EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

歴史

真・MFC千夜一夜物語 第435話 MFCの歴史を振り返ろう その11

マスフローコントローラー(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

前回解説したソレノイドアクチュエーターに対して日本のMFCメーカーが多く採用しているのが、MFCの流量制御バルブで第三の方式となるピエゾアクチュエーターです。
ピエゾとは圧電素子の一種で、ある結晶構造体に機械的圧力を加え変位させると、この圧力の大きさに比例して電圧を発生する原理(=正圧電効果)を応用しています。
実際には、この逆で「ある電圧をかけることでで、結晶構造体が変位する(伸びる)」(=逆圧電効果)を利用しているのですが・・・
変位量はナノメータレベルの微小な単位です。
これでは素子単体ではバルブは、ほんの少ししか動かせないで、図にあるように複数を積層スタックすることで使用されています。
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それでも機器に内蔵できるサイズのスタックでは、マイクロメーターオーダーしかストロークは稼げないのです。
その為、決してストロークが必要な大きな流量用途で使用できるわけではないのですが、その応答性能と何よりも発生力の大きさを評価され、半導体製造装置用で多く使われています。   
MFCの流量制御バルブに用いられるアクチュエーターに関して「ピエゾはソレノイドより高速流量制御ができて優れている」という見解を持つ方にお会いすることがあります。
このブログではもう何度も解説していますが、アクチュエーター単体の応答性の差はMFCの応答性の決定的な差にはなりません。
確かに「部品としての応答性能」では、ピエゾの方がソレノイドよりも応答は速いです。
しかし、MFCが“本体内に「検出器」としての流量センサーと、流量を調節する「自動弁」、そしてセンサー信号を受け目標値との偏差を判断し自動弁を操作する「調整計」までをワンパッケージにした製品“である以上、”MFCとしての応答性能“はアクチュエーター単体性能の優劣だけでは決まらないのでしたね?

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MFCはPVとSVを比較してバルブの操作量を決めるMVを出力します。
決してバルブ単体を指示通りの位置に制御する事を目的とした機器ではありません。
MFCの応答性能のネックは、その制御の起点になる熱式センサーの速さ=流量信号出力の速さです。
流体により奪われた熱の移動を計るMFCのセンサーの応答性は原理から考えても、ソレノイド、ピエゾ両アクチュエーターの応答性よりは遙かに遅いのが現実なのです。
MFCはSVが明確に存在するが故に、流量制御を行う場合に限り、実際のセンサーの応答性よりも早い制御性能を実現しているデバイスなのです。
故にアクチュエーターの応答性の優劣だけを議論する事は、高速応答に直接つながらないというのがDecoの持論です。
ソレノイドにはピエゾにない大きなストロークから大流量に対応出来るという優れた特性があり、そこを評価されて今なお世界中で多くのMFCに採用されている事実がそれを証明しています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第434話 MFCの歴史を振り返ろう その10

マスフローコントローラー(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

MFCの流量制御バルブで、サーマルバルブの次に生まれたのがソレノイドバルブ(比例電磁弁)でした。
電磁弁は遠隔操作できる閉止用バルブとしては、色んな産業用途に製品化されていますが、MFCに搭載するそれは、少し異なる特性を要求されます。
一般的なMFC用ソレノイドバルブの構造を下図で解説します。
(これもあくまで一般的なソレノイドバルブの構造を説明するもので、特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)

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MFCで用いるソレノイドはDCソレノイドです。
KM-45のような耐腐食性能を持つ軟磁性材料である電磁ステンレス鋼を芯とし、そこに銅線コイルを巻き通電することで発生する磁力がバルブを駆動します。
その磁力でプランジャー(可動鉄芯)を引き寄せてバルブを開閉させます。
バルブは磁力の向きと反対方向へ板バネなどでの力で押し付けられ位置決めされています。
こういった基本原理・構造は、一般的なガスライン閉止用電磁弁と同じです。

ただ、閉止用電磁弁は、ある電圧をかければ全開(もしくは全閉)という動作をすればいいのですが、MFC用のソレノイドは細やかな流量制御を可能とするために、印可する電圧に伴って少しずつ開き始めて、できるだけ徐々に全開に至る特性=全開-全閉をできるだけ広いレンジで制御できるように特別に調整される必要があるという違いがあります。

ソレノイドをアクチュエーターとして採用したMFCは、サーマルアクチュエーターを搭載したそれに対し、高速応答性と大きなバルブストローク(=流量をたくさん流せる)を持っている。
故にこの方式はMFCにとって非常に扱いやすいという評価を得て、特にTylan、Unit、Brooks等の北米MFCメーカーで多くのベストセラーMFCが産まれました。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第433話 MFCの歴史を振り返ろう その9

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
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これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。


MFCの自動制御でMVによりコントロールされる存在が流量制御バルブです。
その第1号としては、米国タイラン社(現在は存在せず)のFC260シリーズやエステック(現:(株)堀場エステック)のSEC-400シリーズ等の第1世代MFCに搭載されていた「サーマルバルブ」が挙げられます。
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FC-260シリーズ(当時生産していた日本アエラ(株)カタログから引用)

このバルブの構造を下図で示しますね。(あくまで一般的なサーマルバルブの構造を説明するものであり、特定の企業の発明物、技術を指す物ではありません。)
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本バルブ方式は一般的なニードルバルブと似通っており、ニードルが前進してオリフィスを塞ぐ構造のバルブです。
中央のアクチュエーター部は熱膨張係数の高い材質で構成されており、周囲もしくは内部にヒーター線が設置されています。
ヒーターを加熱すれば、アクチュエーターは熱膨張して伸びる方向に変形し、ニードルを閉鎖方向へ動かします

このアクチュエーターには構造上の弱点があります。
「熱して延びる」、「醒まして縮む」という動作原理である為、高速動作ができないのです。
また、ニードルをオリフィス部に押しつける構造上、金属同士がぶつかることでパーティクルが発生してしまいます。
それを避けるには少しニードルを少しオリフィスから浮かせた構造を採るのですが、その為に閉止させても出流れが発生してしまいます。
また、MFC二次側が真空の場合、伸びたアクチュエーターの復元させる力=ニードルを引っ張り上げる力が、真空の引っ張り込む力に負け、ニードルバルブがオリフィスに噛み混んだ状態で固着してしまい、ガスが全く流れなくなることもありました。
それと、半導体製造装置で用いるようなガスだと、高温加熱したアクチュエーター部が接ガスするため、分解してしまうガス種もあり、そういったガス種での使用が憚られたのです。
 
 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第432話 MFCの歴史を振り返ろう その8

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
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これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

前回までMFCの要である流量センサーの技術動向を振り返りました。
流量を測定するというのはMFCが流量制御する為の第一段階であり、ここでつまずいては正確な流量制御はできません。
そして、今回からはMFCの流量制御のもう一つの要である流量制御バルブを用いた自動制御に関して解説していきます。
そもそもMFCが使われるようになる前、流量制御は下図のようなフロート式流量計とニードルバルブを組み合わせたものが主流でした。
 
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人間が検出器である流量計のフロートの位置(流量値)を目視で読み取り、頭脳で目標値である流量と比較判断して、ニードルバルブの開度を手で調整することで制御を達成します。
人間が目視し、判断し、操作することで調整計としての役割で介在するプロセスであり、このような制御系は手動制御という形の立派な制御の形なのです。
手動制御の問題点は、そこに人間が介在しなくてはいけないことです。
人間は24時間同じパフォーマンスを発揮し続けることが難しいですし、熟練度により目視から判断の過程で差が生じます。
そういった手動制御の問題を解決するには、自動制御が必要となります。
流量計を流量信号を出力できるもの、例えばマスフローメータ(以下 MFM)に変えることで、人間の介在しない自動流量制御を行うが下図です。
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自動制御に必要となるのは、人間の代わりに比較、判断、操作をこなす調整計です。
調整計は人間の目と頭脳と手の代替機能を持っていますが、全く同じ動作をする訳ではありません。
例えばフロート式流量計は、人間の目で読み取るというアクションが必要なため、検出値を調整計で処理するための信号化が難しいのです。
その為MFMのような流量を電圧や電流信号に変換できるデバイスが必須とされました。
このMFMと自動調整バルブ、そして調整計を一つのパッケージにまとめたのがMFCなのです。

MFCはそれ単体で、熱式流量センサーが検出器としての役割を果たし、そこからの測定値(Process Variable 以下PV)と外部から与えられた目標値(Set Variable 以下SV)とを比較し、その偏差を無くす為に、流量制御バルブの操作量(Manipulative Variable 以下MV)を決定する自動制御系なのでしたね?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第431話 MFCの歴史を振り返ろう その7

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
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これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回は.熱式流量センサー MEMS型のお話です。

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熱式流量センサーのMEMS型は、流体に直接センサーを接触させる方式です。(上図)
その為、流体との熱のやりとりという側面では、インサーションタイプと同様非常に効率が良く、応答性能では巻線式を圧倒します。
当然感度も良いので、SN比でも優れた特性を発揮するセンサーもあり、通常の巻線式ではターンダウンレシオ1:50程度なのを10倍以上の値をカタログスペックとしているメーカーもあるくらいです。
後発で1990年代後半から2000年代に市場へ導入されただけあって、デジタル制御技術の恩恵を被り、非常に優れた性能を発揮するものが多いです。
ただ、勘違いしてはいけないのは、MEMSというのはあくまでアナログのヒーター、測温抵抗体を小型にして半導体チップに実装できるようにしたものであり、アナログデバイスである事では他の2方式と変わりはないという事です。
その後段で信号をいかにロスが少なくデジタル化して用いるかで、MEMSタイプの性能には雲泥の差が産まれます。
目安程度の流量センサーや、フロースイッチ的な用途にとどまるものから、本格的な流量測定用途の流量計まで、種々の“MEMS流量センサー“と名乗る製品が市場にはあふれているので要注意です。
MEMS型の弱点は、ガスに直接触れるという利点の裏返しで、使用できる流体種に制限があることです。
腐食性流体はもちろん、図にあるダイヤフラム構造上、その直下の空間に残留するとまずい毒性ガス、バリア膜で用いているSi系の膜と反応する流体にも使用は難しいのです。
また、MEMSセンサーを固定する樹脂材料は、そこからのアウトガスを気にする分析用途では使用が難しいこともあります。
また、MEMS型といっても、分流構造とは無縁ではありません。
巻線型ほどの分流比ではないにしても、流量レンジによっては分流構造を持たねばならないものが多く、それらは前項で触れた異物混入による分流比異常の問題が付きまとうし、MEMSセンサーそのものに異物が付着した場合のトラブルも考えられるのです。
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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