EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

APC

真・MFC千夜一夜物語 第363話 流量と圧力制御は同時にはできませんよ! その4

圧力センサーを搭載した制御モジュールとして形は似ていますが、そもそも圧力式マスフローコントローラー(MFC:Mass Flow Controller)やPI-MFCとAPC (Automatic Pressure Controller)は違うものですよというお話です。
APCと呼称されている機器は、MFCの機器構成を利用してセンサーを圧力センサーの置き換えたものがほとんどです。
「圧力センサーからの圧力信号と設定した圧力値とを比較し、流量制御バルブを制御した結果、圧力を調整するAPC」と、「流量センサーからの流量信号と設定した流量値とを比較し、流量制御バルブを制御した結果、流量を調整するMFC」この2種類の制御システムを一緒に使うとどうなるか?以前も解説しましたが、下の図を見てください。
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APCとMFCはケンカが絶えないとはどういう意味でしょうか?
これはどちらも流量制御バルブを使って流量を制御しようとしているから起きるのです。
流量を制御した結果として圧力を制御するAPCは、制御バルブの構成がMFCと同じなので、Kv値の異なるMFCを2台直列につないで、更に異なる流量値に制御しようとしているのとあまり変わらない結果になってしまうのです。そうなると最悪はお互いが流量の増減を繰り返して、ハンチングを起こすような現象が続いてしまうことになります。

MFCとAPCを直列につないで流量と圧力同時制御!というのは、上手くいかない事が多いのですが、でもその両方を取り込みたいという要望がある場合はどうすればいいのでしょうか?
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Decoは回答として「MFCかAPC、どちらかを制御してどちらかがモニターに徹すればいい。」と、ご助言しています。
「APCで圧力制御をしながら、流量値をマスフローメーター(MFM)でモニターする。
もしくはMFCで流量制御をしながら、圧力値を圧力センサー(PT)でモニターする。
このどちらかでいかがですか?」とお話ししています。

例えばチャンバーに送るガスを流量と圧力で制御したいという御希望をお聞きすることがあります。
チャンバーをある一定の圧力に到達させる際に、導入したガス量もプロットしたいという御要望に対しては、APCで圧力制御させて、MFMで流量測定するような組み合わせになります。

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出展:ブロンコスト・ジャパン(株)
ブロンコストの新製品“FLEXI-FLOW Compact”はファームウエアの変更で、“PTを積んだMFC”にも“MFMを積んだAPC”にもなるので、こういった用途を1台でこなせて最適かと思っています。
 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第362話 流量と圧力制御は同時にはできませんよ! その3

圧力センサーを搭載した制御モジュールとして形は似ていますが、そもそも圧力式MFCPI-MFCAPC (Automatic Pressure Controller)は違うものですよ!というお話です。
では、改めてAPCとは何でしょう?

講習会等で「圧力センサーからの圧力信号で流量制御バルブを制御した結果、圧力を調整するAPCと言う機器があります。」という御説明をすると、聴衆の皆さんは不審そうな顔をされます。
「APCって、圧力信号で圧力制御バルブを制御しているんじゃないの?」という疑問です。
これはDecoが間違っている訳ではありません。
以前にも説明していますが、大部分のAPCと呼ばれる機器は、MFCの流量センサーを圧力センサーに置き換えたもので、制御バルブはMFCと同じ仕組みなのです。
オリフィスの絞り(リフト量)を可変する事で、バルブでの圧力損失を変化させ、流量を制御するものだからです。(下図参照)
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調圧器と言われるレギュレーターの仕組みはどうなっているか?というと全く異なります。
下図を見てください。
 
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入口側から高い圧力のガスが入ってくる部屋があります。
その部屋には弁があり、その弁で下流の低圧部屋と繋がっています。
調圧ハンドルを締め付けると大きいスプリングが圧縮され弁を押し開ける力が働きます。
高圧側の部屋にはバランス用の小さいスプリングがあり、部屋の高い圧力と一緒になって弁を閉める力として、押し開けようとする方向の力に対抗してバランスします。
この仕組みで低圧側の部屋はある一定の圧力になるのです。
つまりバネを用いて入口圧力と出口圧力のバランスを取っているのですね?

これが普通の流量制御バルブのような絞りを可変する構造では、入口側圧力から絞りの圧力損失分を差し引いて得られるのが出口圧力になるので、絞れば絞るほど抵抗は大きくなって、流量が流れなくなってしまうので、あまり大きな減圧効果は期待できないのです。
内圧が14.7MPaもあるガスボンベを入口側に置き、出口から0.3MPa程度の圧力を取り出す仕組みとしては、こういった構造の調圧バルブでないと、その任を果たせないわけです。
APCと呼称されている機器で、こういた調圧バルブ的な構造を取っているものは数少なく、MFCの機器構成を利用してセンサーを圧力センサーの置き換えたものがほとんどです。
マスフローメーカーが作るAPCは、やはりMFCの流量調整バルブとPID制御系をそのままMFCから利用したかったからなのでしょうね?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan
 

真・MFC千夜一夜物語 第361話 流量と圧力制御は同時にはできませんよ! その2

「1台の機器に流量センサーと圧力センサーを搭載することは可能ですが、その両方で制御をすることはできませんよ。」というお話です。
なぜならばバルブをPID制御するに当たって、流量信号なのか?圧力信号なのか?どちらを優先するかを決めてやらないといけないからです。

「でも、PI-MFCは流量と圧力両方の信号を使って制御していますよね?」という反論を頂く事がありますが、違うのですね。
PI(Pressure Insensitive)-MFCの動作に関して、既出のこの図を見てください。
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PI-MFCはあくまで流量センサーからの信号と設定信号を比較して一致するように流量制御バルブを制御するMFCです。
ただ、急峻な圧力変動があったと圧力センサーが感知した時だけ、流量センサーからのフィードバック制御を停止する(もしくは制御を緩慢化させる)機能を追加しただけなのですね。

「では、圧力式MFCは?」というご質問もいただきます。
圧力式MFC(Decoは圧力式フローコントローラーとも呼称してます。)これも圧力センサーを用いてはいますが、圧力信号を流量制御に使っているのではなく、あくまで熱式流量センサーの代替として差圧式流量計(絞り式やラミナーフロー式)の原理で圧力値から流量を算出して流量信号として取り出すことで、流量制御バルブをPID制御しているだけです。
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圧力式フローコントローラー動作原理の一例

まずはPI-MFCや圧力式MFCという存在を正しく理解して使う事から始めましょうね。


5/3(火)の更新は連休中という事もあり、お休みさせて頂きます。
次回更新は5/10(火)の予定です。
宜しくお願いいたします。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



真・MFC千夜一夜物語 第360話 流量と圧力制御は同時にはできませんよ! その1

このブログの第132夜~133夜でMFCのライバルは?VS APCという解説をしました。
APCとはオートマチックプレッシャーコントローラー (Automatic Pressure Controller)という圧力センサーで測定した信号をベースに、流量制御バルブを可変させて、結果として圧力を制御する機器の事です。
MFC=マスフローコントローラ(Mass Flow Controller)が、流量センサーで測定した流量信号をベースに、流量制御バルブを可変させて、流量制御する機器であり、両者は似て非なるものという解説を行いました。

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しかしながら、その後、PI-MFCとか圧力式フローコントローラーといった製品が世の中に出回った為に、混乱しておられるユーザーさんが多いように見受けます。
 
先日もこのような質問を頂きました。
「1台で圧力と流量で同時に制御ができる製品を紹介して欲しい。」

確かに先日ご紹介したブロンコストの新製品“FLEXI-FLOW”はマルチセンサーを搭載しており、流量/圧力/温度を測定できます。
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他にもMKSさんのPI-MFCはファームウエアの切り替えでAPCにすることもできるようです。
 
でも、間違えてははいけないのは
「流量や圧力はセンサーを積めば測定して出力できますが、制御はどちらかでしかできません。」という事です。

流量制御と圧力制御を切り替える事はある条件内ならば可能です。
ここで言うある条件とは、MFCやAPCに搭載された流量制御バルブのKv値(Cv値)と分解能が許容する範囲内でという意味です。

なぜ同時にできないのか?
答は簡単です。
制御バルブは、流量?それとも圧力?一体どちらの指示を聞けばいいのか?わからなくなってしまうからなんですね。
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以前ご説明したこの図と同じことが、一台の機器の中で起きてしまうからなのです・・・

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

ブロンコスト 2018年新製品発表!

<先週は出張の為、更新をお休みしました・・・>

さて、6月11日~15日にドイツで開催されたACHEMAで、ブロンコストが新製品を発表しているようです。詳しくは下記リンクから ブロンコスト/マスフローのBlog へ。

1.EL-FLOW Prestigeの流量レンジ拡張(100 ln/min Air)
サーマルマスフローメータ・コントローラEL-FLOW Prestigeの大流量版が発売されます。
EL-FLOW Prestigeは温度補正機構やマルチガス・マルチレンジ機能を搭載した、EL-FLOWシリーズの上位機種です。

これまでは0.014...0.7 mln/min~0.4...20 ln/min (Air換算)をカバーしていましたが、新たに最大2...100 ln/min (空気換算)をカバーするFG-201AV (デジタルマスフローコントローラ)、FG-111AC (デジタルマスフローメータ)が追加されます。

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EL-FLOW Prestige FG-201AV <出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

2. EL-FLOW Prestige Pressure Insensitive (PI); 圧力センサー搭載型
サーマルマスフローEL-FLOW Prestigeに圧力センサーを搭載し、リアルタイムでプロセス圧力変動に対する補正を行うEL-FLOW Prestige Pressure Insensitive (PI)です。
他社のPIとは趣が異なっています。
従来のPIは流量制御時に一次圧の圧力変動が起きると、流量制御に乱れが生じるのを防ぐためのものでしたが、ブロンコストは一味違いそうです。
圧力・温度によりコンバージョンファクター(CF)は変化する為、マルチCFを採用しているのがブロンコストです。
EL-FLOW Prestigeは、DTB(Differential Temperature Balancing)およびオンボード温度補正機構を搭載し、この内の温度影響を極力排除していました。
また、外部の圧力センサーからの信号を受信し圧力影響を補正する機能を搭載していました。
今回は、内蔵圧力センサーで圧力影響を補正するモデルを追加した形になりそうです。


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EL-FLOW Prestige FG-201CVP<出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

3. EL-PRESSにプロセス圧力コントローラを追加
上流圧力コントローラであるP-700と、下流圧力コントローラP-600を組み合わせたプロセス圧力コントローラP-800が発表されました。


P-700およびP-600はMFCではなく、オートマチックプレッシャーコントローラ(APC)でした。
これらはオープンボリューム、つまり常に流れがある環境での圧力管理向けでしたが、P-800はクローズドボリュームの圧力を一定にたもったり、昇圧や降圧といった圧力管理を可能にするとの事です。

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EL-PRESS P-800プロセス圧力コントローラ<出典:ブロンコスト・ジャパン(株)>

詳細情報は、ブロンコストから入手次第、お知らせしますね!

EZ-Japan MFCニュース by Deco
EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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