分流比
最近、Web-MTG等でご質問頂く内容で、これは!っと思ったものをご紹介しておきますね。
マスフローコントローラーの場合、機器の構成は以下の図のようになっているものがほとんどです。
ですが、よく見るパージメータの世界で多いのも・・・
これを上部ニードル配置と言い、逆にバルブが上流にいる下部ニードルと言う配置もあります。
計装の世界では逆に流量調整バルブが前で、流量計(マスフローメーター=MFM)が後ろと言う場合もあります。
「前か?後か?どちらが正しいのでしょうか?」
先日、このようなご質問を頂く機会がありました。
答は、「どちらでも良いのですが、気を付けて頂きたい点がございます。」となります。
流量計はどこで流れている値を読みたいかによりますので、流量計の設置はその原則で配置すべきです。
ですが環境条件によってはその配置を取る事で、流量計の測定結果にある影響が出る可能性があることを考慮しなくてはなりません。
原則として流量計を置いた側の圧力影響や流路形状による影響を流量センサーは強く受けるとお考え下さい。
例えば流量計(MFM)が下流にある場合です。
流量計の二次圧が大気開放ならば問題はありませんが、例えば真空の場合にはまずい場合があります。特に熱式の流量センサーを搭載したMFMで分流測定構造を採っているものです。
これはガスが希薄になる影響を受けて、センサーチューブと層流素子(バイパス)との間の分流比が変動を始めるせいではないかと推論しています。
この影響はインサーションタイプやMEMSタイプで全量測定タイプではまだ起きにくい傾向があります。
ただ起きにくいと言っても流路のガス原子が希薄になる事で値自体に変動は生じてきますが、圧力依存特性として、まだ補正値で管理できる範囲でした。
このような流量センサーの場合、流量センサーは前に置き、流量制御バルブで真空と仕切ってしまう配置がベストでしょう。
MFCがまさにこの配置を取る事が多い理由は、MFCの販売対象業界が半導体製造装置向けで、MFCの二次側は装置のチャンバーであり、そこは高真空に設定されることが多いからなのです。
逆に加圧系の装置ならば、流量計を流量制御バルブ二次側に配置することも多くみられます。
ただ、ここで気を付けて頂きたいのは、流量計の種類によっては、配管径の5~10倍の曲がりや径が変動しない穏やかな流れの直管部を必要とすることです。
流量制御バルブの構造上、確実に流路を絞りますから、下流へ送られる流れは、決して穏やかなものとは言えないでしょう。
この乱れた流れを整流する仕組み無しで、流量センサーを流量制御バルブの下流に配置すると、流量計の測定値に悪影響を及ぼす場合もあるという事なのです。
2019年 亥年 新年あけましておめでとうございます。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
本年もマスフローコントローラ(MFC)&マスフローメーター(MFM)に関する記事を定期的にアップしていきたいと思っております。
どうぞ当ブログを宜しくお願いいたします。
2019年一回目の更新は、真・MFC千夜一夜物語 で、ラスボスCFとの戦いの第4回目をお届けします。
CFへの流量レンジ影響
第4回目ではマスフロー(MFC&MFMの総称)の流量レンジを変えることでのCFへの影響を確認してみましょう。
ブロンコスト社(Bronkhorst High-Tech B.V.)で、流体をアルゴンガスの 大流量MFMモデルでF-113AC-1M0を選定して、このモデルの流量下限フルスケールのFS600SLMと、上限のFS2500SLMを選んでみました。
それぞれ空気換算すると400SLM~1670SLMです。
ブロンコスト社で大流量モデルはコンプレッサーエアーが基準流体になります。
この流量レンジで純度の高い窒素ガスを校正用にドバドバとはは使いたくないですよね。
両レンジでCFが大きく変化しているのが下図でわかります。
600SLMでのCFは1.422@100%FS、ところが2500SLMでは1.562@100%FSです。
興味深いのは、FS2500SLMモデルの 250SLM@10%FSでのCFは1.404であることです。600SLMモデルの同じ流量ポイントとなる250SLM@41.7%FSで計算するとやはり1.404なのです。
CFの変化はアルゴンの流量レンジが大きくなるにつれ、1.422→1.568と大きな値に変化していきます。
今度は流体を変えて水素で見てみましょう。(下図)
ここでまた不思議な現象が確認されます。
水素ではアルゴンと逆の現象が起きるのです。
モデルの最小レンジであるFS400SLMでのCFは0.9766@100%FS、これが最大レンジであるFS1400SLMでは、なんと0.8735@100%FSとなっています。
アルゴンとは逆に流量レンジが大きくなるにつれ、CFは0.9766→0.8735と小さくなってしまうのです。
実はDecoはこのマルチCFの罠にしっかり嵌って、失敗をしたことがあります。
なまじっか経験が長い為に、“空気と水素のCFは、ほぼ近似していて1である。”というシングルCF時の知識で、「空気換算1670SLMのF-113AC-1M0が作れるのだから水素も同じはず・・・」とFLUIDATで確認せずに顧客仕様を決めてしまったことがありました。
蓋を開けたら0.8735倍の1459SLMしか流れないわけで、平謝りして納入前に流量レンジをFS1400SLMに下げてもらったのです。
まさに“生兵法は怪我の元”ですね?お恥ずかしい限りです。
今回の比較で興味深いのは、アルゴンも水素も25%FS程度の低流量域から100%FSまで大きくCFが曲がっていることです。
これは巻線式センサーで分流構造をとるマスフローにはつきまとう“分流比”の変動が要因と考えられます。
一般的な巻線型のマスフローで採用されている熱式センサーは、測定対象である流体を全量測っているわけではありません。
流量センサーに流れるのは5~10ml/min程度の流量であり、残りはすべて層流素子(バイパス)部を流れるように設計されています。
これはセンサー管内の流れを層流で維持する為であることは、今までの連載で何度か解説しましたね?
ここで問題になるのは、このセンサー管と層流素子の分流比率です。
その分流比率は、どんな場合でも一定にはならないのです。
高圧から真空(subatmosphericレベル)までの圧力条件、微小流量から大流量までの流量レンジで一定の分流比の維持は難しいのです。
また、ガス種により、アルゴン、二酸化炭素のような重いガス、水素のような軽いガスでは、自ずと校正に使用する基準ガスである窒素や空気とは異なってきてしまうのですね。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan
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