EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

温度影響

真・MFC千夜一夜物語 第265話 コンバージョンファクターは1つではない その2


もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 201812月号(11/26発売)では、マスフローのゼロシフトに対するゼロ調整に関して解説しています。

本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

 

さて、本物語のラスボスの一つがやっと現れたのですが、CFというものがどれくらい厄介で一筋縄ではいかないのか?をご理解いただくのに、何個か例を挙げて解説しましょう。

以下はおなじみの熱式流量センサーの一般例と流量式です。


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熱式流量計の流量式にはCp=流体の定圧比熱というファクターが含まれています。

気体を測定対象とする場合、圧力条件のよるエンタルピーの変化量が大きい為に定圧比熱を用います。

何度もお話ししてきましたが、熱式流量計を質量流量計として機能させるためには、流体種を固定する必要があります。

それは定圧比熱を正確に求めないといけないからなのです。

 

窒素の定圧比熱は1気圧=1013hPaA)条件の場合、0℃で1043J/kg℃であり、50℃でも同値です。

それに対して
水素(0℃:14193J/kg℃→50℃:14403 J/kg)
二酸化炭素(0℃:829J/kg℃→50℃:875 J/kg)
アンモニア(0℃:2144J/kg℃→50℃:2181 J/kg)
メタン(0℃:2181J/kg℃→50℃:2303 J/kg)
このように大きなもので5%を超えるガスもあります。

 

では、早速、ブロンコストさんがWEBで提供している“FLUIDATonthe Net”(以下FLUIDAT)を使って、二酸化炭素の0℃と50℃条件でのCF計算を行い、結果を比較してみよう。


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FLUIDATの操作は簡単で、実ガス“Fluid from”に二酸化炭素=CO2を、校正基準とする流体として“Fluid to”で窒素=N2を選択し、各々の条件を入れます。
フルスケール流量(以下FS)100SCCMなのでMFM F-111B-100を選定します。

二酸化炭素の流体温度を0℃と50℃、窒素の流体温度は20℃固定として、その流量をSCCMmln/minNormal:ノルマル)、すなわち 0℃ 1013hPa(A)の体積流量に換算し表記しています。

CF0℃で0.7685100%FSですが、50℃では0.7301100FSまで変化しています。

 

窒素、FS100SCCM仕様のMFMで二酸化炭素を流して測定する際に、指示値が100SCCMであっても、流体温度が0℃なら76.85SCCM50℃なら73.01SCCM、実際は流れているということになるのです。
FS100SCCM
に対して3.84SCCMの差は大きいですね?

「マスフローメーカーのカタログ仕様を比較して、繰り返し性や精度に関しての議論をしている場合ではない!」と思えてきます。

このようなガスは、流量センサーでの温度差ΔT/定圧比熱Cpという流量式に対し、更に流体温度による補正が必要になります。

 

FLUIDATではデータ不足か?CF計算ができなかったのですが、温度でCFが劇的に変化するガスの代表はフッ酸(HFです。

筆者の経験では常温から100℃の間で、なんと!0.33から1.00まで変化します。

「ちょっと待ってよ!」と言いたくなる差ですね。

その腐食性の強さがクローズアップされるフッ酸ですが、それ以上に熱式流量センサーを搭載するマスフローの天敵といってもいい流体な理由はこれです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第251話 マスフローメータ(MFM)の運用に関して その3

もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年5月号(4/25発売)は誌面の都合で休載となっています。5/25発売の6月号をお楽しみに!

さて、マスフローメータ(MFM)のお話です。
MFMを流量計として使用する場合に起きるトラブルを解説しましょう。
熱式流量センサーを持つMFMはマスフローコントローラ(MFC)と同じく温度影響を受けます。
熱の移動を捉えて流量に変換するセンサーですから、熱を伝える相手=流体温度の変化により感度差が生じるのです。

242ac619.jpg
100℃の熱をヒーターで流体に伝える際に、流体温度が20℃の場合と100℃の場合を考えてみればよくわかるかと思います。

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つまり流体温度に対して、補正が必要なのが熱式マスフローと言われる機器が搭載しているセンサーの特徴なのです。
ただし、ほとんどのマスフローはこの流体温度を直接測定できてはいません。
温度補償用のセンサーは、マスフローのボディ温度、もしくは基板上の温度を測定しています。
これはマスフローの周囲温度=流体温度という考えからです。
だが、実際の現場ではそうはいかない場合も多々あります。
ガス用のマスフローならば、その流体の供給源はガスボンベになります。
そのボンベが設置されている場所は、たいてい室外もしくは室内でも温調の無い場所かと思います。
そこで冬場に冷え切ったガスが、そのまま隣室の温調の効いた部屋に入ってきてマスフローに流入した場合、高い確率で先ほどの周囲温度=流体温度という状態は崩れてしまい、適切ではない温度情報を基にした補正が行われてしまうのです。

この問題をクリアするには、流体温度をMFMの周囲温度とをイコールとするために熱交換器等を用いる、もしくは空調を工夫する必要があります。
マスフローの温度影響値というカタログ仕様がありますが、これは適切な温度補正が入った場合の影響値ですので、誤解なきよう・・・

*ちなみにマスフローのカタログに記載されている温度影響値と、体積流量計の温度圧力補正(温圧補正)をごっちゃにしている人を見かけますが、後者の値はあくまで体積流量を定めるには、温度と圧力条件を固定する必要があるから行う計算であり、流量計そのものの温度影響値とは別ものです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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