もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」 20193月号(2/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)の流量制御バルブのアクチュエーターとしてソレノイドを搭載したMFCの使用上の留意点を解説しています。

 

ヘリウム(He)

 

ヘリウムは宇宙では水素の次に多い元素です。
ですが、地球の大気には1m3にわずか5mLしか存在していません。
最近、ヘリウムの値上がりが激しく、北アメリカとアフリカにあるヘリウムプラントは引っ張りだこでのようです。

水素の次に小さく軽いガスであるヘリウムは、水素のような爆発の危険性を有しないことから、水素代替として用いられることがあります。
1937
56日飛行船ヒンデンブルグ号が飛行中に外装塗装面に生じた静電気を、着陸時に上手くアーシングできずに内部の水素ガスに引火し大爆発を起こした事件があります。
(同世代以上の方には、あのLed Zeppelinのファーストアルバムのジャケット絵で有名でしょう)

この事件以後、飛行船の浮遊に用いるガスはヘリウムとなりました。(本来はヒンデンブルグ号もヘリウム仕様だったのですが、アメリカが法律で不燃性のヘリウムガスの輸出を禁止していたため、やむなく水素ガスを使用していた、という説もあります。)

リーマンショック前は首都圏の空の広告塔として優雅に浮かぶ飛行船を見かけることがありましたが、最近はその機会も減りました。
世界的なヘリウムの値上がりが原因の一つかもしれませんね・・・

 

ヘリウムをマスフローで使用する際の注意点は、前回の水素と同じです。
その小さく軽い性質から、リークに関しては細心の注意が必要です。
また、MFCのバルブにとっては油断のならないガスである事も同じです。
ただ、水素と異なりコンバージョンファクター(CF)は1.4近辺ですから、流量センサーにとっても、バルブにとっても流れやすい傾向ですので、まだMFCとしては作りやすいかなと思います。
この辺りが、次回ご紹介するアルゴン(Ar)とはえらい違いなのですよ・・・


少しガスの話から離れますが、液体MFCでよく使われる技術なのでここで紹介しておきます。
ヘリウムはよく液体の圧送用に用いられます。
液体供給は気体と異なり、上流の液タンクにガスで圧力をかけて押し出す圧送が主です。
本来、液体を加圧して送る為には、後段での気泡発生を避けるために、その液体に溶け込みにくいガスを選定します。
圧送する気体圧力が倍になれば、溶け込む量も倍になるので、神経質にならざるを得ないのですが、だからといって液体に全く溶け込まないガスは存在しませんので、結局気泡は出てしまうのです。
そこで思いつかれたのが脱気装置(デガッサー)による気泡抜きです。
溶け込んだ気体を途中で脱気するには特別な仕組みが必要になります。(下図)

190311_01

図中のスパイラル状の配管材質は、金属管のように分子間距離が近くて気体がすり抜けられないものではなく、気体がある程度すり抜けていくフッ素樹脂製の管を選ぶのがコツです。
それを気密性高い真空チャンバーに入れ、チャンバー内をポンプで真空引きします。
そうすることでフッ素樹脂配管の内外で圧力差が生じ液体に溶け込んだ気泡を引き抜く事ができるシステムです。
この場合は、前述の逆で溶け込みやすさよりも、フッ素樹脂をすり抜けやすい小さな元素を用いたいので、自ずから安全面で問題がある水素を省き、ヘリウムが選ばれます。

 

190311_02
 【高圧対応デガッサー出典:(株)タテヤマ製作所】
 

写真の()タテヤマ製作所高圧対応デガッサーTDG-10-3-I は、テフロンAFを使用した1MPaまでの高圧圧送に使用できます。

当然圧送圧が高いほど溶け込み量は多くなりますが、デガッサーでの脱気効率も圧力勾配が大きくなると高くなるので、なかなか他のデガッサーでは対応できない注目の製品です。

 

気になった方は、Decoまでお問い合わせください。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan