2022年最後の真・MFC千夜一夜物語です。
マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。

前回はソレノイドアクチュエーターを用いた流量制御バルブのお話でした。
これに対して、日本のMFCメーカー((株)堀場エステック、日立金属(株)、(株)リンテック)が採用しているのが、第3の方式となるピエゾアクチュエーター搭載型流量制御バルブです。
ピエゾとは圧電素子の一種で、ある結晶構造体に機械的圧力を加え変位させると、この圧力の大きさに比例して電圧を発生する原理(=正圧電効果)を応用していて、実際はこの逆で「ある電圧をかけることでで、結晶構造体が変位する(伸びる)」(=逆圧電効果)を利用しているのです。
変位量はナノメータレベルの微小な単位です。
これでは素子単体ではバルブは、ほんの少ししか動かないで、図にあるように複数を積層スタックすることで使用されています。
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それでも機器に内蔵できるサイズのスタックでは、マイクロメーターオーダーしかストロークは稼げないのです。
故に決してストロークが必要な大きな用途で使用できる訳ではないのですが、その応答性能と何よりも発生力の大きさを評価され種々の産業機器に組込まれ様々な用途で使われています。

業界で最初にピエゾをMFCに組み込んで実用化したのは、日本のエステック社(現(株)堀場エステック)でした。
当初、ピエゾは湿度に弱く、ショートして機能喪失する事例も見受けられたそうです。
その為、信頼性でソレノイドに劣るイメージがあったのですが、スクリーニング工程の改良と、ピエゾを管封入する構造が開発されてからは、信頼性も向上、今に至っています。
前述のように日本のMFCメーカーのお家芸として、高速応答、高分解能、大発生力を謳い、MFCの技術進化の階段を一段登らせた技術あなのです。

日本ではピエゾがMFC用アクチュエーターとしてデビューして、品質が安定してきた時期に「ピエゾ搭載のMFCは応答性能が良い」というのがMFCに関して知識のある層で定説となっていたが、これは必ずしも正解ではない事は既に何回かこのブログで解説してきましたね?
正確な表現にするとピエゾアクチュエーターはソレノイドアクチュエーターより応答性能が速いというのは事実なのですが、MFCの応答性能として考えた場合は、ピエゾタイプMFCだからといって、必ずしもソレノイドタイプMFCより応答性が良いとは限らないという表現になります。
既に何度も解説しているので、ブログ読者の皆さんも理解頂いているかと思います。
MFCの応答性能はバルブのアクチュエーターだけで決まるわけではないからっですね。
熱式流量センサー、特に一般的な巻線タイプ熱式流量センサー自体の応答性能が、ソレノイド、ピレゾ両アクチュエーターよりもはるかに遅い為に生じる問題です。
つまりMFCの応答性能を律束しているのはアクチュエーターではなく、流量センサーなのですね?その証拠に直接ガスに接触するMEMSタイプ熱式流量センサーは同じ熱式でも応答が速い事は知られています。
それとソレノイドバルブの組み合わせたMFCが、巻線型流量センサータイプとピエゾの組み合わせよりも安定した高速制御が出来ているのをDecoは見知っています。

次回更新は2022年1月10日(火)となります。
では、皆さん、良いお年をお向け下さい。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan