もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年5月号(4/25発売)は誌面の都合で休載となっています。5/25発売の6月号をお楽しみに!

さて、マスフローメータ(MFM)のお話です。
MFMを流量計として使用する場合に起きるトラブルを解説しましょう。
熱式流量センサーを持つMFMはマスフローコントローラ(MFC)と同じく温度影響を受けます。
熱の移動を捉えて流量に変換するセンサーですから、熱を伝える相手=流体温度の変化により感度差が生じるのです。

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100℃の熱をヒーターで流体に伝える際に、流体温度が20℃の場合と100℃の場合を考えてみればよくわかるかと思います。

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つまり流体温度に対して、補正が必要なのが熱式マスフローと言われる機器が搭載しているセンサーの特徴なのです。
ただし、ほとんどのマスフローはこの流体温度を直接測定できてはいません。
温度補償用のセンサーは、マスフローのボディ温度、もしくは基板上の温度を測定しています。
これはマスフローの周囲温度=流体温度という考えからです。
だが、実際の現場ではそうはいかない場合も多々あります。
ガス用のマスフローならば、その流体の供給源はガスボンベになります。
そのボンベが設置されている場所は、たいてい室外もしくは室内でも温調の無い場所かと思います。
そこで冬場に冷え切ったガスが、そのまま隣室の温調の効いた部屋に入ってきてマスフローに流入した場合、高い確率で先ほどの周囲温度=流体温度という状態は崩れてしまい、適切ではない温度情報を基にした補正が行われてしまうのです。

この問題をクリアするには、流体温度をMFMの周囲温度とをイコールとするために熱交換器等を用いる、もしくは空調を工夫する必要があります。
マスフローの温度影響値というカタログ仕様がありますが、これは適切な温度補正が入った場合の影響値ですので、誤解なきよう・・・

*ちなみにマスフローのカタログに記載されている温度影響値と、体積流量計の温度圧力補正(温圧補正)をごっちゃにしている人を見かけますが、後者の値はあくまで体積流量を定めるには、温度と圧力条件を固定する必要があるから行う計算であり、流量計そのものの温度影響値とは別ものです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan