EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

窒素

真・MFC千夜一夜物語 第270話 マスフローでこのガスを使う時は注意しよう! その2


もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」

20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。
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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

 窒素(N2)

今回は窒素から始めましょう。
窒素は一般的にボンベで供給されることが多く、安価なガス供給源としてよく使用される流体です。
不活性ガスとして窒素には多くの役割があり、アルゴンなどの希ガスに比べると安価なこともあり、特にパージ用、防爆用で多く用いられています。
マスフローコントローラ(MFC)とマスフローメータ(MFM)のコンバージョンファクタ(CF)の基準ガスであることもあり、また各メーカーのマスフローの性能評価試験も窒素で行うことが多いことから、経験もバックデーターも豊富で大きな問題を起こしにくいガスです。

窒素ガスの供給減がPSA方式のガス発生機を使用している場合は、PSA内部の吸着剤等の異物が下流にあるマスフロー(MFCとMFMの総称)へ入り込まないように注意してください。
また、ボンベにも一般工業用からクリーンプロセス用で純度という質の差が大きいので、安いからといってあまり純度の悪いガスを使用するのは奨めません。
なぜなら純度99%ということは残り1%に何が入っているかは保証の範囲ではないと考えてよいからです。

窒素が一番恐ろしいのは外部リークです。
大量に消費されるだけに、一気に多くの量が多岐に渡って流れる配管レイアウトを組まれていることが多いのです。
マスフローの外部リーク箇所から漏れ出た窒素がガスボックス内に充満し、うかつに覗き込んだ瞬間に窒息という事故が起こらないとは限りません。
マスフロー本体のお話からはやや脱線しますが、窒素に関してお話をしておくと、液体窒素をLGCLiquid Gas Container =可搬式超低温容器、ELF = エルフとも呼びます)でハンドリングする際は要注意です。
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は屋外、それも開放されたスペースに置かなくてはなりません。なぜなら夏場などの温度の高い条件で気化した窒素で内圧が上がると、外へ廃気される仕組みだからです。
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を誤って閉鎖空間で転倒させて液体窒素が漏れ出たら大変な惨事が引き起こされます。
液体窒素1Lが気化すると体積は約646倍になります。
その空間にいる人間は全員窒息死するでしょう。
高層階にやむを得ずエルフをエレベーターに乗せて搬送する際は、決して運搬作業者が同乗してはいけないと注意されるのは、その為なのです。

 


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第269話 マスフローでこのガスを使う時は注意しよう! その1

<訂正 ”マスフローでこのガスを使う時は注意しよう!” に改題しました。>

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。

 

前回までマスフローコントローラ(MFC)とマスフローメータ(MFM)のを描くこの千夜一夜物語のラスボスの一人、コンバージョンファクタ(CF絡みの、ややヘビーなお話をさせて頂きました。

今回からは少しライトに、マスフロー(MFCMFMの総称)で使用する一般的なガスに関しての注意事項として実務的な解説を行います。
マスフローは多種多彩なガスを測定&制御する機器ですので、CF以外にも校正ガスである窒素(空気)との違いが思わぬ運用上の問題を引き起こすことがあります。今回は一つ一つのガスに関して、特に安全面に重きを置いて、解説していきたいと思います。

 

空気(Air

空気は、皆さんにとって一番なじみ深い気体ですね?
その組成は、体積比で窒素(N2)78.084%、酸素 (O2) 20.9476%、アルゴン(Ar) 0.934%、二酸化炭素(CO2) 0.0390%・・・と続きますが、要は窒素8割弱+酸素2割強を主成分とする混合ガスです。
CF
は窒素を1とした場合、酸素も0.99辺りなので限りなく1に近いです。
その為、マスフローでの測定&制御性は良好です。
ただし、供給源としてボンベ(乾燥空気)ではなく、コンプレッサーやブロアーを使用する確率の方が圧倒的に高いので、それらからの水分や粉塵のような異物の混入には細心の注意が必要です。
何回か解説してきましたが、特に巻線型分流構造のマスフローにコンプレッサーエアーを導入する際には、ドライヤーとフィルターで異物を除去して下さい。
理由としては分流構造部の狭隈な流路に異物が入り込むことで詰まりが生じ、初期の分流比を変化させてしまい、結果として繰り返し性能を損なう可能性があるからです。
Deco
が経験してきた「使用しているうちにマスフローの流量が大きくずれてきた!」というクレームの大部分は、返却されたマスフローを分解してみると分流構造部に異物が侵入していた、というパターンが多いのです。

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対策としては前述のとおりなのですが、圧縮空気供給ラインにドライヤーと適切な粗さのフィルターを設置していただく事です。
それだけでなくマスフローの選定に関しては、分流構造のものより流路がシンプルなCTA(=インサーションセンサー)タイプ全量計測方式マスフローの採用をDecoは推奨しています。
異物を取り切れず、どうしても混入してしまうような環境というのはある。ならばマスフローもそれに適したものを選ぶべきですね?

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株) MASS-STREAMシリーズ】

もちろんセンサー部から配管内面までが異物で覆われてしまうようなひどい環境に対しては、インサーションタイプとて万能ではありません。
ただ、φ1㎜以下の細径のセンサー管や層流素子という部品が存在せず、分流部をそもそも持たないということが、この方式のアバンテージです。同様にチップ(MEMS)センサータイプでも対応は可能ですが、MEMSで構成されたヒーターと温度センサーは微細であり、そこに異物が付着してしまうと初期の熱プロファイルを維持できなくなってしまう問題があります。

また、MFCの場合は、センサー部だけでなく、その下流にある流量制御バルブのオリフィス部に異物が堆積することによる、制御不良(出流れやフルスケール流量が確保できない等)が考えられます。
これは流量レンジと圧力条件によりKv値(Cv値)が異なり、オリフィス径も異なるので一概には言えませんが、オリフィスが細くなる小流量では特に注意が必要です。

それと忘れられがちなリスクなのですが、空気は支燃性ガスである酸素を20%含むガスであることは覚えておきましょう。
「空気なんだし、たとえ外へ漏らしても大丈夫!」とう思い込みは、マスフローの周囲環境によってはかなり危険な自己を引き起こしかねないのです!
マスフローと周辺配管のリークチェックは、厳しく行ってくださいね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第265話 コンバージョンファクターは1つではない その2


もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 201812月号(11/26発売)では、マスフローのゼロシフトに対するゼロ調整に関して解説しています。

本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

 

さて、本物語のラスボスの一つがやっと現れたのですが、CFというものがどれくらい厄介で一筋縄ではいかないのか?をご理解いただくのに、何個か例を挙げて解説しましょう。

以下はおなじみの熱式流量センサーの一般例と流量式です。


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熱式流量計の流量式にはCp=流体の定圧比熱というファクターが含まれています。

気体を測定対象とする場合、圧力条件のよるエンタルピーの変化量が大きい為に定圧比熱を用います。

何度もお話ししてきましたが、熱式流量計を質量流量計として機能させるためには、流体種を固定する必要があります。

それは定圧比熱を正確に求めないといけないからなのです。

 

窒素の定圧比熱は1気圧=1013hPaA)条件の場合、0℃で1043J/kg℃であり、50℃でも同値です。

それに対して
水素(0℃:14193J/kg℃→50℃:14403 J/kg)
二酸化炭素(0℃:829J/kg℃→50℃:875 J/kg)
アンモニア(0℃:2144J/kg℃→50℃:2181 J/kg)
メタン(0℃:2181J/kg℃→50℃:2303 J/kg)
このように大きなもので5%を超えるガスもあります。

 

では、早速、ブロンコストさんがWEBで提供している“FLUIDATonthe Net”(以下FLUIDAT)を使って、二酸化炭素の0℃と50℃条件でのCF計算を行い、結果を比較してみよう。


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FLUIDATの操作は簡単で、実ガス“Fluid from”に二酸化炭素=CO2を、校正基準とする流体として“Fluid to”で窒素=N2を選択し、各々の条件を入れます。
フルスケール流量(以下FS)100SCCMなのでMFM F-111B-100を選定します。

二酸化炭素の流体温度を0℃と50℃、窒素の流体温度は20℃固定として、その流量をSCCMmln/minNormal:ノルマル)、すなわち 0℃ 1013hPa(A)の体積流量に換算し表記しています。

CF0℃で0.7685100%FSですが、50℃では0.7301100FSまで変化しています。

 

窒素、FS100SCCM仕様のMFMで二酸化炭素を流して測定する際に、指示値が100SCCMであっても、流体温度が0℃なら76.85SCCM50℃なら73.01SCCM、実際は流れているということになるのです。
FS100SCCM
に対して3.84SCCMの差は大きいですね?

「マスフローメーカーのカタログ仕様を比較して、繰り返し性や精度に関しての議論をしている場合ではない!」と思えてきます。

このようなガスは、流量センサーでの温度差ΔT/定圧比熱Cpという流量式に対し、更に流体温度による補正が必要になります。

 

FLUIDATではデータ不足か?CF計算ができなかったのですが、温度でCFが劇的に変化するガスの代表はフッ酸(HFです。

筆者の経験では常温から100℃の間で、なんと!0.33から1.00まで変化します。

「ちょっと待ってよ!」と言いたくなる差ですね。

その腐食性の強さがクローズアップされるフッ酸ですが、それ以上に熱式流量センサーを搭載するマスフローの天敵といってもいい流体な理由はこれです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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