これに対して、日本のMFCメーカー((株)堀場エステック、日立金属(株)、(株)リンテック)が採用しているのが、第3の方式となるピエゾアクチュエーター搭載型流量制御バルブです。

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです
前回はマスフローコントローラー(MFC)の応答性に関して、流量制御バルブの構成部品であるアクチュエーターが、ピエゾが?それともソレノイドか?は、MFCとしての応答性能を決める決定的な要素ではない事をお話ししました。
今回はセンサーを見てみましょう。
センサーで代表的なのは、皆さんも良く御存知の巻線型です。
これに対して最近増えているのがチップ(MEMS)型です。
MEMS式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan
そして、古くからある熱線式風速計をルーツに持つインサーション方式になります。
インサーション式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan
あくまで一般論で言わせて頂ければ、これらのセンサーの中で、応答性能で最も不利なのは、巻線型です。
なぜならば他の2種類のセンサーは、測定対象である流体に直接触れる事で流体の温度を測定しているのに対して、巻線型は細径のSUSチューブの外周にニクロム線を巻き付けている為に、直接流体には接触せず、SUSチューブを介して熱のやり取りを行っている分、不利だからです。
もちろんそれ故に腐食性流体に強く、半導体製造プロセスのような特殊ガスを使用することで成り立っている装置産業には無くてはならないものなのですが、流体への接触が可能な流体(例えば空気や窒素)に限っては、巻線型は応答性能では最初からディスアドバンテージを背負っていると言えるのです。
MFCの応答性 出典:EZ-Japan
前回から使っているMFCの応答性能を構成するチャートで示すと、「熱の移動量を流量へ換算して流量信号として取り出す」という部分の流量センサーが担当する仕事が速ければ速いほど、MFCとしての応答性能は向上する事になります。
今までこの部位が巻線型のMFCを使っていたユーザーが、アクチュエーターはソレノイドのままで、センサーをMEMSモデルのMFCに変えてみた場合、非常に良好な応答制御性が得られて驚かれるパターンを何度もDecoは見てきています。
もし可能なら、試してみられると良いかと思いますよ。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan
前回はマスフローコントローラー(MFC)の応答性に関する定義をご説明しました。
比較する物差しが同じでないと意味がありませんからね。
それでなくてもMFCの応答性というスペックは、色んな誤解を生じてきたのです。
今でも顧客さんとお話ししていると言われるのが、「このMFCはピエゾアクチュエーターを積んでいるから、応答が速いですよね?」という認識です。
これは×ではありませんが、必ずしも〇ではりません。
MFCの応答性を構成している要素を下図に示します。
上流/下流で対になった流量センサーの配置された細いパイプへ分流された流体が流れ込み、上流の熱が下流へ移動をします。
その量をブリッジ回路で取り出して流量へ換算します。
換算するというのは、温度補正や直線性などの各種補正も入るという事です。
最近のデジタルMFCではセンサーからの微細なアナログ出力をADコンバーターでデジタル信号へ変換してから行われます。
こうして流量信号(PV)として出力された信号は、制御回路にある調整計(PID制御回路等)で外部からの流量設定信号(SV)と比較・判断され、SV=PVとなるように、バルブ操作量(MV)が決定し、アクチュエーターに向かって指示されるのです。
ここまでお話ししてくるとお判りいただけるのですが、アクチュエーターの応答性の勝負はこの最後のMV値が設定・可変されてからなのです。(一番上の図で赤い点線で示した部分)
故にMFCの応答性能はアクチュエーターへの依存は少ないことがわかりますね?
たしかに単体比較ならば、ピエゾアクチュエーターはソレノイドより速いのですが、MFCの応答性を問うならば、当然MFCというパッケージで考えないといけないという事なのです。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan