もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌 20186月号(5/25発売)は、コリオリ式マスフローメータ(MFM)を用いたマスフローポンプ(質量流量ポンプ)の解説ですので、本解説と合わせてお読みいただけたらと思います。

 

 

さて今回はマスフローメータ(MFM)特有の問題を解説しましょう。
二酸化炭素を流した場合や、微小流量MFMで顕著なのが、測定の為ガスを流入させた際にMFMの流量出力が実際に流している流量値よりはるかに低い、もしくはゼロに近い値になってしまう現象です。
これはセンサーが過度の突入流量で過冷却されたことから、ゲインを得られなくなってしまっている場合が多いです。

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上図で示すように、熱式流量センサーは流量0の状態で上流、下流の温度がバランスしています。
ここに流れが生じると、上流の熱を流体が奪い下流へ運ぶため、上流温度<下流温度となり、ブリッジ回路のバランスが崩れ、流量を出力します。
フルスケール流量を少し超えたくらい(120-150%程度)までは流量が増加すれば出力も増加する関係にあります。(デジタルマスフローはデジタル処理の関係で、出力を110-120%で飽和させてしまいます。)
もちろんフルスケールを超えた出力値に対して、それがどこまで出力されるか?はメーカーにより異なりますが、その領域ではカタログ仕様を満たす保証はありません。
でも、増加傾向にあることは確かです。
ただ、そこから過度に大きな流量が流れた場合、今度は下流側の温度も奪われ双方の温度がダウンしていく現象が起きてしまいます。
そうすると流量出力は急激にダウンしていき、最後は完全に0となってしまうのです。
これがオーバーフローによる過冷却現象です。
例としては、二次側の容器を昇圧してから、供給するガス流量をMFMで測定したいラインがあった場合、その容器昇圧時はMFMをバイパスするラインを設けて、そこから大量のガスを容器に流し込むべきところを、MFMラインにそのまま流してしまった場合に発生しやすい現象です。
 


10ml/min未満の微小流量用MFMで生じやすい理由は、その流路構成にあるります。(下図)

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巻線方式を採用しているマスフローのセンサー管は510ml/min程度の流量を流し、残り大部分は層流素子側を通過させる分流構造です。
ところがフルスケール流量が微小レンジになると、当然バイパス側は不要となるので流路を閉ざし、全量をセンサー管に流す構造となりまう。その為、突入してきた大流量を逃がす流路がなく、全てセンサー管で受けることになってしまいます。

 二酸化炭素のような冷却能力が高い流体の場合は、小流量でもこの現象が起きやすいので要注意です。
こういった問題はマスフローコントローラ(MFC)の場合、二次側に流量制御バルブオリフィスが存在するので、過度の流量が流れるのを食い止めていることもあり、あまり発生しない現象です。
予防策はフルスケールを遥かに超える大きな流量をMFMに流さない事です。
流す必要があるなら、必ずMFMのバイパス配管を設ける必要がります。

  

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan