もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」 20194月号(3/25発売)ではマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータに異物が混入した際のトラブルシュートを解説しています。

 

今回からは「特殊高圧ガス」のお話です。

特殊高圧ガスは、一般的な高圧ガスよりも危険性が高いガスです。

 

モノシラン(SiH4)

ジシラン(Si2H6)

アルシン(AsH3)

ホスフィン(PH3)

ジボラン(B2H6)

モノゲルマン(GeH4)

セレン化水素(H2Se)

 

以上7種が特殊高圧ガスという名称で、半導体製造ガスでよく用いられる39種の「特殊材料ガス」の中でも使用頻度が高く危険なで、それぞれが広範囲の爆発範囲をだったり、自然発火性や分解爆発性のような可燃性、限界濃度が極めて低い毒性を持っていることから、これらの販売、移動、消費に当たっては特別な規制が設けられています。

マスフローでは、保証しているリークレートがHeリークディテクタの測定限界以下であるメタルシールモデルが推奨されます。
190408_01
メタルシールMFC【出展:ブロンコスト・ジャパン(株)】
 

爆発範囲に関しては水素の解説で少し触れましたが、水素が4.075vol(空気)なのに対して、ホスフィン1.3298vol%、モノシラン1.37100vol%、ジシランに至っては0.5100vol%です。

この3種は、常温の大気に触れることにより発火します。
これらのガスは、そのリークを止めない限り、消火器で消し止められたように見えても、それは支燃性ガスである空気(酸素)を遮断しただけで、再度空気に触れれば燃え続ける性質を持っており大変危険です。

更に分解爆発性を持つモノゲルマンは、支燃性ガスを必要とせずに、可燃性ガスのみで発火元があれば燃え上がり爆発する大変危険なガスなのです。

余談ですが、特殊高圧ガスではなくても、分解爆発性で有名なガスにアセチレン(C2H2)があります。
アセチレンは可燃性ガスの中でも非常に高温で燃焼するので、金属の溶接・溶断加工に適しています。
また、フレーム原子吸光分光計のような分析装置や、ダイヤモンド薄膜製造装置等にも使用されています。
液化ガスとして容器(ボンベ)に詰めたアセチレンは容易に爆発事故を起こしてしまうので、現在ではアセトン等に溶解させて容器に充填して使用されています。(アセチレンボンベは茶色い容器の為、一目で識別できます。)
このような分解爆発性に関しては、各種ガスで実験検証が行われており、モノシラン、アルシン、ジシラン、ホスフィン、ジボラン、セレン化水素に関しては分解爆発がないことを確認されていますが、それで安心してはいけません。
分解反応で生成する熱量が大きいガスはその結果、容器内圧力が急上昇することになり、容器の破壊圧を超えることで破裂事故が生じるからです。
定められた充填量を守り、火災により容器周辺温度が上昇しないように火気には十分注意しなくてはなりません。

 

次回は特殊高圧ガスの代表として、モノシランを取り上げて、このガスが引き起こした悲惨な事故事例を紐解いてみましょう。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan