EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

異物つまり

真・MFC千夜一夜物語 第244話 バイパスはトラブルの元なの? その3


明けましておめでとうございます。
本年もEZ-Japanと本ブログを宜しくお願いいたします。

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もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年1月号(12/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第41回は、“熱式流量センサー”に関しての解説記事です。
マスフローコントローラ(MFC)&マスフローメーター(MFM)のセンサーとしては最もメジャーな熱式ですが、果たしてどういったものなのかを掘り下げた記事になっていますので、ご一読ください。

さて、マスフロー(MFC&MFMの総称)最大のトラブルは、センサーチューブとバイパス(層流素子)の分流比が何らかの原因で初期値より変化すること・・・というお話をしています。
これがセンサーチューブが完全に詰まった場合なら、前回お話ししたように流量出力は0になるので、まだわかりやすい“目に見えるトラブル“であり、対処方法もあります。
一番怖いのは、中途半端に詰まる事・・・“目に見えないトラブル”の発生なのです。
マスフローの中の分流構造では流入した流体はその大部分がバイパスを、そして5~10SCCMレベルの微小な流量がセンサーチューブを通っています。
従ってセンサーチューブは内径0.35~0.8mm程度の細い管であり、比較的異物で閉塞しやすい構造です。
分流構造を採るバイパス部も決して広々とした流路ではなく、あるものはセンサーチューブと同じような細径のキャピラリの集合体であったり、あるものエッチングロールであったり、またあるものは焼結金属を用いていたりします。
その為、異物の詰まる可能性は、センサーチューブとどっこいどっこいなのです。
下の図にあるように、正常状態でマスフローメーカーで流量調整されて出荷された製品が、なんらかの異物が混入した場合、センサーチューブに詰まる場合とバイパスに詰まる場合があります。

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この場合、完全に閉塞していなければ、MFCはPV=SVとなるように制御を続けますので、MFCからのPV値を読んでいるだけでは、分流比率が変化したことはわかりません。
つまり、メーカーで調整した分流比が例えば1:99でセンサーに1流れれば、実際はバイパス分の99を足した100を流していますよ!というものが、現実には異物により1:95に変化していたとしたら・・・ センサーでは1の流れをマスフローとしては100と置き換えて流量出力されているにもかかわらず、実際は96だったという事が起きてしまうのです。
これは繰り返し性の高い流量制御を行うのが売りのMFCにとっては致命的です。

どのような使用方法でマスフローに異物が入るのか?次回は事例を挙げて解説しましょう。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第242話 バイパスはトラブルの元なの? その1

もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌2017年11号(10/25発売)掲載「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」連載第39回は、“防爆構造のマスフローの解説<後編>”となっています。ATX本質安全防爆構造マスフローコントローラ(MFC)と新たに発表されたTIIS本質安全防爆構造のマスフローメーター(MFM)で流量制御を行う方法を解説しています。)
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<出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

さて、今回から“バイパスはトラブルの元なの?“編です。
熱式(サーマル)マスフローメータ(MFM)、マスフローコントローラ(MFC)の構造でバイパス(層流素子)を持っていないものは少数派です。
その構造を図で見てみましょう。
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このブログでは見慣れたMFCの構造図ですね。MFMならばこの図の左半分がその構造になるので、いずれにしてもセンサーとバイパスで構成されています。
 ではこのバイパスがなぜ悪者扱いされるのでしょうか?
「最近、全量測定は良くて、分流式はダメと言っているから、きっとDecoさんは何かバイパスに恨みでもあるのではないのか?」と思われそうですが・・・ちゃんと理由はあります。

 
前回のコリオリ式マスフローの解説でお話ししましたが、この分流構造=バイパスとセンサーに分流して測定する構造は、異物に弱いという大きな問題を抱えているからです。
サーマルマスフローの代表的な構造である巻線式センサーでは、実際に流体を測定しているセンサー管に流れる流量は5~10ml/min程度です。
残りの流量は全てバイパスへ流れていくように、バイパスの入り口に抵抗をつけて分流しています。つまり、フルスケール100ml/minのマスフローなら、90~95ml/minがバイパス、 1000ml/minなら、990~995ml/minはバイパスに流れているわけで、流量が大きくなればなるほど、センサー管とバイパスとの分流比は大きくなっていく一方なのです。

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そこで上図にあるように異物が混入したら・・・
マスフローのセンサー管もバイパスの流路も決して広くありません。
センサー管なら確実に内径1mm未満、バイパスも方式により種々ありますが、似たようなものです。
半導体製造ラインのような清浄度を要求されるラインでない限り、異物が入り込む可能性はあります。(半導体は逆に反応性の高い材料が多いので、配管途中で生成物が生じる可能性は、逆に高いという皮肉な現象が生じますが・・・)
特にコンプレッサーエアーを使用していたりしたら、確実に水分や油分、大気中のゴミが入ってくると考えていいでしょうね。
これらの異物が流路をふさいだ時、マスフロー最大のトラブルが発生します。
それは「分流比が初期の値から狂うことにより、測定した流量が実流量からずれてしまう」というものです。
他のトラブルならば、マスフローが故障しているのが一目瞭然の場合が多いのですが、このトラブルが恐ろしいのは、不具合が生じていることが一切わからない というところにあります。
ある日、あるタイミングからマスフローの流量がずれていた、こんなぞっとするレポートはないと思いませんか?
実験データは意味がなくなりますし、成膜やエッチングプロセスを終えて後工程に言った製品に不具合が・・・
怖いですよね!
はい、こんなクリフハンガーな引きで次回へ続きますね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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