もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年6月号(5/25発売)は、コリオリ式マスフローメータ(MFM)を用いたマスフローポンプ(質量流量ポンプ)の解説ですので、本解説と合わせてお読みいただけたらと思います。

 前回の補足になります。
MFM特有の問題として、もう1つあります。
MFMを真空条件で使用した場合の流量の器差問題です。
これはCFの解説でも少し触れたことがありますが、MFMの場合、二次側が真空条件で使用すると、MFCのようにバルブオリフィスでの圧力損失がないので、そのままセンサー管内部のガス圧が真空となり、ガス密度が下がり、大変希薄な状況となります。
その場合、流体固有の物性であり、熱式流量計のCFを決定する定圧比熱への影響だけではなく、巻線型分流構造だとセンサー管と層流素子との分流比自体も分流構造の差に準じて変化していく傾向があり、器差が大きいというデータを以前採ってもらったことがあります。
この問題はMEMSセンサー搭載型分流構造タイプのMFMでも確認されてはいますが、こちらは真空度の変化に追従して綺麗なカーブを描いたので、後段の装置側で補正可能というお客様での結論が出ました。
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この差はセンサー管に流れる流量と層流素子(バイパス)を流れる量が巻線タイプとMEMSタイプでは10倍以上MEMSの方が大きい、つまり層流素子との分流比率が小さかった事が起因していると思われ、先の分流構造が一因であるという、筆者の推論を裏付ける結果と考えています。
現時点での対策は真空条件のチャンバー側とMFMの間に絞りを設けてMFM内部を与圧にするしかなく、それが不可能ならば層流素子との分流比が小さい、もしくは全量測定構造のものを使う事で対応は可能です。
もし分流比が大きい巻線型MFMを使うならば、繰り返し性能のみを担保として、あくまで計測用途で使用することになります。
この真空下での流量測定という分野は、ラミナーフロー流量計などの圧力式でも器差の検討が必要な分野です。
今後の進展をこのブログで報告したいと思っています。

 今回はMFCに比べマイナーな存在のMFMを運用する上での問題を解説しました。
熱式流量計として、コリオリ式と並ぶ質量流量計に属しながら、熱式マスフローは温度圧力条件での制約が多く、また流体固有物性である定圧比熱が固定できないと実流量を測定するのは難しいという問題を抱えています。
しかし、質量流量計として完全に思えるコリオリ式は圧損を大きくとらないとセンサーで発生するコリオリ力が弱く流量測定が難しくなる面があり、真空下での気体流量測定にはやはり熱式のMFMに期待がかかるところなのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan