MFC&MFMの最大のトラブルは、センサーチューブとバイパス(層流素子)の分流比が何らかの原因で初期値より変化することという説明から、実際のアプリケーションでのトラブル事例を二つ見て頂きました。
「じゃあ、どういうマスフローを選べばいいの?分流構造のないマスフローなんてあるの?」というお問い合わせを頂くのですが、現時点でDecoがお勧めしているのは、インサーションタイプの流量センサーを持ち、バイパスレスで全量流量測定を行っているMASS-STREAMシリーズになります。
【MASS-STREAM 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】
インサーションセンサーに関して、改めて説明しましょう
このセンサーは一般的なマスフローで使われている熱式流量センサーの、ご先祖に当たる(と、Decoが思っている)熱線式流速計の原理を基にしています。
熱線式“風速”計とは何でしょう?
風速を測定するには代表的なのが、飛行機の機首等についているピトー管です。
飛行機のピトー管は高速飛行時の速度計として使用されています。
(ピトー管の説明は文字数の関係で省きます。)
それに対して熱線式風速計とは、上図にあるように、キングの式を基にした熱線からの放熱量と風速のバランスから流速を導き出す方式です。
熱線式流量計は高いSN比と応答性能を特長としています。
熱線部に細径の白金線等を使い、それを流れ場に金属の支柱で曝し、細線に電流を流し発熱させます。
加熱された金属線は流体の速度が上がれば上がるほど、冷却されますね?
金属は高温となると抵抗値が大きくなる傾向があるので、流速の変化に応じて生じる抵抗値の変化を捉えれば流速を測ることが可能になります。
熱線式というネーミングは、この金属の細線を発熱させることから来ているのですね。
初期の熱線式流速計は、定電流制御でした。
常に一定の電流を流す回路構成の為、熱線の抵抗値が変化したら、その分だけ電流量を変化させます。
これに対して現在では熱線の温度を常に一定にする=金属線の抵抗値を一定に保つ定温度方式が主流となっています。
回路上は複雑になるが、フィードバック制御のおかげで応答性能が向上する利点が大きいのです。
定温度型熱線式流速計の基本回路は上図のような構成です。
熱線はホイットストンブリッジの抵抗としてバランスをとっている為、ブリッジに加える電流量を変化させることで、常に一定温度に熱線を維持するフィードバック回路となります。
熱線式流速計は流れ場の物性値が一定ならば正しい流速値を示します。
逆に流速が一定ならば物性値の変化を示す為、周囲温度変化には当然左右されます。
この問題には温度補償回路を設けることで対応しています。
ブリッジ回路に温度補償用の測温抵抗体を追加することで、流体の温度変化によって生じる抵抗値変化を用いた温度補償を行っているのです。
熱線式風速計はその性格上、ブリッジ回路から出力される電圧信号と流速の関係は絶対的なものではなく、あくまで相対的なものであり、必ず“校正”が必要になります。
ピトー管等の流体の物性値に左右されない測定式を利用した流速計をリファレンスとして検量線を引いて運用された方が良いのです。
ここまで読んできて、あれっ?と思いませんでしたか?
なんだかマスフローの熱式流量センサーの解説に出てくる文章や単語と似ている箇所がありますよね?
だからこの熱線式風速計が、熱式流量センサーのオリジンだと思えてくるわけです。
次回はこの方式のインサーションセンサーを搭載したMASS-STREAMの解説を行います。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan