみましょう。
結果は0.1MPa1.387100FSという、我々マスフロー業界の人間としては、CF表で馴染みのあるアルゴンのCF1.4に近い値となったのですが、10MPaだと1.181100FSという驚きの数値となるました。
更に高い圧力でのCF変化を調べるべく、モデルを変えて定格40MPaまで耐えられるEL-FLOW F-131Mを選んでみます。

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上図にあるように、40MPaでのCF0.9587100FSと、これはもうアルゴンのCFとは思えない値まで下がっています。
前回の温度変化の影響よりも、気体が圧縮されることで密度が変化する圧力変化影響が非常に大きいのが見て取れます。

 

 「これほど極端な高圧条件でマスフローを使わないので問題ない。」というユーザーが当然多いと思います。
因みにMFM F-111B-100の真空10kPaA)での値は1.391100FSでした。
0.5MPa
での値は1.378100FS 0.8MPa1.371100FSですから、例え高圧=1MPa未満であるからといって、CFへの圧力影響が皆無ではないことを、頭に入れておいてくださいね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第264話 コンバージョンファクターは1つではない その1

 

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌

201812月号(11/26発売)では、マスフローのゼロシフトに対するゼロ調整に関して解説しています。

本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

 

さて、2018年の最後のシリーズになるのは、業界の偉大な先達が「マスフロー(マスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)の総称)にとっての、パンドラの箱」と喩えられた程の禁忌・・・というのは大げさかもしれませんが、それ程の難解かつ悩ましい内容であるコンバージョンファクター(CF)に関するお話です。

 

熱式流量計は、流体の物性である比熱をその流量式に組み込んでいます。

その為、同じ質量流量計に分類されるコリオリ式流量計のように流体が何であるか?不明な状態では正確な流量測定ができない弱点があり、その意味で「限定した条件下での質量流量計です」というお話は何度かこのブログで触れています。

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「でも、流体種が特定できればCFによる換算で校正流体との感度比(=流量比)を補正できますよね?」というご意見があるかと思います。

確かにその為のCFなのですがが、実は基準ガスに対する各流体の感度比を表すCFは一つの流体に付き一つとは限らないのです。

流体の温度、圧力による物性の変化だけでなく、分流構造を採るマスフローのセンサー管と層流素子(バイパス)との分流比が、流量レンジと圧力条件との組み合わせで変動する影響と思われるものもあり、一つの流体でも複数のCF=マルチCFで管理せざるを得ないのが、マスフローの現状なのです。


この事を認識されているユーザーは、少ないかと思います。

マスフローに熟達した配管システム設計の方でも御存知でなかったり、ライトユーザーに至っては、メーカーの出していた一対一のCF表を鵜呑みにする(鵜呑みにしてしまっても仕方ないと思いますが・・・)ばかりであった為に、マスフローの指示する値と実ガス流量値への隔たりへの不信感だけが世の中に広がっていってしまいました。

Decoはこの状況を憂いていた人間の一人でした。

ただ、このパンドラの箱を開ける勇気がなかったのも事実です。

なぜならこの問題は、CFの信憑性という実ガス表記されたマスフローの示す流量のナーバスな部分をお話しする事であり、あまり事前知識がない方にご説明すると、マスフローという製品そのものへの不信感につながってしまうからです。

そこで、まずマスフローを理解いただく事が先だという事で、本連載を続けてきました。

263話を終え、そろそろこの物語のラスボスの一人であるこの問題に触れてもいいかな?と思いましたので、勇気をもって書いていきますね。

幸い強力な助っ人もいます。

 

現在、Decoの知る限りマルチCFに関して、積極的に情報発信し、ユーザーの啓蒙を計っているのはBronkhorst HIGH-TECH B.V.(以下ブロンコスト社)です。

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今回のシリーズでは、彼らがWEB上で世界に公開しているCF計算ツールであるFLUIDATⓇ on the Net”(以下FLUIDAT)を教材に、マルチCFが必要となる事例を挙げて、解説していこうと思いますので、宜しくお願いしますね。

 

あ・・・前もって言っておきますが、このシリーズでラスボスを倒すところまではいきませんので・・・倒せるのはやはり1001話目でしょうか?

 

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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