EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

校正

【再掲】<注意喚起>マスフローを修理返却されるに当たってのお願い

毎年必ずこの季節になってきますと、修理や校正のご依頼が増えます。
今年もくどいようですが、人命にかかわる事ですのでしつこく書かせて頂きますね。
マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)を、修理や再校正作業でメーカーに返却される場合、気を付けて頂きたい事があります。

修理依頼品に付けて頂きたいメーカー指定の書式があるとお思いますが、Decoが現役のメーカー時代から、これが記載されていなかったり、不十分なものが結構見られました。
特に除染に関して、つまりこのマスフローにはこういった種類のガスをどれだけ流していて、取り外し後はパージ作業を行ったか?という内容は、日本ではなおざりにされがちです。

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除染告知書 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

たとえばブロンコスト・ジャパン(株)でしたら、この写真にあるような「除染告知書」という書式があり、これが必要事項記載されていない場合、作業には取り掛からないという約束が世界的にあります。
除染告知をおろそかにするという行為は、修理内容の確認で双方の時間を浪費するだけでなく、
最悪の場合、修理作業に関わる人間の健康を損なったり、生命の危険を招くこともあります。

「Decoさん、いくらなんでも大げさでしょう。」
と言われるかもしれませんが、マスフローに流される流体は決して安全な空気だけではありません。
特に半導体製造では毒性、可燃性のガス種のオンパレードであり、ppmオーダーで致死量に至るガスもあります。

もう時効だからお話ししますが、二十数年前にお客様から返却された窒素のマスフローに塩素が充たされていたことがありました。
添付された書類にはどこにも塩素を流したとは書いてなく、パージの項目は「済み」と記載しました。
受け入れ作業で開封したところ、わずかに塩素ガスの匂いがしたので、あわてて除害ボックスに放り込んだのですが、受け入れ担当は気が付くとうっすらと鼻血が出ていたとのことです。

この話を依頼元のお客様にしたところ、帰ってきた言葉は「知らない、君達の受け入れのやり方が杜撰なんだろう。」でした。
安全を確保するには、すべてを疑ってかからないといけないのは確かで、受け入れ側にも改めるべき点はありましたが、自分達が使用したプロセスを把握していない杜撰な人に言われたくはありませんね。
(因みにその会社は経営のやり方も杜撰だったのか、もう存在していません。)

マスフローの修理や再校正をご依頼頂く際は、必ず以下の事を明確にして頂きたく思います。

・依頼者の連絡先
・製造番号
・どのような流体で使用されていたか?
・送る前にどのような洗浄されたか?
・故障内容の詳細(いつから、どこで、どのように不具合が生じているかを詳細に。)
・再校正依頼ならば、出荷にどういったドキュメント(トレーサビリティ体系図等)を付ける必要があるか?

EZ-Japan Decoからのお願いでした。

MFC豆知識 by Deco EZ-Japan

ISO/IEC 17025:2017認定 Bronkhorst® Calibration Centre


ブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech B.V.)は、EUでトップ、世界でも5本の指に入るマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)メーカーです。
ブロンコストの特長的なところは、マスフロー(MFC,MFMの総称)を製造するだけではなく、校正事業者としての側面もある事です。

しかもブロンコスト校正センター(Bronkhorst Calibration Centre; BCC)はオランダ認証機関(RvA)によりISO/IEC 17025:2017の認定を受けており、認証番号はK 127です。
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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

BCCの品質保証(QA)システム、校正方法、技術的能力が検査され、監査され、必要なすべての要件を満たしていることが証明されています。

*ISO/IEC 17025に関して

試験所・校正機関から出される試験結果、校正証明書が、「本当に正しいものなのか?」という疑問に対して、彼らが本当に正しい数値を出す能力があるかどうかを証明する国際規格がISO/IEC17025です。
試験所・校正機関の能力と品質を確認するには欠かせない規格として、支持されています。

ブロンコストは1981年の創業以来の長年に渡るガス用マスフロー(質量流量)・ボリュームフロー(体積流量)校正業務の経験をもとに、BCCを設立しました。


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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

*国際MRAに関して
オランダのRvAと日本のNITEとの間には、国際MRA(Mutual Recognition Arrangement)という多国間の相互承認があります。
国際MRA対応認定を受けている校正機関の出した校正結果=校正証明書は、相互に同等な証明書として扱う事が出来ます。
そのベースになるのが、ISO/IEC 17025なのです。
ISO/IEC17025を取得していることが、国際MRAを確かなものとすると言えるでしょう。


BCCは先ず2010年にガス流量校正サービス(調整を含む)の認定を得、流量範囲0.15 mln/min~6200 ln/minにおいて、新規および既存のブロンコスト製マスフロー及び校正装置の校正業務をカバーしました。
2014年にBronkhorst校正センターは新しい場所に移り、作業スペースが拡張されまたことにより、2015年にはブロンコストのコリオリ式マスフローメータ・コントローラmini CORI-FLOWの流量範囲1~200 g/h, 圧力メータ・コントローラEL-PRESSの圧力範囲2.5 kPa~40 MPaの校正に対応致しました。


現在は流量(気体、液体)圧力認定校正事業者として、活動しています。
もちろん認定校正事業者ですから、その対象はブロンコスト製マスフローに限らず、BCCは体積流量(気体、液体)メータと他社製マスフローのガス流量校正にも対応しています。


流量計(マスフロー)メーカーであり、かつ校正事業者でもあるということは、それだけ流量の信ぴょう性(トレーサビリティ)に関する真摯な取り組みを行っているメーカーだという事です。
日本ではあまり知られていない事柄なので、今回はピックアップして記事にしてみました。

EZ-Japan ここでもうひと押し by Deco




日工セミナー2018 「流量校正設備の最新動向」

マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>の連載にてお世話になっている日本工業出版(株)主催の 日工セミナー2018 「流量校正設備の最新動向」(←セミナーHPへリンクあり) の中で、ブロンコスト・ジャパン(株)のマスフローの校正体系解説のお時間を頂き、講師を務めさせていただく事になりました。
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<以下日工セミナーHPから引用>
開催日
2018年4月20日(金曜日)10:00~16:10

会場
東京会場 お茶の水エデュケーションセンター(東京都文京区湯島1-6-1 TONEGAWA 2ビル 5F)
大阪会場 大阪エデュケーションセンター(大阪市中央区平野町1-6-8 メロディーハイム1F)
福岡会場 リファレンス博多駅東ビル(福岡市博多区博多駅東1-16-14)

参加費
37,800円税込(テキスト・昼食含む)
ご確認ください※3名以上ご参加の場合お一人様32,400円
  ※関連書籍ご希望の方は割引で提供致します。
    関連書籍(1)「最新の計測制御機器2018」(月刊「計測技術」2018年1月増刊号)2,160円税込
    関連書籍(2)「渦流量計の創造」1,620円税込

定員
東京会場30名 大阪会場15名 福岡会場10名

主催
日本工業出版(株) 月刊「計測技術」

今回は午前中からで6名の講師がお話をさせて頂くのですが、Decoも本名でブロンコストのエヴァンジェリストとして製品・技術を紹介させていただく事になりました。

14:40~15:20 「マスフローメーターの流量設備及び校正サービスの紹介 」
          ブロンコスト・ジャパン(株) 黒田 誠

*ブロンコストはサーマル式マスフローメーター、コントローラーを製造しており、オランダ本社工場および日本の設備で校正実施している。
校正サービスと調整のしくみ、実績などについて紹介する。
講義目次
(1)ブロンコストとは~ISO17025取得認定校正事業者 
(2)Bronkhorst Caribration Centre(BCC)の紹介 
(3)ブロンコスト・ジャパンでの校正対応範囲マスフローメーターの技術、校正サービスおよびアプリケーション
興味をお持ちの方は、是非ご聴講下さい。

お申し込みは上記URLリンク先へ、詳細お問い合わせは以下までお願いします。

日本工業出版(株) セミナー事業部 
本社
〒113-8610 東京都文京区本駒込6-3-26 日本工業出版ビル
TEL.03-3944-1181 FAX.03-3944-6826


宜しくお願い申し上げます。

EZ-Japan 代表 黒田 誠

真・MFC千夜一夜物語 第247話 バイパスはトラブルの元なの? その6


 もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 20183月号(2/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第43回は、マスフローコントローラ(MFC)に比べてマイナーな存在のマスフローメータ(MFM)のアプリケーションに関する解説記事です。

 

MFCMFMの最大のトラブルは、センサーチューブとバイパス(層流素子)の分流比が何らかの原因で初期値より変化することという説明から、実際のアプリケーションでのトラブル事例を二つ見て頂きました。

 

「じゃあ、どういうマスフローを選べばいいの?分流構造のないマスフローなんてあるの?」というお問い合わせを頂くのですが、現時点でDecoがお勧めしているのは、インサーションタイプの流量センサーを持ち、バイパスレスで全量流量測定を行っているMASS-STREAMシリーズになります。

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                     【MASS-STREAM 出典:ブロンコスト・ジャパン()

 

インサーションセンサーに関して、改めて説明しましょう

このセンサーは一般的なマスフローで使われている熱式流量センサーの、ご先祖に当たる(と、Decoが思っている)熱線式流速計の原理を基にしています。

熱線式“風速”計とは何でしょう?

風速を測定するには代表的なのが、飛行機の機首等についているピトー管です。

飛行機のピトー管は高速飛行時の速度計として使用されています。

(ピトー管の説明は文字数の関係で省きます。)

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それに対して熱線式風速計とは、上図にあるように、キングの式を基にした熱線からの放熱量と風速のバランスから流速を導き出す方式です。

熱線式流量計は高いSN比と応答性能を特長としています。

熱線部に細径の白金線等を使い、それを流れ場に金属の支柱で曝し、細線に電流を流し発熱させます。

加熱された金属線は流体の速度が上がれば上がるほど、冷却されますね?

金属は高温となると抵抗値が大きくなる傾向があるので、流速の変化に応じて生じる抵抗値の変化を捉えれば流速を測ることが可能になります。

熱線式というネーミングは、この金属の細線を発熱させることから来ているのですね。

 

初期の熱線式流速計は、定電流制御でした。

常に一定の電流を流す回路構成の為、熱線の抵抗値が変化したら、その分だけ電流量を変化させます。

これに対して現在では熱線の温度を常に一定にする=金属線の抵抗値を一定に保つ定温度方式が主流となっています。

回路上は複雑になるが、フィードバック制御のおかげで応答性能が向上する利点が大きいのです。

 

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定温度型熱線式流速計の基本回路は上図のような構成です。

熱線はホイットストンブリッジの抵抗としてバランスをとっている為、ブリッジに加える電流量を変化させることで、常に一定温度に熱線を維持するフィードバック回路となります。

熱線式流速計は流れ場の物性値が一定ならば正しい流速値を示します。

逆に流速が一定ならば物性値の変化を示す為、周囲温度変化には当然左右されます。

この問題には温度補償回路を設けることで対応しています。

ブリッジ回路に温度補償用の測温抵抗体を追加することで、流体の温度変化によって生じる抵抗値変化を用いた温度補償を行っているのです。


熱線式風速計はその性格上、ブリッジ回路から出力される電圧信号と流速の関係は絶対的なものではなく、あくまで相対的なものであり、必ず
“校正”が必要になります。

ピトー管等の流体の物性値に左右されない測定式を利用した流速計をリファレンスとして検量線を引いて運用された方が良いのです。

 

ここまで読んできて、あれっ?と思いませんでしたか?
なんだかマスフローの熱式流量センサーの解説に出てくる文章や単語と似ている箇所がありますよね?
だからこの熱線式風速計が、熱式流量センサーのオリジンだと思えてくるわけです。


次回はこの方式のインサーションセンサーを搭載したMASS-STREAMの解説を行います。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

 

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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