EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

千夜一夜物語

真・MFC千夜一夜物語 第440話 MFCの歴史を振り返ろう その16


マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
それでは、日本はどうだったのでしょうか?
今や半導体向けコンポーネンツ、特にMFCといえば日本産のイメージを持つ読者も多い思います。
現に半導体製造装置向けMFCシェアの上位は堀場エステック、フジキン、プロテリアルといった日本メーカーが占めています。

 240715_01

特に堀場エステックは大きなシェアを維持しており、半導体に拘らなければ一般工業向けの雄であるブロンコストが世界シェア2位でそれに次ぐ形です。
ここまで日本のMFCメーカーが成長した理由は何でしょうか?
遡ると、前章で振れたタイランのFC-260シリーズ全盛期に戻ります。
1980年代の話です。
ここでタイランの日本法人は日本タイランとして、国内でのMFC生産供給で独占的な市場を形成していました。
当時のMFCの販売価格は今のそれしか知らない人に話すと、目が点になってしまうくらいの高額でした。
そこに目を付けたのが、現堀場エステックの前身である(株)スタンダードテクノロジです。
当時排ガス分析装置向けの校正用標準ガス濃度の統一基準を確立すべく堀場製作所、東芝ベックマン、島津製作所、高千穂化学工業、電気化学計器の出資で新会社スタンダードテクノロジが設立され、MFCを搭載した標準ガス発生器の販売を行っていました。
当然使用していたのは タイランのFC-260シリーズです。
しかし、コスト、性能、納期と言った問題があり、スタンダードテクノロジは自社開発に踏み切り、1980年国産初のSEC-Lが発表されたのです。
写真4
日本初の純国産MFC 出典:EAJ Journal 2017. 11 No. 159より

ちなみにSEC-Lは筆者もみた事が無いので、どなたか実物を見せて頂けたら幸いです。
このMFCがSEC-400シリーズを経て国内半導体メーカーに採用されるようになったのが、MFC王国日本の始まりだったのです。
その後スタンダードテクノロジはエステック、堀場エステックへと社名を変えながら、世界で初めてピエゾアクチュエーターを搭載した量産MFCであるSEC-4000シリーズで大きく飛躍していく事になるのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第439話 MFCの歴史を振り返ろう その15


マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。


MFCのオリジンの件はひとまず横に置いておき、MFCのその後の歴史の話をしましょう。
最初のMFCと言える製品を世に送り出したのは米国のタイランです。
 
写真1
出典:当時の日本アエラ(株)カタログより
写真のFC-200がそれです。
その後、これをベースに発売されベストセラーとなったのが、FC-260シリーズです。

写真2

出典:当時の日本アエラ(株)カタログより

前に解説したようにサーマルアクチュエーターを搭載した本格的な流量制御モジュールであり、半導体製造装置をメインに分析機器等、多くの装置に採用されました。
それに対してユニットもソレノイドアクチュエーターを搭載したMFCを開発し、この2社に流量計測の老舗ブルックスを加えた3社がMFCの市場を形成していったのです。
そこにMKSのようなキャパシタンスマノメーターを主力とするコンポーネンツメーカーも参画し、1990年代までは米国市場はMFC発祥の地として賑わったのでした。
 
だが2000年代に入ると、米国MFCメーカーは急激な企業淘汰の進行と、半導体産業に過度に依存する体質の脆弱さを露呈することになります。
半導体製造装置業シェア1位のAMAT(Applied Materials)で正式採用され長年シェア1位を堅持してきたユニットは、MFCの元祖であるタイラン直系のタイランジェネラルを買収していたマイクロリス(Mykrolis)から MFC部門を買収しキネティックスとなります。
更に最終的にセレリリティ(Celerity)となり、世界シェアトップの座に君臨していました。
ところが、さらなる拡大を志したが薄利販売と、買収したタイラン系を合わせた多種多様な製品ラインアップの整理失敗による在庫過多で経営体質は悪化し、リーマンショック(Financial Crisis)後に崩壊してしまう事になります。

世界シェア1位のメーカーの崩壊はショッキングでした。
崩壊したセレリティをブルックスの当時の親会社であったAIP(American Industry Partners)が買収することでUSA の三大MFCメーカーはブルックスブランドに統一されることになるのですが、ブルックス経営陣はセレリティ、タイラン系製品の全てを継承するのではなく、ごく一部のみの継承を選んだため、市場の反発は大きかったのです。
本来合算すれば40%超のシェアを得たはずが、そのシェアは急落することとなります。
それでも北米半導体製造装置メーカーに標準採用されたPI機能を持つ第5世代MFCのベストセラーであるGFシリーズが販売に貢献し、現在でも半導体向けMFCの世界シェアの4強に食い込んでいるのいでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第438話 MFCの歴史を振り返ろう その14

 マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

MFCメーカーの変遷は激しいものがありました。
その背景を技術の流れを読むことで、解き明かしていきたいと思います。
まずはMFCの誕生まで遡ります。
熱式流量計が産まれ、それが流量制御バルブ、調整計と一体となったMFCの起源に関しては諸説があります。
Decoが業界に入った頃に、教えられたのは「MFCはNASAで産まれた。」というものでした。
当時のアポロ計画で使用する為に、熱式流量計が開発され、そこからMFCという姿になったという説です。
米国MFCメーカーの元祖的な存在のユニットインスツルメンツ(Unit)、タイラン(Tylan)、そしてブルックス(Brooks)の創業者がそれに参加していたというまことしやかな話まで聞かされたことがあります。
ただ、今から考えるとそれにはかなり矛盾点もあり、いずれかの形でこれらのメーカーに関係した人間がNASAやアポロ計画には関与したのだろうが、いささか虚飾誇張が入っているように思えるのです。
この3社の中で唯一現在も残っているブルックスのHPには「1970年代にアポロ宇宙船の酸素量の精密測定に初めて使用されたMFCは、タイランRC-260という呼名で市販されるようになりました。これによって半導体メーカーは、プロセスガスの自動制御を初めて手中にし、処理量と歩留まりを産業レベルに引き上げることができました。」との記述があります。
宇宙飛行士向けの酸素量測定がNASAで用いられたMFCというか熱式流量計のオリジンとしてDecoも教えられましたが、これはあくまでMFC(上図)としてではなく流量測定用のマスフローメーター(以下MFM:下図)としてのアプリケーションではなかったのかと・・・
 
 240122_02
240122_01


なぜなら呼吸用の空気(ある定量の酸素を含む気体)の流量制御をMFCで行うというのは、現在の医療用酸素濃縮装置でも主流ではないからです。
理由はこの連載の愛読者には思い当たるところがあるかと思いますが、人の命がかかる呼吸という行為で送り込まれる流量がオーバーシュートやアンダーシュートなどの制御不良を起こしたとしたらどうなるでしょう?
二十年以上前に「酸素濃縮器にMFCを使ってみたい」という顧客要望にDecoは首を横に振った記憶があります。
その理由は「直接生命を左右する用途にはMFCを使わない」というのがDecoの長いMFC営業生活での信条だったからなのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第437話 MFCの歴史を振り返ろう その13

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
240624_01

前回からアナログ制御とデジタル制御のお話をしています。
外部から入力された設定信号(SV)がアナログの場合、それをAD変換してデジタルPID制御回路に送ります。
センサーからの流量信号(PV)もまたアナログなので、信号をAD変換します。
両者をデジタルPID制御回路で比較して、バルブ制御信号(MV)を出力しますが、これはデジタル信号なので、アクチュエーターを駆動するためにはDA変換してアナログ信号で伝えなくてはいけません。
また、PVは流量出力として外部に取り出す必要上、ここでもDA変換してアナログ信号にしなくてはならないのです。
更に上位の制御系も同じようにデジタル制御系を持っていたとすると、そこでもまたAD/DA変換が相次ぐ事になります。

「デジタルMFCはアナログMFCより性能がよいのですか?」という質問に対してDecoは「必ずしもそうとは限らないです。」と答えて、こういった解説をする事があります。
アナログ-デジタルの変換が続くと、気になるのが変換ロス、変換が続くことによる誤差拡大です。
例えばA/Dコンバーターはアナログの信号をデジタル信号に変換しますが、その変換に関しては分解能がその性能を左右します。
分解能の性能を二進数の桁数=ビットで表します。
デジタルMFC黎明期は8ビットを使用していましたが、分解能的に充分であったとは言い難く、その後12、16とビット数は増えていき分解能はよくなっていくが、どこまで分解能を上げて行っても、アナログデジタルの変換という、均された信号の積み重ねは、誤差を拡大していくのです。
これは流量精度の問題だけではなく、温度依存性や微分非線形性誤差、積分非線形性誤差といった部分も当然拡大されてしまうということです。

とはいってもアナログMFC自体が世界的にみると絶滅危惧種であり、今やデジタルが当然の世の中です。
一部の強烈なノイズ環境ではデジタルMFCが使用できない事も以前はあったが、この分野はデジタルでのノイズ除去技術は飛躍的に改善されており、今や問題なくデジタルMFCが活躍している事例が多いのです。
デジタルMFCは非常に多機能で優秀です。
だが、デジタルMFCの優秀な性能を活かすには、やはりアナログ信号系での制御ではなく、前述のリスクを踏まえて極力アナログデジタルの変換ポイント数を減らしていく方法=デジタル通信による制御ではないか?とDecoは考えます。

マルチPIDによる低流量域の応答性改善、多点補正と実ガスデータを内蔵することでのマルチガス対応、自動調整システム対応により熟練度を必要としない製造工程の実現等、MFCの進化の上で大きなマイルストーンとなった技術がMFCのデジタル化なのです。
ただ、便利なこと、使いやすいこと=性能がよいと言うことではないと言うことです。
たとえるならアナログのレコードと、デジタルのCDやダウンロードミュージックとの差で、今でもアナログレコードを愛聴する層があることに似ていますね。
デジタルだから性能がよいと簡単に納得せず、なぜデジタルなのか?とい点に、より踏み込んだ理解を持って欲しいと思います。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第436話 MFCの歴史を振り返ろう その12

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

今回からアナログ制御とデジタル制御のお話です。
MFCの流量制御の仕組みは下図の通りです。
240617_01

 MFCでは熱式流量センサーが検出器としての役割を果たし、そこからの測定値PVと外部から与えられた目標値SVとを比較し、その偏差を無くす為に、流量制御バルブの操作量MVを決定する自動制御を行っている事、そしてその制御にはPID制御が用いられている事は本ブログで何度か解説させてもらっています。
ここではMFCの制御に関して、デジタルとアナログ両方式に関して説明しましょう。
両方式と言っても実は制御方法の根本は同じです。
アナログ制御の構成を以下の図で示します。
 240617_02
こちらがデジタルMFCの構成です。

 240617_03

よく勘違いされるのですが、デジタルMFCと言っても、内蔵している全てのデバイスがデジタルな訳ではありません。
一部はアナログのデバイスも使用しているのです。
センサー、アクチュエーターの入出力はアナログ信号です。
また、MFCの上位制御系からの流量設定信号に関しても、フィールドバスや産業用イーサーネット対応MFCが増えたと今でも、ここ日本ではアナログ信号(0-5VDCや4-20mA)方式も根強く存在しています。
この為、MFCの内部にはAD/DAコンバーターが搭載されることになり、二つの図を一瞥すると、デジタルMFCの方が複雑な構成になっていることがわかりますね?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
QRコード
QRコード
Decoへのメッセージ

名前
メール
本文
記事検索
タグクラウド
タグ絞り込み検索
  • ライブドアブログ